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恋は魔法で愛は呪い  作者: ATワイト
第五章
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第149話:運命の歯車《Wheel of Fortune》


 少しだけそんな気はしていた、ファウナの魔道具装備がロストテクノロジーすぎる事、そして本人たちが何の疑問もなく他の≠自分の存在を受け容れている事。それってつまり、フローレンスもファウナも……フィオナにとっての()()の存在ということ。

 不自然なのだ、同一時間軸の存在で、フィオナ同様相手の存在を知らないなら、恥ずかしながら≠フィオナの全てが「誰よアンタあああああ!!!!」的な反応をするのが自然だ。


 新しく入手した情報にむふむふと機嫌よく口角を上げて、割り当てられた衣類ケースに[認証]魔法を通してから入浴の準備に入るフィオナ。準備って何さって? (オケ)とかタオルとか替えの下着とかですよ、オケ(OK)


「ジェシカはお風呂行かないの?」

「この時間混んでるから、先にご飯~」

「わたしは夜はいいや、お昼食べてすぐ寝ちゃってたからお腹減って無いんだよね。んじゃお先―」


 木桶を小脇に自室を出て、平民生徒の浴場へと足取りも軽く廊下を行くフィオナ、丁度入浴や各自夕食の時間で、廊下に出れば生徒達が歓談しながら行き交う。


 余談ながら、浴場は貴族生徒と平民生徒で分けられている。具体的には中で繋がってはいるのだけれど、脱衣所が違う。分かれた理由はお察しというか、まあ窃盗である。装身具一つとってもやはり貴族の身に着けるモノは高価に売れる。

 もっとも、「そんなモン部屋に置いて来い」という話ではあるのだけれど、とうとう子爵令嬢の肌着の窃盗が発生し、それが闇市場に出回るという事件が起こった為、貴族と平民の脱衣所は分割された。犯人は捕まっていない……なお、去年の出来事なので犯人は現在在学中の可能性がある。


 さて、時間が続いているいう新事実。これはきっとクオンも驚く筈だ……おどろ…………く……。


「――。」


 ふとした気付きに、ぞくりと、背筋が凍った。


 ――あれ?


 【ヒロイン】は、ファウナ、フローレンス、そしてフィオナ……どうも毎回違うみたい。

 【お助けキャラ】は……ジェシカ……フローレンスがいわゆる()()の周回にあたるのならば、前回と同一人物という事だろう。



 ――――じゃあ……他の人達、それこそ【悪役令嬢】や【悪役令嬢の取り巻き】は????



 【悪役令嬢】ヴァネッサ・アルフ・ノワール、その【取り巻き】クオンリィ・ファン・ザイツとノエル・ファン・ガラン。黒い三連星の存在はフィオナの《前世の記憶》と、ジェシカの【原作知識】で()()している情報……実際に起こる/起こったと考えていい。

 特にジェシカの場合『クオンリィが出奔した』その先で、思い詰まったヴァネッサに殺害されているのだ。


 これはつまり、ヴァネッサ達は記録も残らず、高度な魔法技術で製造された魔導人形でさえ朽ちる様な先史から、何年周期なのかもわからない気の遠くなるような長い周期で()()()()()()()


 何度? 理解(ワカ)らない。

 何の為に? ヒロインの障害となり、打倒される為に――――。

 何故? 理解(ワカ)らない。


 例えば聖女には対抗馬が必ずいたのかといえば、ノーである、〝記録に残る範囲〟だけれど、第一王女が聖女になった記録がある、この王政の専制国家で王女に対抗など……余程の野心家で冒険家だと言わざるをえない。


 ≠フィオナ達に共通しているのは、【アルファン王国魔法学院の完成後、一人目の聖女になる平民出身の少女】で、【漢気ワイルド系幼馴染】【生意気ショタっ子】【不愛想ギャップ剣士】【博愛主義のゲロ甘王子】【婚約者の暴走に胸を痛める板挟み王子】…………。そして対抗馬として妨害行為を繰り返す【悪役令嬢】と【取り巻き】が存在する。


 …………。これは【原作ゲーム】だ、原作になぞらえたタイミング。


 国内が大きく乱れ、魔族とも人間とも同時に争った大戦に勝利した王国が、国威発揚と国内の経済、雇用を安定化させる為に〝瑪瑙城〟築城と、王居の移転、そして次世代の人材を育成する王国魔法学院の設立。

 それからおよそ三〇〇年の後、聖女のいない時代に魔法学院に入学する平民の少女。時を同じくして、学院に入学する王子の婚約者にして苛烈な軍閥貴族の令嬢と、オマケ二人。


 何度? 理解(ワカ)んない。

 何の為に? ヒロインの障害になって、打倒される為。

 何故? 【原作ゲーム】の『世界の流れ』を円滑に遂行する為――――。



   世 界 の 流 れ の た め、

  |運 命 の 歯 車《Wheel of Fortune》 と し て。



 ――そんな気付きを得て廊下で立ち尽くしていると、通りかかった生徒が邪魔だと注意しようとして、左腕の黒い腕章が目に入り、目を剥いてからそそくさと避ける。

 〝ノワール派閥親衛隊・白銀〟

 入学式でヴァネッサに咎められた【ヒロイン】(フィオナ)は、ここまでの立ち回りで、立場の上では避けられる側に至る事が出来た、下手に揉めたら上級生であろうと……流石にヴァネッサ達三人程の影響力はないにしても、学院生活に支障をきたすであろう。


 やっと掴んだ、運命を覆す為の情報……だと思ったのに。


「――これ……そう いう事……じゃん……言え るわけ……な いじゃ ん……」


 掴んだ情報の結果、『あなた達が破滅する事が、何度も繰り返される〝運命〟だと気づきました』なんて言えるものか……「今は今できる事を」と言うにも程がある。

 今生きているこの世界が、前世で女子高生だった自身を含めたユーザー達が文句を言いつつ楽しんでいた【原作ゲーム】の世界だという事は残念ながら間違いはない。

 何しろ、『現実にゲームを持ち込む』《前世の記憶》なんてものが、他でもないフィオナにあるのだから。


 ゲームの世界で間違いない、と言っても……電子ゲームそのものではない。


 浴場に降りる階段の踊り場に設置されたベンチに腰を下ろしながら、少しでも気持ちを落ち着ける為に大きく深呼吸を一つ、二つ。吐く息が溜息になってしまわないように、大きく。


 少し、腰を据えておさらいしよう。


 わかりやすい所で【原作ゲーム】には経験値を稼ぐことで上がる【レベル】が存在した、でもこの世界では存在しない。《前世の記憶》にも【レベル】は存在していない。他の人(ディラン)にちらりと確認したけれどなさそうだ。まあ、ディランはアホなのでちょっとあてにならないケド。


 そして、とりあえず一五歳まで生きて来た過程で、フィオナもまーそこそこの経験……魔物をまともに倒したことは無いけれど、ニワトリやウサギ程度なら何度もシメている。畜産動物だからかも知れないけれど、命を頂くという事には慣れてしまった、これも経験値だと思う。

 何より、戦闘起因の経験値というのならば、いつかの〝死の砦〟にクオンとノエルさんと三人、withラスクで赴いた時のアンデッド退治は、所謂パワーレベリングという奴になったはずだ。


 なお、パワーレベリングとはレベル制MMORPG等の電子ゲームで行われる協力プレイの用語である。高レベルプレイヤーが低レベルプレイヤーを()()()支援して、無理矢理高速でレベルを上げるのだ。

 高レベルプレイヤーは弟子のような低レベルプレイヤーと一緒に色々な場所に行けて楽しい…………低レベルプレイヤーは一気に強くなれて色々な場所に行ける。一見WinWinの関係――でも、実はパワーレベリングは、あまり声高には言われないけれど〝迷惑行為〟だったりする。

 常にバディなり組んでいるのならいいのだけれど、ネットゲームとはそうもいかない……。そうなると、何も知らず培養された『レベルだけの役立たず』が野に放たれ、トラブルの火種となるのだ。その為ゲームによってはレベル差が大きいパーティには、入手できる経験値に大きなシステム制限がかけられる事も多い。


 閑話休題。

 少なくとも色々頭がおかしい武闘派乙女ゲームであっても【まじっくアドベンチャーwithラブ】は基本的に一人用のゲームなので、関係がない。ダウンロードコンテンツやアップデートで対人戦があったけれど協力プレイまでは無かったはずだ。

 初期【レベル】三〇越えのジェシカと共闘しても、元々取得経験値に強烈な制限のあるジェシカの経験値はまったく上がらないけれど、【ヒロイン】の経験値は普通に貰える。

 逆のパターンで、成長した【レベル】五〇の【ヒロイン】と課外活動班参加したての【レベル】一桁レオナードで組んでパワーレベリングも可能だ。

 何なら[回復]などの支援系魔法の行使でも電子ゲームでは経験値が貰えるのだから、フィオナはこれまでもディランをはじめとして[回復]しまくっているのだから【レベル】が上がっていない筈がない。


 でも、一回もフィオナの実感として【レベル】が上がった事は無い――。

 腕を組み、むーんと唇を尖らせる。根拠には弱いかもしれないけれど、これは電子ゲームそのものではない一つの根拠だと思う。 他にも、【アイテム欄】みたいな便利なものも無い、それはむしろ魔統で継承される空間魔法の領域だし、例えば【ステータス】なんかも見えやしない…………。

 あ、でも【好感度】は視える……いや、ま、まあ、それは置いといて。


 この現実は電子ゲームではない、それは間違いがない……。なんだか『現実とゲームの区別がつかない』『ゲーム脳』などという言葉が浮かんだけれど、それは……前世で良く聞いた記憶がうっすらある…………《前世の記憶》がまさにそういう能力なのは皮肉か。


 だからこそ、「今は今できることをする」なのだ。もう一度強く胸に刻む。それ以上刻んだら無くなるぞって? ハハハ(シメルゾ)。レベルも無い、ステータスも無い、【お助けキャラ】(ジェシカ)暴走危険球(やくたたず)、【攻略対象】の性癖まで歪んで――――。


 あれ? 『世界の流れ=運命』なら…………【攻略対象】の性癖は…………どうして?


「ひょっとして……何か……他の要素が――働いている……??」


 運命とは違う、運命を狂わせる〝何か〟。


「それは〝運命〟に抗う……私以外の存在がある? でも……」


 運命に抗う為に、【攻略対象】の性癖を【悪役令嬢】が【ヒロイン】に打倒されにくい状況を創り出した……。桜色の髪を示指でくりくりしながら考える……。


 レオナードの好感度がヴァネッサ様に向いている……。

  →惚れっぽいけれど、惚れたら一途な面があるレオナードの攻略が困難。

  →レオナードからの告発で断罪される可能性が、大幅に減る。


 ディランが乳信者かつ、エロ自由形。

  →ヴァネッサ様に惚れやすい。

  →入学前の因縁イベントは……潰したので、断罪以前に恨みが無い。


 あれ? ひょっとしてディラン、入学前攻略が無かったら一番厄介だったんじゃない? まあ平民だし【ヒロイン】に選ばれない限り何もできなかったとは思うけれど……。


 ジョシュアが独占欲剥き出し。

  →正直手出し不可、関われば【ヒロイン】強制排除の可能性大。

  →むしろ断罪される側。


 オーギュストがクオン好き。

  →正直、思いっきりフラれる姿しか見えない。先日の邂逅の感想だけれど、オーギュストは朴念仁というか、女子の機微がわからん系だし。

  →でも、クオンに付くという事は断罪はしない


 フェルディナンドが女の敵のクズ。

  →本来、彼は義妹ヴァネッサの在り方に憂慮していた……断罪を言い出す最有力の人物だったけれど……これはもう無理だ。

  →断罪の説得力がない。



 ……これは悪役令嬢の為の流れだ……。



「運命とはまた別の……わたしにとっての敵がいる????」


 手で口を覆う様にしながらのフィオナの呟きは、誰にも聞かれることは無かった――。


 ――ただ一人、柱の影に佇んでいるフードマントの人物以外には。

※いつもお読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ここら辺の流れ、話しが一気に動き出した感じがしてかなりワクワクして読んでます。 それにしてもフィオナディランの初遭遇は不審者以外の何物でもありませんね。
[良い点] 物語の中核に迫る感じの回!∑(゜Д゜) ヒロイン以外は運命を繰り返してる クオンが前みた悪夢も ifの世界ではなく過去にあったこと なんでなの〜( ;∀;) 新たな敵が出るのかしら >…
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