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恋は魔法で愛は呪い  作者: ATワイト
第四章
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第96話:お楽しみ

 いつから? いつの間に? 突然のクオンリィとノエルの登場に、三人の思考に困惑が飛び込んで掻き乱す。


 長身の帯刀した黒い軍装姿が唐突に現れたかのような登場シーンのからくりは恐ろしく単純で、背中に一体化したかのようにぴったりとしがみついているノエルの[認識阻害]魔法の効果である。

 普段目立たないけれど、黒い三連星の一人に名を連ねるガラン一族の忍は伊達ではない。ちょいと本気を出せば短時間『見られても見えない』状態に持っていくくらいはやってのける。


 その認識阻害の恩恵を得るためにドッキングしているのだ、別に遊んでいるわけではない。「ノエるん背負って戦ったら消えられるんじゃね?」という毎度おなじみおバカちゃんの発想である。


 やってみた。


 問題はおなじみ認識阻害は親しくなればなるほど通用しなくなる、そして術者からは本当に消えているかわからないのが認識阻害の一番困ったところ。


 いつもの二人がいつも通り奇行に走っていると思われてしまうだけでは意味がない。

 "賊"相手に試した時はうまい具合に見えていないようだったけれど、ヴァニィちゃんには全く通用しない。


 おおむね消えた? ヤッター!


 クオンと合体することで存在値とでもいうものが上昇しているのであろうか……もしくは、幼馴染二人がいちゃいちゃしているのがちょっと羨ましくて余計に見えてしまっているのだろう。


 もっとも、家族のような幼馴染同士だから例外といえば例外だろう、親衛隊とはいえ、その程度の友誼でノエるんの本気を看破しようだなんて甘い。


「駄目じゃないかフィオナァ……ちゃ~んと断たなきゃあ?」


 ニヤニヤと嗤いながら左肘をフィオナの肩に載せて煽る一番下水、握られた黒鞘の業物の提げ緒に飾られた黒ウサギ、黒カエル、黒ワンコのマスコットぬいぐるみがフィオナの顔のそばで揺れる。


「た、断たなきゃって……?」


「内緒話には必須ですよ? せっかく使えるようになったんだから音は断っておけ?」


「まあまだおバカちゃん式の[雷属性音声遮断]のクセが抜けてないだろうけど、余計なところに情報は伝えないのが基本のキだよねー」


 クオンリィの背中で一つに束ねた亜麻色の髪を頭に乗っけながらノエルが言う、何してんだ。


「さぁて、話はあとだ、お楽しみが先ですよ? 状況は見えてますよ? レイモンド……あなた……ヤりましたね?」


「ちょっ! クオン待って!!」


「ああ?」


 さぁ死合おうか、二対一? バカですねぇドッキングしてるからタイマン扱いですよお? と言わんばかりに口端を吊り上げて凶悪な笑みを浮かべながらジェシカのほうへ近づきながら、カキン! と鍔止め金具を弾くクオンの背にフィオナが慌てて声をかけた。


 もう戦わなくていいのよクオン!


「ジェ、ジェシカとは話が」


「ナシついてるこたぁ知ってんですよ?」


「じゃあどうして!?」


 縋るフィオナに困ったように眉根を寄せて、溜息一つが零れた。


 どーしてもこーしても。


 クオンはトントンと自分の胸元、制服を右手の親指で叩いた。

 黒はノワールの象徴、それをハジくとはやってくれた喃ってなもんである。


 故にぶっ殺す、いいな? 言葉のないコンタクト。


 ――は? おぱーい? へそで投げるぞ。


 伝わらなかった。


 本日クオるんバレーが御開帳であるからして、ヤったのはノエル。ブラウスの上半分がはじけ飛んで乳間大露出であった。

 タイで本人は隠してるつもりなのだろうけれどエロ三割増しであるし、そのタイはノエルがおもちゃにしたのか変な結び方になっている。


「……」


 ああん!? とばかりにグギギと眉根が寄って"ビキッ!?"と眉間に谷を作るフィオナ。


「……乳じゃありませんよ、ノエルみたいな腐った目ェしくさりやがって、邪魔なだけですよこんなもん」


 こっちは伝わったようであった。ノエルと視線を合わせて頷きあうフィオナ、うむ、いつかもごう。


「ヴァネッサ派閥親衛隊の腕章ハジくたあいい度胸だって話ですよ? 問答無用で首スッ飛ばしていいんです、知らないんですか?」


 鯉口をクンと切りながら笑顔のクオンリィが説明するけれど王都で十五年流石にそんなルールは聞いたことがない、入学案内にもそんな文言はなかった、隅っこのほうに小さく書かれていたら王立だからどこにも訴えられないけれど詐欺だ。


 既に戦意を喪失しているジェシカが額を石畳に打ち付けんばかりに土下座る。


「もっ……申し訳ございません! この度は手前の誤解と行き過ぎた解釈で……!!」


「おたくのお店では誤解でクロスボウ撃ち込むんですかぁー?」

「おお、怖い怖い、ノエるん何ていうお店ですか?」

「王都王城通りのレイモンド商店ってねー」


 チンピラか。いいえ、ダンビラです。


 ちらりとクオンが背後を伺えば、そういえばお前いましたね? 状態のディランが狼狽えるフィオナに寄り添っている。


「はー……仕方のないですね? ……レイモンド、ちょーっと店に注文が入ると思いますが受けときなさい? 無茶苦茶な要求だからと蹴ればオマエの頭がボールになるだけですよ? フィオナのルームメイト」

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