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恋は魔法で愛は呪い  作者: ATワイト
第四章
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第95話:いた!

 フィオナだって未来を変えるつもりである、ヴァネッサ様を死なせるなんてまっぴら御免だ、けれどそれは希望や願望であってジェシカの未来改変とは少し違う。


 ジェシカの場合は実際に見てから戻ることでその未来に干渉することができる。

 もちろんセーブのタイミングや、発動の為の死なんかもあるからハードルは決して低いわけではない、その死だって……もしかしたら巻き戻しが発生しないかもしれない。


 もしも戻れなかったら? ただのジェシカ【DEAD END】で骨折り損なんてもんじゃない、取り返しがつかない。


 だとしても。


「だから、尚更のこと現在地なんだよ? 今のジェシカがジェシカなんだから……」


 そっとディランのそばを離れ、ジェシカの正面に毅然と立つ。沈みゆく太陽を背負って黄昏の空の下ジェシカに白い手を差し伸べた。


 一呼吸……。



「戻って現在、転生しようと、今は今!! ジェシカ、わたしとも友達になってくれる?」



 柔らかく水色の瞳を細めて微笑み、逆光を背負って手を差し伸べるヒロインムーヴを決めれば、柔らかな風が回廊を優しく渡る。


「フィオナ……私……ごめんなさい、いきなり襲い掛かったりして……私、どうしても確かめなくちゃって、フィオナとザイツが転生者同士で協力しているなら私に黙っているのはなんでだろうって、あなたを疑って……」


「うん、疑心暗鬼だったんだね?」


 やりすぎじゃボゲェとの声は内心に押し殺して笑顔を向ける。


「フィオナ……許してくれるの?」


「当たり前でしょ、ルームメイト」


 この流れ、もちろんすべて計算ずくである……。


 転生者であることがワレたとはいえ、未だジェシカはフィオナの持つ転生チートについては思い至っていないのか失念しているのか、どちらにせよディランもいるこの場で余計なことは言わせるわけには行かない。


 押されると弱いけれどガン押しできる状況ならばフィオナは強い、がっと当たって電車道スタイルである、最小限のカードを切って、ジェシカというもう一つのチートを懐に収めてしまおう、そうすればヴァネッサ様にもしものことがあったら……。



 ――ジェシカを殺ればワンチャンある。



 もはや三番下水の座は揺るぎ無い、人としてどうかというレベルですらある。


 逆光の陰で三日月が三つ、下水思惑孕んで哂う、ジェシカは気づかない、感動すら覚えているようで滂沱の涙に頬を濡らしてゆるゆると手を伸ばす。

 ディランは気づかない、女子同士の友情ってやつか、なんて小さく人差し指で鼻下を擦る単純仕様。


 フィオナも気づかない、自分が破壊されたものが何だったのかを。



「ハァイ、ご感動のところ悪いですねえ?」



 肩に、重量が載る。


 そこに誰かがいる……誰か、じゃない。


 ……ヤツが来た。いや、来たのではない……いる、いた! 声で理解る、仄かに香る香料の匂いで分かる。どうして気づけなかった。


 クオンリィ・ファン・ザイツ。


 フィオナの右肩にいつの間にか鞘を持った左の肘を載せて、ニヤニヤと嗤いながらフィオナとジェシカを睥睨する。

 その背中にはノエルが装備され、瑠璃色の伽藍洞がしっかりとジェシカを見つめていた、いまにもテイクオフして飛び掛かりそうだ。


「……ク……クオン」


「駄目じゃないかあフィオナァ……ちゃんと断たなきゃあ?」

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