登録
「では登録ということでよろしいですか?」
「はいっ お願いします!」
シアルカさんが頷くとカウンターの下から1枚の紙を取り出した。表面にはいろんな模様や文字が書かれており、はっきり言って僕には何が書かれているのか全くわからない。
「この中央に手を置いて魔力を流してください」
「あ、僕魔力の流し方知らないんですか…」
「あら、でも大丈夫ですよ。誰しも微量は魔力が出ているものです。少し時間がかかるかもしれないですが問題ありませんので」
よかった…僕はほっと胸をなでおろし紙の中央へ右手を置いた。するとゆっくりとその紙が光を出し始めた。
「わっ わっ これ大丈夫なの?」
驚いて僕は思わず手をどかそうとしたらその手を上から押さえつけられた。ちょっとだけどきっとした。手なんて母さんとくらいしか繋いだことがないからね。
「このままで大丈夫です」
「そうなの??」
「はい」
シアルカさんの手がどいたので紙とそこに置かれている自分の手を眺めた。光はそれほど強いものではなかったので表面の動きがよく見えた。書かれている文字などが勝手に動き回っているんだ。中々不思議な光景にちょっとだけどきどきする。
少しして光が収まると紙に書かれていた文字がなくなり真っ白になっていて、僕の手の下に小さい四角いものがあった。
「そちらが冒険者ギルドの登録証になります。冒険者ギルドを利用する際、提示いただけると各種サービスが受けられます。ではまずディアン様はあちらの買い取りカウンターを利用いただいて登録料の支払いをお願いします」
「あ、そうだった!」
そう、買取が目的でここに来たんだった。不思議な光景を見てすっかり忘れてしまうところだったよ。僕はすぐに買い取りカウンターへ向かうと並んでいたのでその後ろへと並び順番を待った。
「次の方どうぞ~」
どういった仕組みになっているのかわからないが前の人の会話とかが全く聞こえなかった。でも僕の番が来たのでとりあえずカウンターへと向かう。
「ギルドカードはお持ちですか?」
「あ、はいっ」
「あら、登録仕立てかしら…じゃあ少しだけここの説明するわね」
「お願いします」
「まず会話をするときはかならずカウンターに触れていてください。それとこのカウンターに乗らないサイズのものはそのことを事前に教えていただけると助かります」
カウンターに触れる…? なんでなんだろうと不思議に思い触ったり話したりを繰り返してみる。するとさっきと同じように目の前の女性が僕の手がカウンターについたと同時に上から手を押さえつけてきた。
「カウンターに触れた人同士の声は周りには聞こえなくなるのです。それと同時にこの上に出された荷物は周りから認識されなくなります。わかりましたか?」
「わ、わかりましたっ」
女性の手が僕の手から離れたので僕も慌ててカウンターから手を離した。都会の女性は積極的な人が多いのかもしれない…
荷物を漁り売るものを取り出す。動物などは母さんの鞄に入れてあったので、僕の方には薬草や木の実くらいしかないことを忘れていた。
「あー…これで10ミルになりますか?」
「そちらですと25ミルになりますね。買い取りますか?」
「お願いしますっ」
どうにか買取を終え僕は再びシアルカさんの元へと戻って来た。売って出来たお金から10ミルを渡すためだ。
「どうやら無事買い取ってもらえたようですね」
「はい」
僕が10ミル差し出すとシアルカさんに受け取ってもらった。