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他人のふり

 歩き始めた母さんの後を小走りでついていく。冒険者ギルドは門から順番に立ち並ぶ建物の3軒目くらいに立っていて他の建物に比べて大き目だ。あくまでもここから見える範囲ではというのが頭につくのだが…入り口の前に立つとその大きさに僕は喉を鳴らした。村では見たこともない大きな建物だったからだ。


「何をしている? ほら入るぞ」

「う、うん」


 建物に圧倒され緊張したまま僕は母さんについてその建物の扉をくぐった。中に入るとやはり建物の大きいのがわかるくらいに中が広く、人もたくさんいるのがわかる。その中で入り口から近い辺りにいた数人がこちらに視線を向けていた。


「おい見ろよ。ガキどもが託児所と間違えて入ってきやがった」

「ぎゃはははは!! ガキはおうちに帰って母ちゃんのおっぱいでも飲んでろよっ」


 その中でも品のない言葉を吐き見た目もガラが悪そうな二人が笑いながらこっちへ向かってきた。でも僕はその2人は怖いとは思わなかったのだ。だって…


「ああん? ガキにガキって言われたくないねぇ!」

「ぐふぉっ!!」

「な、何しやがるっ」


 その言葉に返すかのように一人の腹を杖で殴り、もう一人をすごい目で睨んでいる母さんのが怖いから。その様子を視界の端にとらえながら僕はそっと目をそらした。どう見ても魔法使いにしか見えない服装と武器を持っているのに殴っても強いとか反則だと思う。しかも見た目もどう見ても僕よりも背の低い女の子だ。


「あ! よく見たらこいつエルフじゃないかっ」

「なにっ? 畜生…見た目で騙されたがババ…へぶふぉっっ」


 さっき殴られた人が再び同じ場所を殴られている…やっぱり母さんのほうがコワイネ。流石に立っていられなくなったのかその人は床にうずくまってしまった。えーと…僕は無関係ですよっという姿勢を取りながらそっとその場から離れようと後ずさったのだがまあすぐ後ろがドアだからこれ以上さがれなかったよ。


「まったく…最近の子たちは女性に対する扱いがなっちゃいないねぇ」


 母さんが辺りを見回すとその様子を遠巻きに見ていた人たちが次々に視線をそらしている。やっぱりかかわりたくないのだろう。


「これは何の騒ぎですか!」


 そこへ人垣をかき分けながら1人の女性が現れた。その女性は周りを見回した後母さんで視線を止める。どうやらこの騒ぎの原因を母さんだと判断したようだ。


「あなたがこの騒ぎの原因ね。一体何があったのか説明してください」

「お、丁度よかったここの職員だな。ほらこれ」


 その女性に母さんがまるで手品で出したかのようにさっと手からカードを差し出し見せた。軽く顔をしかめた女性はそのカードをじっと見つめると顔がどんどんと青く染まっていく…母さんは一体何を見せたのだろう?


「ええええええっ うそ、これ本物!?」

「当り前だろう? だから早く取り次いでくれ」

「は、はいっ マスター! ギルドマスター!!」


 顔色を変えた女性が慌てて奥へと走り去っていった。結構騒がしい人だなーとか僕は眺めていた。母さんが何を見せたのか知らないけど、そもそもお金を作りに来ただけだったはずなのになんでこんな騒ぎになっているんだろうか…


 ほんの数分ほど待つとさっきの女性が戻って来た。


「ギルドマスターがお会いするそうです」

「わかった。あ、そうだちょっとその間にこの子にここのこと教えておいてよ」

「あっ」


 他人の振りをしようと少し離れていたのに母さんに腕を取られ女性の前に出されてしまった。そのせいで周りからの視線が少し痛い。


やっぱりギルドでは絡まれる運命です?

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