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指導

 解体は普段村でやらされていたので手慣れたもので、作業を終えるとその毛皮、牙、肉を母さんの鞄にしまってもらう。母さんの鞄はどうなっているのかわからないけどありえない量が収納されとても便利だ。魔法が使えるようになれば自分で作ればいいと言って僕には用意してくれないのだ。

 その後朝食を食べた。朝食は母さんが家で調理してきた具材が挟まれたサンドウィッチだった。じゃああの狩りはなんだったのかと聞くと食材の補充もせずに食べると緊急時に食べるものがなくなるからと言われた。もちろんそれは理解は出来るんだけど、どうせしばらく移動をしながら狩りをするのだから先に食べてもいいじゃないかという気持ちもあって少しだけ納得が出来ていない。


「食事も済んだしさっさと距離を稼ぐわよ。日が暮れるまでにもっと食材欲しいし、ある程度安全な場所で寝たいしね」

「そうだね。そういえば母さん町まではここから後どのくらいかかるのかな」

「ん~…普通に歩いて1日半くらいかな…狩りもするから2日以上はかかるんじゃない?」

「最低限の食料を手に入れたらさっさと町へ向かうんじゃだめなの?」


 僕は早く町へと行って見たかったんだ。今まで村から出たことがなかったし、これから始める新しい生活に心を躍らせる。自分で稼いでやりたいことを見つけそのためにたくさんの行動を起こしそして─────


「出来るのならやってみるがいいさ」

「そうなの?」

「ああ、飛び掛かってくる生き物たちを振り切り走り続けることになるだろうね。どれだけ長くはしりつづけられるんだい? まあ私は魔法を使えば町まであっという間だけどね」

「ず、ずるいっ そんな魔法があるなら僕にも教えてよ」


 スパーーンッ


 小気味よい音が響いて僕の頭に軽い振動を感じた。いつの間にか母さんの手には蛇腹状の長いものが握られている。どうやら僕はそれで叩かれたようだ。


「魔法はまず町へ出て稼ぐ手段を決め、落ち着いてからだ。こんな魔物もろくにいない森すら魔法なしで突破出来ないようでは先が思いやられるぞ」

「…約束してくれる? いつもそう言って今まで魔法を教えてくれなかったじゃないか」

「ちゃんと約束するぞ。だから中途半端に覚えようとするんじゃない」

「うん…」


 気を取り直し荷物をまとめた僕たちは再び周りを気にしながら歩き始めた。


 この森は人が通るだけあって踏み鳴らされた道みたいなものがある。ちゃんとした道ではないがこれがあるおかげで町へと向かう道を迷うことはない。本来なら地図と磁石を頼りに歩くことになるんだろうけど、それも含めて全部を一人でこなすのはかなり大変だと思う。しかも僕は外歩きの初心者だ。ベテランな母さんがいてこの道があるというのはとてもそれだけで心強いのだ。おかげで狩りにだけ集中することができる。


「……くっ」

「狙いが甘い! ほら逃げていくぞっ」


 僕の放った矢が外れた。やはり動く的と言うのは練習と違いかなり勝手が違って難しい。子ウサギは僕に気が付くと慌てて走り出した。僕たちが利用している道から離れた奥へと、だ。それを追いかけようと走り始めたら母さんに腕を掴まれた。


「母さん追わないとっ」


スパーーンッ


「痛いっ」

「やたらと追いかけたら別の獲物に気がつかれるだろうがっ」

「じゃあどうしたら?」

「まあウサギはすでに姿が見えないし放置だね。それにあいつらは後で仲間を集めて襲ってくるわけでもないし、残念だがね」

「むう…」

「だけど襲ってくる相手は逃がしたらいけない…仲間を連れて戻ってくるからね」

「……」


 そんな感じで狩りの指導を受けながら僕たちは町へと向かうのだった。

魔法が中々出てこない…

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