初めての狩り
村を出て1時間くらいたっただろうか。町までは遠く流石に1日歩いてたどり着く距離ではない。そんなころ僕はまだそれだけしか時間が経っていないのに息切れを起こしだした。
「はぁ…母さん少しだけ休憩しない?」
「ん? まだそれほど歩いていないだろう」
「そうなんだけどさ…」
ぐうううぅ…
「……」
「……」
「そういえばまだ朝食も済ませていなかったっけね」
「うん」
丁度よいことに僕のお腹が鳴って母さんが気が付いてくれた。いくら外を歩いたことがないとはいえここまで早く息切れをするはずがないのだ。ないエネルギーは消費できないと体のほうが答えてくれて少しだけほっとする。
「んー…そうだな。そろそろ獲物も反応があるな」
「獲物…」
「ほら何ぼさっとしている。さっさと狩りの準備をしないか」
「え、ちょっと母さ…」
「しっ」
母さんが僕の頭に手を伸ばし下へと力をこめしゃがむように指示をだす。キョロキョロと視線をさまよわせある一点に視線と止めた。母さんが向けている視線の先を見ると1匹の小型の犬…いや流石に犬ではないだろう。多分狼の子供だ。
「よし、あれでいいか」
「え、もしかして今から食料狩るの?」
「何を言っているんだ…常に食料は確保しないとこれからやっていけないだろう?」
もちろん母さんの言っていることは正しいしわかる。だけど今から食料を狩るとなるとその後調理しないと食べられないということなのだ。すでにお腹がすきすぎてやばいのにこの状態で母さんは僕に弓で仕留めろと言っているのだ。
「元から1人で出発するつもりだったのではないのか?」
「ぐっ」
その言葉に思わず僕は顔をしかめた。母さんはニヤニヤと笑っているだけで狩りは手伝ってくれそうにもない。
「ほら、怪我をしたら回復魔法くらいかけてあげるから」
「……うぅ」
お腹が空いた状態の上実はまだ一度も本物の獲物を買ったことがない僕は少しだけ腰が引けていた。それでも狩りをしないと食事にありつけないとなると文句も言っていられない。弓を背中から降ろし同じく背中に背負っている矢筒から矢を取り出しその矢を弓につがえる。
「へぶっ?!」
「そんなんじゃ逃げられるぞっ」
弓を引こうとしたら母さんが頭を叩いてきた。口で言えば済むのに叩かないで欲しい。おかげで矢を取り落としてしまった。
「あ…」
流石に今のやり取りで子供狼に気が付かれてしまった。僕のほうに視線を向け牙をむき出し唸っている。
「残念だったね先制のチャンスだったのに。でもあんなに殺気立ててたら矢を放つ前に気が付かれていたぞ?」
「もう~母さん? これじゃ弓が使えないじゃないか」
取り落とした矢を拾うのをやめ俺は腰に差している解体用のナイフを右手に持つ。あくまでも解体用なので刃の長さもないし、完全に斬ることにだけ長けていて厚みがない。角度が悪いとあっさりポッキリ行ってしまうだろう。
相手がまだ幼いこともありまだ動きが遅いのがよかったのだろう。ほんの少し右へと避けると左手に持っていた弓で首のあたりを叩きつける。その叩きつけられた勢いで子供狼は倒れこんだ。そのまま弓で頭を押さえつけ首にナイフを差し込むと軽く痙攣をして子供狼は動かなくなった。
「うわぁ…緊張した!」
「うんまあ…初めてにしてはまあまあかな。ちょっと弓で叩くのは意味が分からないがね。さあさっさと解体をしないか」
「そうだね」
少しだけ納得がいかないけど僕は母さんにいわれるまま子供狼を解体することにした。