村の外へ
ふと思い立って書いたので続かなかったらごめんなさい。でも応援もらえたら頑張れる…気がします。
前日までに準備を終えた装備達を順番に身に着けていく。衣擦れの音とカチャカチャと鳴る金属音だけが聞こえている。僕は今日初めて自分が育った村の外へと足を運ぶのだ。最後に背中に弓を背負うと少しの不安とこれから知ることになる期待に胸を膨らませ僕は部屋の扉を開けた。
「母さんおはよう」
身支度を終えた僕は母さんが朝食の準備をしている台所へと顔を出した。その場所ではさっきまで料理をしていたのがわかる程度の暖かさと匂いだけがして母さんはいなかった。
「母さん??」
変だなと思いつつ僕は首を傾げた。テーブルの上に料理は並んでおらず、それどころかいつもよりも妙に部屋が片付いているかのようにも見える。
ぐう~っと僕のお腹が鳴った。食べ物がないとわかると逆に食べたいと体が要求してきたようで誰もいないのに少しだけ恥ずかしく感じた。
「おや、準備が終わったのかい?」
背後から掛けられた声が誰のものかわかり僕は急いで振り向いた。しばらく食べることが出来なくなる母さんの料理を求めるためだ。
「あ、母さんおは…よう?」
さっき首を傾げたばかりなのに僕は再びその首をまた傾げることになった。そこにいた母さんの服装がいつもの普段着にエプロンという姿でなかったのだ。丈夫そうな靴を履き膝より少しだけ長いローブ、肩にはマントを纏い頭の上に先の尖った帽子をかぶっている。いわゆる魔法使いスタイルでいくつかの金属で出来たアクセサリーを身に着け手には身長より長そうな杖、そして斜め掛けの少しだけ大きい鞄だ。
「…ん? 何かおかしいかな」
「母さんどっか出かけるの??」
「お前はあほの子かい?」
…ひどいっ 母さんがため息をつきながら僕のことをジト目で見ている。
「ちゃんと言ったはずだろう? 軌道に乗るまで私が付き合ってやるって。それに魔法も教えてやらないけない」
「あー魔法…そういえば」
言っていたような…気がする。というか魔法は教えてくれると言いながら今まで一度も教えてくれなかったんだ。でも外の世界へ出るとなると流石にそんなわけにはいかない。母さんもやっと教えてくれる気になったようだ。だけどついて来て教えてくれる必要はないと思うんだよね…
「じゃあ支度も終わったみたいだしまずは町へと向かおうかね」
「え、本当についてくるの? というかお腹空いてるんだけどっ」
「そんなもの途中で食べればいいさっ」
さっさと家の外へと出ていく母さんを僕は慌てて追いかけることになった。
外は眩しくてその明るさに少しだけ僕は目を細めた。周りは木々に囲まれているが空が開けているので結構明るい。すでに村の中で活動している人たちが忙しそうに歩き回っていた。道行く人達と挨拶を交わしながら僕と母さんは村の入り口へと足を進める。気のせいかいつもより人が多い気がする。
「さて…軽く狩りをしながら向かおうじゃないか」
「うん…」
門の前で軽く母さんに背中を押された。よろよろとしながら僕は町へと向かう道の第一歩を踏み出したのだ。くるりと振り返ると村の中ではたくさんの村人たちがこちらを眺めていた。
「行ってきますっ」
その村人たちに手を振り僕は母さんと歩き出したのだった。
とりあえず村の外へ出ました。