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第84話『自分が嫌い』

今回も祐奈目線のお話です!!

よろしくお願いします!!

 風磨くんから楓さんが声優の日菜だと言われたけど、にわかに信じがたいその事実を私は受け入れられないでいた。


「さ、流石に楓さんが祐くんの大好きな声優の日菜だなんて信じられないです」

「俺もまだ信じられないよ。今朝、日菜がこの街に住んでるかもしれないって噂の事は祐に話したんだけどそれがまさか楓の事だったなんて……。一回祐に電話してみる」


 そう言ってポケットからスマホを取り出した風磨くんは祐くんに電話をかけた。


 日菜の事が大好きな祐くんに、楓さんが日菜だと伝 えたら飛び跳ねて喜ぶと思う。


 それとも、もう祐くんは知っているのだろうか。


 仮に私の予想通り祐くんが楓さんと付き合っているのだとしたら、楓さんも自分が日菜だと伝えているはず。


「あ、もしもし祐か? 今何してんの?」


『新幹線に乗ってる』


 祐くんは私との約束をすっぽかして学校を後にしている。今祐くんが何をしているのか私も気になった。


 どうせ楓さんと一緒にいるんでしょ、そんなふうに思ってしまった。


「は? 新幹線?」


 え、新幹線? 祐くんは新幹線に乗っているの?それが本当だとすれば何故新幹線に?


 私との約束をすっぽかして新幹線で遠出?祐くんの考えが余計に分からなくなった。


『ああ。楓も一緒にいる』


「な、なんで楓と新幹線に?」


『ちょっと野暮用でさ』


「聞いたか? 楓の話」


『……はぁ。もう風磨までその噂が回ってんのか。聞いたも何も、ずっと前から知ってる』


「ま、まじかよ」


 やはり祐くんは楓さんと一緒にいるようだ。新幹線に乗り2人でお泊まりデートにでも行くのだろうか。

 それに楓さんが日菜だという事実も知っているみたいだった。やっぱり2人は彼氏彼女の関係なんだ……。


 新幹線と聞いて、祐くんと一緒に電車に乗って日菜とゆいにゃんのライブに行ったことを思い出してしまう。


 あのときは私が隣にいたのに今は楓さんが祐くんの隣にいる。そう考えるとまた涙を流してしまいそうになった。


 明日は2人とも学校を休むのだろう。


 悲しい事実の連続が私の心を傷つけ、打ち拉がれそうになる。


『もう風磨も楓が日菜だって知ってるなら隠す必要はないな。楓さ、日菜だって事がみんなに知られたら学校を辞めさせられるらしいんだよ』


「な、なんだよそれ本当か⁉︎」


『本当だ。だから今から一緒に東京に行って、俺が直談判してくる』


「だから新幹線に乗ってるのか。大丈夫そうなのか?」


『分からん。でも、何もしないより何か行動しないと気が済まなくてさ。とりあえずこのことは祐奈には内緒にしてくれ』


「え、な、内緒? わ、分かった。何かあったら言ってくれよ。力になるから」


 そう言って電話を切った風磨くんは、電話をかける前の嬉しそうな表情とは打って変わって眉間にシワを寄せ険しい表情になっていた。


「祐が楓と一緒に新幹線に乗ってるらしい」


「そうみたいですね。仲良くデートにでも行くんでしょうか」


 皮肉まじりにそう発言した自分はいつもの自分ではないようだった。


「一応今祐と話した内容は祐奈ちゃんには内緒にしてくれって言われたんだけど……。もう横にいるし話は聞かれてるし全部話すよ。それに、多分祐奈ちゃんには話した方が良いと思うし」


 私に内緒の話? いや、それよりも私が祐くんの力になれるとはどういう事だろうか。


 2人のデートの事で私が力になれる事なんてこれっぽっちもないのに。


「楓ちゃん、自分が日菜だって知られたら学校を辞めさせられるらしい」

「ーーえ?」

「それで今、祐が楓と一緒に東京に行ってるみたいだ。楓が学校を辞めなくても済むように直談判しに行くって」


 な、なんで楓さんが学校を辞めなければならないの?楓さんが声優だという事が皆に知られても卒業まであと半年くらいなら一緒に楽しい学校生活をおくれるはずなのに。


 私は一体どれだけ馬鹿なのだろう。本当に馬鹿。大馬鹿。


 楓さんは私たちに迷惑をかけないようにと誰にも相談しないで東京に向かったのだと思う。

 祐くんは楓さんが学校を辞めさせられるのを阻止するために東京に向かっている。


 それなのに私ときたら、祐くんが屋上に来なかっただけで落ち込み自分勝手に拗ねて祐くんの事を疑っていた。


 さっき祐くんが屋上に現れず学校を後にしたという事実を知った時とは別の意味の涙を流した。

ご覧いただきありがとうございました。

より多くの方に作品を読んでいただきたく、Twitterアカウントを作成しようと考えています!!

またアカウントを作成したら報告しますので、よろしくお願いします!!

次回は11月26日投稿予定です。

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