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【書籍化】異世界で妹天使となにかする。  作者: 深見おしお@『伊勢崎さん』コミックス1巻9/27発売!


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87 ベビーカステラ

「いらはいいらはい! ウチの名物オノコミヤキだよ!」


「そこの坊っちゃんどうだい? セカード風串焼を食べていっておくれ!」


 大通り沿いに横並びになった屋台から、おっさんおばさんたちが声を張り上げる。もう領主の行進が終わり見るべきものはなにもないので、後は人が引けていくばかり。最後のひと稼ぎに精を出しているようだ。


 ざっと見たところ、屋台のメニューは普段見るものと変わらないようだ。ウチの食堂で出してるお好み焼きのパクりっぽい何かと、どの辺がセカード風なのか分からない普通の串焼である。


 けれどもセカード風のテンタクルスの串焼なんかはメニューとして父さんに提案してもいいかもしれないな。名付けてセカード風湖の幸串焼。食べても別に防御力は上がらないだろうけど。


 そんなことを考えながら屋台を物色。パメラはこの手の屋台自体が珍しいのか、キョロキョロと辺りを見渡している。少し前まで引きこもり気味だったもんね。


 微笑ましくパメラを見ていると、急に腕をぐいぐいと引かれた。ニコラである。そして少し離れたところにある屋台を指差し、


「お兄ちゃん、あれ食べたーい」


 屋台を見てみると、町では今まで見たことのないものが売られていた。今回は町中の屋台がこの場所にやってきていると思われるので、普段は行かない場所で営業している屋台も出張ってきているんだろう。


「うん、待ってるから買ってきな」


 そう言うとぐいっぐいっと無言で腕を引っ張るニコラ。


『デリカのメイド服を買って本当にお金がないんですよ』


『知らんがな。俺は絶対にここから動かないぞ』


『たまにはお兄ちゃんらしいところを見せてみてはどうですか?』


『いや俺はこれでも世間では妹に甘い兄で通っていると自負してるんだが?』


『は? それなら私に「さすがはお兄様です!」とでも言わせてみてくださいよ』


『ぐぬぬ』


『ぐぬぬぬ……』


「どうしたのニコラちゃん?」


 俺とニコラが念話で一歩も引かない戦いを演じていると、パメラが近づいてきた。すぐさまニコラがしょんぼりとした顔を作る。


「ええとね、ニコラあれ食べたいんだけど、おこづかいが無くて……」


 するとパメラはすんなりと言い分を信じてしまった。


「そうなんだ。それじゃあ私が買うからはんぶんこしよっか?」


「いいの?」


 ニコラが上目遣いでパメラを見る。そして俺をチラッと見た。あーくそ、それはズルいぞ。さすがに俺が出し渋った結果、パメラにおごらせるというのは申し訳ない。


「いいよ、僕が出すよ。パメラの分もね」


「えっ? 悪いよそんなの」


「いいからいいから。今日は屋上を使わせてもらったし、そのお礼をさせてよ」


 それとニコラの策略に使われてしまったお詫びでもあります。


「パメラちゃん。こういうときは気分よくおごらせてあげるのもいい女の条件なんだよ」


「そうなの? ……そういえばお母さんもそんなことを言っていたような」


 カミラさん、子供のうちから英才教育を施してるんだな……。


「それじゃあ買ってくるから、少し待っててね」


 小走りで駆け寄り目的の屋台に並ぶと甘いハチミツの香りが漂う。小麦粉と卵を使った焼き菓子だ。五センチくらいの楕円形で、前世ほどふっくらはしていないがベビーカステラ的なものなんだろう。


 屋台の中では若い兄ちゃんがたこ焼き型の鉄板の上に生地を乗せ一つ一つ丸くなるように焼いている。屋台のテーブル部分には一袋十個ほど入ったものが並べられていた。


「三つくださいな」


「あいよ、三つで銅貨九枚だ」


 思ってたよりも高いな。お金を支払い商品を受け取ると、ニコラとパメラの元へ戻った。


「はいどうぞ」


「お兄ちゃんありがとうー」

「マルク君、ありがとう」


 ニコラが俺の方を見ないまま感謝を述べると、さっそく紙袋を開け一つ摘んでパクリと食べる。途端にニコラの顔がとろけた。屋台ではハチミツの匂いがプンプンしていたし、さぞかし甘いのだろう。


「んー、おいしい! お兄ちゃん、お礼に一個あげるね」


 一個あげるもなにも俺の金だろう。


 そう思ったが、ニコラがベビーカステラを摘んで口のところに差し出してきたので、そのまま口を開いて食べる。


 んー、あまいなコレ! ちょっと入れすぎじゃないかというくらいにハチミツの甘さが濃厚だ。これなら値段も妥当かお買い得レベルの代物かもしれない。


 俺がハチミツの甘さに感動していると、ニコラがパメラに何やらぼそぼそと耳打ちをしていた。


 すると真っ赤になったパメラが紙袋からベビーカステラを摘み、指先をプルプル震わせながら俺の方に向けて、


「ひゃ、ひゃい、あーーん……」


 あらやだかわいい。


 そのまま見ているとどんどん顔の赤さが増していったので、これはヤバいとパクッと一口で食べる。少し勢い余って指まで軽くかじってしまった。


「あうっ」


 かじった瞬間、驚いたのか声を漏らしたパメラは、真っ赤な顔のまま俯いて足をバタバタと踏み鳴らしていた。どうやら俯くだけでは恥ずかしさに耐えきれなかったらしい。


『どうですか。私におごってよかったでしょう』


『パメラをイジるのもほどほどにしてあげなよ?』


『はー、このお兄ちゃんはほんとアレですね。……っと、それよりほら、私たちがイチャイチャしていたせいで、近所の悪ガキ共が近づいてきましたよ。どうしますか?』

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