84 ポテトサラダ
「ポテトサラダを作ってみたらどうかな?」
さっそく提案してみたが、カミラの反応はある意味予想通りだった。
「ジャガイモで作ったサラダってこと? それってどういう食べ物なのかしら?」
やはり少なくともこの辺には無い料理らしい。材料だけなら既に存在しているのに、未だにレシピが存在しない料理ということだ。食文化とは不思議なもんだね。
いつものことながら説明をするより先にやって見せよう。茹でるのに時間もかかるしね。前世ではレンチン派だったのでレンジが無いのが残念だ。レンチンなら時短が出来たのにな。
「ギルおじさん、ジャガイモをいくつか貰うね」
「お、おう」
カゴからジャガイモを数個取り出す。水で簡単に洗って少しだけ皮に切り込みを入れた後、皮を付けたまま鍋に入れた。そして水魔法と火魔法で作り出した熱湯を注ぎ、後は備え付けのコンロみたいな魔道具で茹でる。
茹でる時間は正直よくわからない。翻訳スキルのおかげでジャガイモはジャガイモで意味が通じているけれど、前世のジャガイモと全く同じかどうかは分からないし、そもそも前世にもポテトサラダに合う品種合わない品種があった。とりあえず試してみるしかないのだろう。
普段なら父さんにうろ覚えなレシピを言っておねだりすると、プロの料理人である父さんが研究に研究を重ねて満足のいく仕上がりまで昇華させてくれるのだが、今回は俺の適当なレシピで我慢してもらおう。
「マルクちゃんって火魔法も使えるのね」
「うん。父さんも母さんも火魔法は得意だしね」
「へえ~。それはさぞかしご両親の相性は良かったんでしょうね。今でもラブラブなんでしょう?」
「そうだね。でも相性ってどういうことなの?」
「そういう相性占いがあるのよ。火魔法が得意な人同士は愛情を激しく燃え上がらせて、結ばれた後も周囲を巻き込みながら愛を拡散させるとか。逆に、火と水は打ち消し合うので相性が最悪……。とかね」
カミラがいたずらっぽい笑みを浮かべながら教えてくれた。血液型占いみたいなもんなのかな? まぁこの世界は魔法の使えない人も多いし、あんまり浸透してなさそうな気がするけど。
「ねえ、マルク君は火魔法が一番得意なの?」
パメラがなんだか落ち着かない様子で俺に質問した。
「一番得意なのは土魔法だと思うよ」
元々土属性の天使だったニコラの影響を受けているらしいので、それは間違いないだろう。むしろ火は苦手な部類だ。うっかりマナを込めすぎると大惨事になりそうだし、そもそもお湯を作る以外に使い所がないので、あまり練習をしていないせいでもある。
そう言うとカミラがニヤニヤしながら、
「えーと土と水は、大地に緑が芽吹くように健やかな愛情が育まれ、大地にしっかりと根付いた愛はどんな困難でも乗り越えられる。……だったかな?」
それを聞いたパメラは満足げにコクコクと頷いている。女の子はいつの時代どの世界でも占いが好きなんだねえ。思わずほっこりする。
俺も前世の小学生時代、何度かクラスメートの女の子に相性占いの相手にされたよ。アレって自分に気があるんじゃないかって一瞬ドキっとするよね。
……っと、そろそろ手も動かそう。アイテムボックスからキュウリを取り出し輪切りにする。それとカミラからベーコンを貰ってそれも薄く切って適当な大きさにした。
後はタマネギもあればいいんだけど、苦手な人もいるんだよな。今回は無しにしよう。
そんなことをしている間にジャガイモは十分茹で上がったようだ。ジャガイモを取り出しまな板の上に置く。熱さに我慢しながらぐっと皮の表面を斜めに押し込むと事前に入れた切り込みのお陰でズルっと簡単に剥けた。
そしてスプーンでジャガイモの芽をくり抜いた後は、そのままスプーンを使ってジャガイモをすり潰す。それを見たギルが困惑した表情を浮かべる。
「ふうむ、これらを混ぜるのか? なんともパサパサとして喉が渇きそうだぞ。酒のつまみならそれでもいいのかも知れんが……」
「混ぜるのは正解だけど、あと一品を加えるんだ」
ジャガイモの粗熱を取る必要があるので、しばらく放置しないといけない。その間に例のアレの説明をしよう。ポテトサラダには欠かせない調味料、マヨネーズだ。




