表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】異世界で妹天使となにかする。  作者: 深見おしお@『伊勢崎さん』コミックス1巻9/27発売!


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/387

72 三年目の空き地

 ニコラを見捨て、日課となっている畑の世話をやりに空き地へと向かった。


 空き地の畑はウチの店で美味しい料理を作るためには欠かせないものになっている。特に最近はお好み焼きでキャベツ需要が大きい。


 空き地に到着すると、いつものように近所の子供達がお気に入りの遊具で遊んでいる。そして周囲では若奥様方が子供達を見ながら雑談に花を咲かせていた。


 そこから更に奥へと進み畑に到着すると、六十歳前後で頭に白髪が見えるもののガッシリとした体つきの男が畑のトマトをもいでいた。野菜泥棒ではなく、この空き地の所有者のギルである。


「ギルおじさん、こんにちは」


「おう、マルク坊か。今日は妹はいないんだな」


 ギルにはずっと坊主と言われていたが、空き地が子供の憩いの場所となりあちこち坊主だらけになったせいなのか、いつの間にかマルク坊と呼ばれるようになった。


「ニコラは父さんに料理を教わってる最中だよ」


「あの嬢ちゃん、食う方は得意そうだったが今度は作る方に回るのか。……ああ、そういえば聞いたぞ。最近お前の家の宿屋、新しいメニューが評判じゃないか。魔物肉を使った料理なんだって?」


「うん。テンタクルスって魔物を使ってるんだ。見た目はちょっと気持ち悪いんだけど、それさえ気にしなければ病みつきになるよ。お酒にも合うみたいだし、よかったらギルおじさんも食べにきてよ」


「ワシは行商であちこちと移動して生活していた頃、食えるものはなんでも食ったからな。見た目の悪さは気にせんよ。というか……テンタクルスといえばセカード村か?」


「そうだよ。行ったことあるの?」


「ああ、あるとも。若い頃に数回だけどな。銛を手に持ち湖に潜ってテンタクルスを仕留めることがこの村の一人前の証だとか言って、年に数人は死んでたような気がするが、今でもあんな漁をやっとるのか?」


 なにそれこわい。


「そんなことやってたんだ……。今では松明で陸地におびき出して、複数人でボコボコにしてるよ。それでも怪我人は出てたけどね」


「なるほど、考えたもんだ。さすがにあのままじゃあ村が保たんかったんだろうな……」


「そうだね……」


「ま、まあなんだ、それなら今度食べに寄らせてもらおうか」


「うん、歓迎するよ。あっ、そうだ。これ見てよ」


 家を出る前に作ったD級ポーションをギルに見せた。するとギルは以前E級ポーションを見せた時のように色々と調べてみるものの、最後は首を傾け俺に尋ねる。


「セジリア草みたいだが、少し違うようにも見えるな……。何なんだこれは?」


「うーん、高品質なセジリア草? かな。たぶんD級ポーションくらいにはなってると思うよ」


「ふむ……。効果の程は薬品や魔道具で調べないと分からないが、E級に収まらない効果があるのは間違いないだろうな。これもマルク坊が作ったのか?」


「そうだよ。これからは量産できそうなんだ」


 少し自慢げにそう答えると、ギルが頭を掻きながら呆れたような声を出す。


「なんというか、もうこれだけで十分食っていけそうだな。マルク坊は将来はポーション作りで生計を立てるつもりなのか?」


「ううん。いま育ててる薬草だって、いつまでも生えるって保証はないし。まだ分からないよ」


 とはいえ、仮に無限に生えると神様あたりに保証されたとしても、一生そればっかりというのは楽しくないという気もせんではない。


「前も言ったと思うけど、今は魔法でやれることをなんでも試してみたいかな。それにこないだ行ったセカード村も楽しかったし、今は旅とかにも興味があるよ」


「そうだな。それがいいだろうな。それに例え失敗することがあったとしても、それが糧になることもあるだろうよ」


 そう言うとギルが俺の頭をグリグリと撫でた。そして会話が一段落つくと、ギルの野菜の収穫を手伝うことにした。


 

「それにしても今日はたくさん野菜を持って帰るんだね。持って行くの手伝おうか?」


 トマトをもぎながら聞いてみた。この土地はギルのものだし、ギルがいくら持って行っても文句はない。ただ今までは自分の家で食べる分くらいだったのに、今日は背負いカゴまで持ってきている。


「おお、すまんな。そうしてくれると助かる」


 そう言うとギルは背負いカゴを見ながら話し始めた。


「実は今度領主様がこの町を視察に来るんだがな。そういう時は道中の護衛の兵隊なんかが宿泊施設の近くの店で食ったり飲んだりと繁盛するんだよ。それでワシの行きつけの飲食店に、少しばかり差し入れをしようと思ってな」


 この町や周辺を収める領主さんが来るのか。もしかすると盗賊討伐の報酬金ハネ上げたのは、視察に来る前の露払いだったのかもしれないな。


 野菜を背負いカゴに入れ、それをアイテムボックスに収めると、ギルと一緒に行きつけの店に向かうことにした。


 まずは大通りに向かい、大通りに出てからは町の中央に向かって歩く。そこから東門の方に少し進んだところに目的の建物があった。


 しっかりとした平屋建ての建物。外観は黒めの色調で統一されておりなんともシックな装いだ。ギルは飲食店と言っていたけれど、なんだかこの店って……。


「邪魔するぞ」


 もう昼だというのに閉店中の吊り下げ看板が下がった扉を開け、ギルが中に入る。


 俺がギルに続いて中に入ると妙齢の女性の声が聞こえてきた。


「まだ開いてないわよ。……ってギルさんじゃないか。どうしたんだい?」


 薄暗い店内からなんだか色っぽいお姉さんが出てきた。もしかしてここって確かに飲食はするけれど、夜のお店ってやつじゃね?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作『ご近所JK伊勢崎さんは異世界帰りの大聖女
~そして俺は彼女専用の魔力供給おじさんとして、突如目覚めた時空魔法で地球と異世界を駆け巡る~』

タイトルクリックで飛べます! ぜひ読んでくださいませ~!

書籍発売中!「異世界をフリマスキルで生き延びます。~いいね☆を集めてお手軽スキルゲット~」もよろしくお願いします!

↓クリックで特集ページに飛びます。
i000000

「異世界で妹天使となにかする。」一巻二巻発売中!
Kindle Unlimitedでも読めますよ~。ぜひご覧になってください!
コミカライズ一巻発売中! ただいま「ニコニコ静画」にて連載中です!


↓クリックで二巻書報に飛びます。
i000000

i000000
↑クリックで一巻書報に飛びます。

Twitterはじめました。お気軽にフォローしてくださいませ。
https://twitter.com/fukami040

ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ