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【書籍化】異世界で妹天使となにかする。  作者: 深見おしお@『伊勢崎さん』コミックス1巻9/27発売!


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61 帰り道

 メルミナがアイテムボックスから取り出した切り身を返品し、今度こそ売り場を離れる。後は馬車に乗って帰るだけだ。途中で村長の畑に寄り、村長とサンミナパパに別れの挨拶をすることにした。


 サンミナの案内で村長の畑に到着。周囲に見える畑は殆ど村長の一族のものらしい。ということは周囲で作業する人々はサンミナの叔父やら兄やらなんだろうな。サンミナが声をかけると、農作業中の村長とサンミナパパがやってきた。


「ゴーシュさん、今回も世話になったのう。シーソーとすべり台は大事に使わせてもらいますぞ」


「いえいえ、こちらこそ。また来ますんで、その時はよろしくお願いします」


 ゴーシュは村長とサンミナパパ、二人と固い握手を交わす。村長がこちらを見る。そして何かを言いかけた時サンミナが声を上げた。


「爺ちゃん、これ見てコレ! ほらメルミナ! ひい爺ちゃんに見せたげて!」


 サンミナが手渡した石ころを、メルミナがアイテムボックスに仕舞う。そして再び取り出し、覚えたての手品を見せつけるような得意げな顔で村長の方を見た。


「おお……、アイテムボックスか!」


「そうなんだ! すごいでしょ! 少年がアイテムボックスを見せてニコラちゃんが魔物肉を渡したらシュッ! とね、消えたんだよ! シュッっと!」


 サンミナが俺とニコラの肩を抱きながら興奮気味に答える。


「お、おう……。よくわからんが世話になったようじゃの。マルクにニコラ、いつでも遊びに来るんじゃぞ。皆で歓迎するぞい」


「うん!」


 村長がこちらを見てニコリと笑い、俺達は兄妹揃って返事をした。きっと近いうちにまた来る機会があるだろう。その時は遠慮せずに頼らせてもらおう。


 そして村長宅に戻りデリカと合流し、サンミナママとも別れの挨拶をした。ちなみにこの時に次の風呂を楽しみにしていると念入りに言われた。


 ゴーシュが馬に跨がり、子供三人は馬車に乗り込む。サンミナともここでお別れだ。


「それじゃーねー。また来てねー!」


 サンミナが手を振り、メルミナも小さく手を振っている。自分と同じギフトを持ってることが嬉しくて帰る途中に何度か話しかけたので、多少は親しくなれたようだ。


『光源氏計画の第一段階は成功ですか?』

『うるさいよ』


「テンタクルスまた買いに来るからねー」


 馬車の中から手を振って答える。こうして俺達はセカード村を後にした。



 ――――――



 セカード村を発って数時間が経過した。草原以外は何もない街道をガタゴトと車輪を鳴らしながら馬車が進む。


「よし、そろそろ昼食にするぞー」


 ゴーシュが馬を停めて俺達に知らせる。今日はニコラの腹時計が鳴る前に昼食になったようだ。


 すぐさま馬車を降りるとテーブルと椅子を作り、馬にも水桶を用意した。


 今日の昼食は実家から持ってきたお好み焼きだ。それに村長宅でおすそ分けされた自家製パンも添えた。


 前世ではお好み焼きと白米の炭水化物セットについての論争なんてのもあったけど、こちらでは今のところは平和なものだね。


「お好み焼きか! これもエールに合うんだよな」


 ゴーシュがアイテムボックスから出したまだ湯気の出るお好み焼きを見ながら口を綻ばせると、デリカがゴーシュに向かって眉を吊り上げた。


「家に帰るまでお酒は駄目だからね!」


「さすがに持ってきてないから心配するな」


 ゴーシュが肩を竦めながら言い返す。持ってきていたら飲みそうで怖い。飲酒運転ダメ絶対。


「しかしまぁ何度言ったか分からんが、アイテムボックスは便利なもんだな。ホラ見てみろ、一昨日作ってもらったっていうお好み焼きがまだ熱々だ。メルミナちゃんがうらやましいぜ」


 ゴーシュがお好み焼きをぶっ刺して口に運びながらボヤく。


「ギフトは生まれつきなんだから、うらやましがっても仕方ないわ。それにギフトが無くたってスキルを磨けばいいのよ」


「スキルか。デリカ、お前もそろそろ教会学校卒業だろ? その時にシスターに見てもらうんだよな?」


「うん、どんなスキルを持っているのか分かれば、きっと今後の役に立つからね」


 十二歳になると教会で所持しているスキルを任意で見てもらえる。本来は結構高いお布施を支払わないといけないのだが、教会学校を卒業すると無料で見てもらえるのだ。


 スキルは技能であり才能でもある。メルミナのギフトもそうだったが、本人に備わっていても、それを認識しないと発揮できないことは稀にあるらしい。教会でのスキルの鑑定はそういった人々の助けになる役割を担っているのだ。


「楽しみだわ! マルクとニコラも待ち遠しいわね!」


 デリカが屈託のない笑顔で笑いかけるが、正直なところ俺とニコラは生まれが特殊なので、楽しみよりも怖さのほうが少し勝っている。一応本人にしか分からない形で教えられるそうなので、プライバシーは大丈夫のようだけど。


 そんな話をしながら食事を終え、少し草原で休んでから再出発となった。またしばらく馬車に揺られながら時間を過ごす。


「そういえばここまで魔物が襲ってくることって全然無いね」


 旅に出る前は色々と心配していたんだが、ここまで遠くで鳥の魔物が飛んでるのを見た以外はまったく目に付かない。俺のつぶやきに馬上のゴーシュが答えてくれた。


「この辺は特に見通しがいいからなあ。元々街道っていうのは魔物が少ない道を通っていくうちに出来ていくもんだしな」


 言われてみればそういうものなのかもしれない。よっぽどの遠回り以外なら魔物のいない場所を通って行くものなんだろう。


「それに人っ子ひとり見かけないね?」


「セカード村とファティアの町の街道なんて利用する連中は殆どいないからな。領都とファティアの町ならそれなりに人が行き交うし、盗賊だって出没するらしいぞ」


「逆に言えばこの辺には盗賊はいないんだね」


「こんな街道を張り込むよりは領都付近の方が儲けがいいだろうよ。こんなところで行商を襲うような連中は、それこそ盗賊になりたての新米だろうな」



 そんな話をしながらしばらく時が経過した。後一時間ほどすれば町に到着しそうだ。家に帰ったらまずは父さんにテンタクルスを見せよう。後は父さんがテンタクルスに苦手意識がないことを祈るばかりだなあ。


『――お兄ちゃん』


 ふいにニコラから念話が届いた。更にニコラが続ける。


『何者かがこの馬車に近づいてきています。おそらく盗賊団です』

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