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【書籍化】異世界で妹天使となにかする。  作者: 深見おしお@『伊勢崎さん』コミックス1巻9/27発売!


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47 お好み焼き

 セジリア草+1の種を撒いた後、ニコラと共にキッチンに入る。キッチンでは父さんと母さんとお手伝いのおばさん、全員がフル稼働中だ。するとキャベツを切っていた母さんに振り返りざまに声をかけられる。


「あら丁度良かったわ。ふたりとも食堂を見に行ってくれる?」


「はーい」


 二人揃って食堂に向かう。ちょうど夕食の時間帯。テーブルはほとんど埋まっていたが、注文待ちのお客さんはいないようだ。


 とりあえずテーブルでも拭くかと考えていると食堂の扉が開き、胸元の開いた黒いドレスにワインレッドの長い髪の女性――セリーヌが入ってきた。


「あら、マルク、ニコラちゃんこんにちは。さっそくだけどエールとお好み焼きよろしく~。あ、一緒に持ってきてね?」


 そう言うとセリーヌはカウンター席にドシンと座った。昨日出発して今帰ってきたようだが、ずいぶんお疲れのご様子だ。


 お好み焼きはウチの人気メニューになった。作った当初は生地はともかくソースの方をうまく再現できずに随分苦戦したんだが、半年ほどの研究の結果、見事にお好み焼きに合うソースを作ることに成功した。……俺じゃなくて父さんがだけど。


 今では噴水広場の屋台でもウチのを模倣したお好み焼きが売られている。もちろんパクりだなんだと言うつもりは無いし、むしろバリエーションが増えてくれれば嬉しいと思う。


 キッチンに戻り父さんに注文を伝える。しばらく後、出来上がったお好み焼きを父さんから受け取った。


 表面で鰹節が踊っていたら最高なんだが、残念ながら鰹節は入手出来ていない。更に今は豚玉しかなく、イカの存在が不明なのでイカ玉も作れていなかったりする。この町は海に面していないからか、魚類に関しては色々と物足りない。


 いつかは海に面した町にも行ってみたいなと思いつつ、お好み焼きとエールをカウンターに運ぶ。


「ありがとー」


 セリーヌはお好み焼きをナイフとフォークで一口大に切って口に運び、むしゃむしゃと頬張りエールを一気飲みした。そしてエールのグラスをドシンとテーブルに置き、


「ぷはーうまいわー! この一杯のために生きてるわー」


 その気持ちは分からんでもない。分からんでもないけど……セリーヌはどんどん独女化が進んでいるように思える。かれこれ三年ほどの付き合いだが、未だに男の影は見えない。


 たまに誰かと一緒にいるのを見かけても、頼りなさげな新米女性冒険者にお節介を焼いているようなのばかりだ。もしかしたらソッチ系の人なのかしらんと思ったりもする。まあなんにせよ本人は幸せそうだし、変に気を回す必要もないだろう。


「昨日からどんな仕事に行ってきたの?」


「納品依頼でストーンクロウラーの外皮を取りに行ってきたわ。1匹分で金貨3枚だから飛びついたんだけど、生息地まで遠くて結局野宿するハメになったのよねえ。地図通りだと往復で一日で帰ってこれる予定だったのに、あの地図絶対に縮尺がおかしいわ……」


「地図なんかも見せてくれるんだね」


「依頼主お手製のね。ほんと適当な地図で大変だったんだから。あんなんじゃリピーター付かないわよ全く……」


 ぶちぶち文句を言い始めるセリーヌ。色々と鬱憤が溜まってそうなので今日はサービスしてあげよう。


「それじゃあ今日はポーション風呂に入る? 疲れも吹き飛ぶよ」


 文句をピタリと止め、セリーヌがすごい勢いでこちらを向く。


「いいの? ありがとう! いやー、今日はお風呂で気分をスッキリさせたいなと思っていたのよね!」


 そういうとバクバクとお好み焼きを食べ始めた。よっぽど早く入りたいらしい。


 ポーション風呂とはそのまんま、ポーションの風呂である。


 魔法の特訓の一環でポーション作りは薬草がある限り延々と続けているんだが、売れないのでどうしても余る。そこで試しにE級ポーション数個を浴槽に入れてみたところ、疲労回復効果やら美肌効果やらが体験した母さんやセリーヌから報告されたのだ。


 もう原液で浴槽何杯分かのE級ポーションがアイテムボックスには溜まっているんだが、さすがにもったいないので一回につき五個と決めた。


「ありがたくお風呂をいただくつもりだけど、ほんと贅沢な使い方ね。少しならポーション分も支払うわよ?」


「どうせ余ってるし、セリーヌはたまに僕のポーション買ってくれるじゃない。それで十分だよ」


「そりゃマルクの腕は私がとっくに見込んでるからね。実際E級の効果あるんだし、よそで買うくらいならマルクから買うわよ」


 1個につき銀貨7枚での販売だ。俺はギルドを介さず売れるしセリーヌは少し安く買える。ウィンウィンの関係なのだ。


「それで十分稼がせて貰ってるから、気にしないでいいよ」


「そっか。それじゃありがたく入らせて貰うわ。お礼に一緒に入ろっか?」


「はいはい。それじゃ準備してくるねー」


 定番の受け答えをしてカウンター席から離れる。


『お兄ちゃんももう八歳。そろそろお誘いも最後かもしれませんよ?』


 後ろでテーブルを拭きながら話を聞いていたニコラから、ニヤついた声の念話が聞こえる。


 そして俺の背後では


「セリーヌお姉ちゃん、一緒に入っていーい?」

「いいわよー」


 となにげにサボる気マンマンのニコラの声が聞こえた。

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