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【書籍化】異世界で妹天使となにかする。  作者: 深見おしお@『伊勢崎さん』コミックス1巻9/27発売!


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45 商人ギルド

 昼食後は空き地へと向かった。睡眠たっぷりのニコラも一緒だ。


 それとなく昨日はうるさくして悪かったねと言ったところ、今日ギルが持ってくるお菓子で手を打つとのこと。それで水に流してくれるなら安いものだ。


 空き地に到着すると、デリカ達ウルフ団の面々がちょうど町中を巡回という名のお散歩に行く直前だった。


「あっ、マルクにニコラ。いい時に来たわね! 一緒に巡回に行かない?」


「今日はちょっとギルおじさんに用事があるから遠慮しとくよ。また今度誘ってね」


「仕方ないわね。それじゃあ、みんな行くよ!」


 巡回を断るのはよくあることなので、デリカもあっさりと引き下がる。そして号令をかけると、デリカを先頭に一列になって空き地から出発した。


 それにしてもアレだ、デリカももう十歳。そろそろ親分が恥ずかしくなってくる年頃じゃないかな。今は元気娘だけど世話好きのお姉さんにジョブチェンジするのはいつ頃なんだろうか。


 ウルフ団を見届けた後は、畑の世話をしながらギルを待つことにした。


 トマト、キュウリ、キャベツが植えられた畑を見渡す。特にキャベツの存在感はすごい。初の収穫もそろそろだろう。


 もうすぐ美味しいキャベツが食べられると思うと、アレが食べたくなってくる。俺の中でキャベツを使うと言えば欠かせない料理、お好み焼きだ。


 この世界のどこかには似た料理はあるのかもしれないが、少なくとも今まで食卓のレパートリーに並んだこともなければ、話に聞いたこともない。


 畑のキャベツの手入れをしながら「お好み焼きが食べたいなあ」と思わず口にする。するとニコラが


「パパに作って貰えばいいじゃないですか」


 とあっさり言い放った。


「……俺がいきなり未知のメニューを父さんに教えるのっておかしくない?」


「冒険者の人から教えてもらったとか、適当に誤魔化せばいいんですよ。お風呂を作った時もそうしたじゃないですか。何よりお兄ちゃんの奇行とか今更誰も気にしませんよ」


 奇行て。そんなにやらかしてはないはずだ。でもまぁ確かに何とでも誤魔化せる気がしてきた。


「それじゃ収穫したらすぐにでも父さんにおねだりしようか。その時は一番いいキャベツを持って帰ろう」


「楽しみですね。むふふふ」


 ニコラがだらしない顔でニヤついている。早くも頭の中はお好み焼きで一杯なのかもしれない。


 それからしばらくしてギルがやってきた。ギルが俺にくれたお菓子をニコラに手渡し、さっそくアイテムボックスから取り出した軟膏とポーションを見せてみた。


「ほう、坊主がこれを作ったのか? どれ、貸してみな」


 ギルは俺から軟膏とポーションを受け取り、角度を変えて覗き込んだり、中身を嗅いだりしている。普段は見ることのない鷹のように鋭い目付きは、引退したとは言えかつては熟練の商人であったことを推し量るには十分だった。


「……これはセジリア草か?」


「うん、そうだよ。やっぱり分かるんだ、すごいね」


「分からないようじゃ商人はやっていけんよ。まぁ詳しく調べるときは薬品や魔道具を使うんだがな」


 ギルは軟膏の蓋を閉めながら続ける。


「軟膏もいい代物だが、ポーションの方は更に良さそうだ。セジリア草ならE級だろうな」


「うん、E級だと思うよ。E級ってお店で見たことないんだけど、これってどれくらいのものなの?」


「そうだな……。ちょっとした切り傷や打撲ならすぐ治るだろうし、風邪なんかも一発だな。値段は金貨1枚で売られてることが多いぞ」


「えっ、金貨1枚もするの!?」


 驚いた。これ1個でゴブリンの耳25個分の値段だ。


「それだけ魔法薬というやつは貴重だということだ。そりゃあ打撲も風邪も時間をかければ治るもんだ。でもそれが一瞬で治るんだぞ?」


 言われてみれば確かにそうだ。痛みや病気の辛さがお金ですぐさま解決するのなら金貨1枚くらい惜しくない人はたくさんいるだろう。


「それに作り手が少なくてな。F級ならともかくE級はこの町でも中央通りの店にしか置かれてないだろうよ」


「そうなの? 光属性の魔法なら教会のリーナ先生も使っていたけど」


「ああ、あの若いシスターか。F級ポーションを商人ギルドに卸していたな。だがあの姉ちゃんでもF級を週に十個で精一杯だと言っていた……ぞ?」


 ギルが何かが気になったかのように首を傾げると、訝しげに俺に尋ねる。


「なあ坊主、一応聞いておきたいんだが、このポーションにマナを込めるのに、どのくらいの時間がかかった?」


「えっ、三分くらいかな?」


「……そうか。今更驚かんがな」


 ギルは眉間を揉みながらため息をついた。どうやら普通のペースじゃないらしいのは俺にも分かった。


「いいか、坊主。光属性の使い手はそこそこ珍しい。この町でポーションを商人ギルドに卸してるのがシスターを含めて三人くらいだな」


 そんなに少ないのか。ギルが続ける。


「E級ポーションとなると注入するマナの量も作成難易度も上がるから、この町では誰も作りたがらない。その分F級を作ったほうが手軽だからな。中央通りで売ってるポーションも他所から仕入れてきたヤツだ。それをお前がちょちょいと作ったのは分かるか?」


 等級によって注入するマナの量と作る難易度が変わるらしい。なるほど、普通の薬草だともっと少ない量しかマナを込められないのか。難易度の方はよくわからないけど。


 しかしゴリゴリするのが大変だったし、ちょちょいと作ったわけではないんだけどな……。


「それじゃあ、コレって店で売れるの?」


 俺はポーションを指差す。


「売れん」


「えっ、なんで?」


「商人ギルドを通せないからだ。坊主はまだ六歳だろ? 商人ギルドは十歳にならないと登録出来ん」


「商人ギルドを通さないとポーションは売れないの?」


「個人で売りたくても品質が保証されてない魔法薬なんて、誰も高額では買ってくれんぞ。だからギルドに卸してギルドが品質を確認することで保証するわけだ。魔法薬は貴重だから作り手の取り分は多い。わざわざ自分で売るなんて面倒なことはしないな」


 たしかに知らない人から高額な薬なんて怖くてとても買えそうにない。ギルドを通すのって大事なんだなあ。


「まぁ十歳なんてすぐだ。ワシなんか親父について回って行商していたら気づけばこの歳よ」


 ギルがニヤリと笑い、そして俺の方を見ながら顎を擦った。


「そうだね。僕も試しに作っただけだし、魔法の練習にもなるから今は売れなくても構わないよ」


「そうか。しかしまぁ野菜作ったり森に行ったりポーション作ったり、その歳で色々とやるもんだな」


 六歳にしてはやりすぎだという自覚はある。だが


「せっかく魔法が使えるんだから使わないともったいないし、色々やってみないと何が将来の役に立つかも分からないからね」


『私を養ってもらわないといけませんし』


 ニコラがお菓子を口に頬張りながら念話を送ってきた。やはり自ら働く気は無いらしい。


 こうして畑に加えてポーション作りも日課になった。作っても売れないポーションはひたすらアイテムボックスに溜め込んだ。



 ――――――



 そして二年が経過し俺が八歳になった頃、薬草に変化が起きた。


 いつものようにポーションを作るためにセジリア草を刈り取り、アイテムボックスに詰めるとセジリア草の表記がいつもとちょっと変わっていた。


 セジリア草+1


 ん? +1ってなんだ?

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― 新着の感想 ―
[一言] もうポーションだけで、楽して生活できるじゃん…
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