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 無事に森を抜けた後は草原を町に向かって歩く。地面を照り付ける日差しはすっかり弱々しいが、どうやら夕方までには帰ってこれたようだ。


 あともう少しで門が見えるというところで、不意にニコラに腕を掴まれた。おおっと、すっかり忘れていた。そういえば壁を乗り越えて外に出たんだった。


「ラック兄ちゃん、僕らは壁を超えて帰るね」


「ああ、そうだったな。近くの見張りにバレないようにしろよ? コイツとも口裏合わせておくからな」


 ジャックの頭をガシガシと撫でながらラックが言った。ジャックは「分かったよ」と言ったきり、気の抜けたような表情でラックにされるがままだったが、おそらく森を横断した疲れが今頃になって出てきたんだろう。


 そしてラック達と別れ、行きと同じ様に階段を作って町の中へと戻った。壁に登るまで向こうの様子は分からないので見つからないか不安だったが、ニコラ曰く今は近くに誰もいないとのこと。


 そういえば今日一番びっくりしたのはニコラの感知能力だ。少なくともセリーヌがやっていたくらいの索敵は出来るようだし、今みたいに壁の向こうも感知出来るようだ。


 魔法でどうにかしてるのか、それともスキルなのか。ついでなので聞いてみた。するとニコラはあっさり「ギフトですよ」と答えた。


「私のは上司から与えられた神からの贈り物(ギフト)ですが、索敵スキル自体は自身の成長で身に付ける人もいます」


 俺のアイテムボックスのように、生まれたときに持っていなければ後天的に発生することのない特殊能力がギフトと呼ばれる。


 生まれたときから持っていても後天的に身につけることが出来る種類の特殊能力はギフトとは呼ばれない。おそらくニコラの感知能力はスキルで覚えるようなものとは別種なんだろう。


「ちなみにセリーヌは魔力を用いて索敵をしているようでしたね。私のギフトとは違うアプローチですが、そっちならお兄ちゃんも使えるようになるかもしれませんね」


 なるほど。便利そうだし、そのうちセリーヌに教えてもらおうかな。


「ちなみに私はもう一つギフトを授かってます」


「ええっ、マジでか。どんなの?」


「それは秘密です。今回は特別でしたけど、お兄ちゃんが私を頼るようになったら、私が楽できなくなるじゃないですか。私がお兄ちゃんに寄生するのはいいですけど、逆はナシです」


 寄生まで言い切りおった。まぁこれ以上追求しても教えてくれなさそうだし、ひとまず置いとこう。


 そうして俺達は家へと帰った。裏口から入ると父さんと母さんがキッチンで仕事をしていた。


「ただいまー」


「ただいまパパママ!」


「あら、おかえり二人とも。丁度良かったわ。手を洗ったらこのお料理を食堂に持って行ってくれる~?」


「うん、分かったー」


 どのテーブルと言わないってことは、今はお客さんは一人なんだろう。水魔法で手を洗い、さっそく皿を食堂に運ぶ。皿の上には日が暮れる前に食べるにしては重い料理が乗っている。早めの夕食だろうか。


 食堂に入るとセリーヌがいた。セリーヌはこちらに気付くと手をヒラヒラと動かし、俺の持つ皿を待っている。


「おまたせしました。セリーヌもう夕食? 早いね」


 ゴトリと皿をテーブルの上に置く。


「今日は昼ご飯抜きでぶっ通しで仕事だったからね、お腹が空いてるのよ」


 さっそく皿の上の料理をガツガツと食べつつセリーヌが答える。そしてふと顔をこちらに向けると、鼻をクンクンと鳴らした。


「……なんだか森くさいわね。外に行ってきたの?」


「え、いや、まあ……」


 思わぬ追求にしどろもどろになる。


「フーン。ま、深くは聞かないけど。ご両親を心配させちゃ駄目よ~」


 それだけ言うと目の前の料理に集中し始めた。冒険者って鼻が利くんだなあ。そのまんまの意味で。


 そんな出来事があったが、後は家の手伝いをしているうちに暗くなってきたので、薬草は明日植えることにした。


 そして翌日の朝、俺は家の裏庭に来ている。薬草が実際に育つかどうか観察が必要だと思うので、空き地ではなくこっちに植えることにした。ちなみにいつものことだがニコラはまだ熟睡中だ。 


 まずは土魔法で囲いを作ることにする。高さ二十センチほどの円柱型の石をたくさん作り花壇予定地を囲む。こちらでは見たことがなかったが、前世でよく見かけたアレである。そういう花壇っぽい体裁を整えていると、背後からセリーヌに声をかけられた。


「おはよう、マルク。なにか植えるの?」


 まだ朝方ってことでいつもの胸元を強調した黒いドレスは着ていない。ゆったりとした白のワンピースを着ている。ギャップ萌えでも狙っているんだろうか。フフン、俺には通用しないんだからねっ!


「うん。これを植えるんだ」


 素直に昨日採ってきたセジリア草を見せる。


「これはコボルトの森の……。ハハーンそういうことね」


「そういうことなんだ。あの、一応保護者はいたし、内緒にしてね?」


「分かったわよ。昨日も言ったけどご両親には心配させないようにね? それじゃ早く植えてみせてよ」


 あっさり話を流してくれたので助かる。


 今回は持ってきたのをそのまま植えるだけだ。持ってきた全てのセジリア草を花壇に植え直し、土には目一杯のマナを注入してみる。


 作業をしている間にセリーヌに聞いてみる。


「採ってきておいてなんだけど、薬草ってどうやって使うの?」


「すり潰して塗り薬にするのが一番簡単な使い方ね。後はすり潰したあとに水と混ぜて光属性のマナを溶かし込んでポーションも作れるわ」


 ポーションかー。よくは知らないけど、単なる塗り薬よりもそっちのほうが夢が広がりそうだ。栽培に成功したらそっちの方向で試してみるかな。


 しばらくして全てのセジリア草が花壇に植えられた。


「さて、これで今日は終わりだよ。後はここで育つかどうかかなー」


「さすがにすぐに結果はでなさそうね。よし、それじゃお風呂入ってくるわ。マルク、背中を流してくれる?」


「当店ではセルフサービスになっておりまーす」


「あら残念。ふふ、それじゃあねー」


 そう言って笑い合いセリーヌと別れる。すると突然念話が聞こえた。


『相変わらずヘタレで笑えますね。一緒にお風呂イベントとか、子供の特権だというのに』


 上を見ると、ニコラが二階の窓からこちらをニヤニヤしながら見ていた。ヘタレですいませんね!

初投稿から一ヶ月が経ちました。読んでくださる方がいるというのは本当に励みになりますね。本日も読んでくださり、ありがとうございました。

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