表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】異世界で妹天使となにかする。  作者: 深見おしお@『伊勢崎さん』電撃大王連載中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

375/387

375 三度目の森

 デリカに同行の承諾を得てから数日後。


 俺、デリカ、ニコラ、ディアドラの四人は町の近くにある森に足を踏み入れた。最初はセリーヌと冒険者体験のために、二度目は行方不明になったジャックを捜索に行った、あの森だ。


「ふわわ……森の匂い……すき、すき……」


 久々に森に戻ってきたことで、ディアドラはいつも以上に上機嫌。普段はのんびりてくてくと歩く彼女だが、今は軽くスキップするように前へ前へと歩いていた。


 そしてそんなディアドラに、デリカが言いにくそうに告げる。


「あの、ちょっと、ディアドラさん……。あんまり前に出ないでね? 私の剣の特訓が……」


「そうだよ、ディアドラ。デリカの邪魔をしないようにね。それに一番前にいると、ゴブリンに襲われちゃうかもしれないよ?」


「あう……ごめんなさい……。ゴブリン、怖いの……」


 デリカと俺の言葉にぴたりと足を止めたディアドラは、首をひっこめながらおずおずと後ろに下がってきた。そしておもむろに俺の手を握る。


「マルクに……掴んでもらえば、前に出ない、出れない……。手……つないで?」


 なんだか手をつなぐというより、お散歩中のワンちゃんのリードを持つような気分だ。でも前に出られるよりはいいだろう。


「いいよ。デリカの邪魔をしないようにしようね」


「ん……」


「ディアドラちゃん! ニコラとも手をつなご!」


「うん、いい、よ……」


「わーい!」


『すべすべおててゲットです!』


 ニコラからいつもどおりの念話が聞こえた。たしかにディアドラの体はマナを元に実体化しているからか、他の誰とも違う不思議な感触がして、触っているととても気持ちがいい。


 そしてディアドラを中心に三人仲良くおててをつないだ俺たちを見て、デリカががっくりと肩を落とした。


「うう……。特訓の同行を許可したの、間違いだったかしら……」


 あーたしかにコレはゴブリンを切った張ったするような雰囲気じゃないよね。完全にピクニックの空気だ。そう考えるとデリカに少し悪い気がしてきた。


「ごめんねデリカ。それじゃあ……こういうのはどうかな?」


 ディアドラと手をつないでいるし、ちょうどいい。俺はその場でギフト《隠密》を発動させてみた。途端に俺たちと周囲の境目が無くなるような、不思議な感覚に包まれる。


 俺たちを見ていたデリカが目を(またた)かせた。


「……え? あれ? マルクとディアドラさんが……? ん? いるよね? でもなんかヘン……」


 やっぱり直接触れていないニコラには効果は薄いようだ。しかしやらないよりマシだろう。俺は隠密を発動させたままデリカに説明する。


「気配を消すギフトを使ったんだ。これなら特訓に集中できるんじゃないかな」


「えっ、気配を消すギフト? マルクってそんなものまで授かってたの!?」


「あー、うん。そうだったみたいなんだよね」


 本当は野盗のルモンから偶然奪ったものだが、それを知るのはあの時現場にいたニコラ、セリーヌ、エステルだけだ。デリカを信用しないわけじゃないけれど、知る人は少ないほうがいい。


 曖昧な返事をした俺だが、デリカが特に気にした様子もなく言い放つ。


「まあ、初めて会ったときからマルクはすごかったし、ギフトをいくつも持ってたって、いまさらよね。……よし、それじゃあ後ろで私の特訓を見てるのよ!」


 デリカは気合いを入れるように鞘から剣を抜き、ブンッとひと振り。そして前へと向き直ると、けもの道をずんずん歩いていくのだった。



 ◇◇◇



 気分を入れ替えた俺たちは、森の中を奥へ奥へと進んで行く。すると突然木陰からゴブリンが飛び出してきた。


 ――ザンッ


 だがゴブリンが手に持つ棍棒を振るうよりも早く、デリカの剣がゴブリンの胴を切り裂いた。


「フン、不意打ちなんて甘いのよ」


 剣を鞘に収めながらポツリと呟くデリカ。まあ体が木陰から半分見えててバレバレだったもんね。


 それにしても、デリカが真剣を扱うのを見るのは久しぶりだ。サドラ鉱山集落までの道中で、死にかけのグラスウルフを斬ったのを見た以来である。


 そんなデリカの腕前だが――以前、ジャックの兄貴のラックがコボルトを屠るところを見せてもらったことがあった。


 それに比べるとデリカの剣術にはそこまでの力強さはないものの、足さばきや剣を振るうスピードなんかはなかなか良いものを持っているように見える。まあ素人目+贔屓目なんですけどね。


 ちなみにエステルの短剣の腕前はラックと比べても、もっと速くてエグかった。そしてさらにその上をいくのがマイヤである。


 ……師弟関係となったあの二人、領都で仲良くやってるかな――っと、いけないいけない。今はこちらに集中しないと。


「ねえ、デリカ。それで今日はどこまで進むことになりそうなの?」


 特訓とはいえ、お小遣いにはなるゴブリンの耳を刈り取り中のデリカに声をかけた。森に入る前にも聞いてはみたのだけれど、その時は「状況次第ね」としか言ってくれなかったのだ。


「そうね……。父さんには一人でいるときはゴブリンの森までって言われてたけど、今日はマルクがいるってことで、コボルトの森まで行っていいって言われてるのよね」


 コボルトの森は今いるゴブリンの森よりもさらに奥地だ。集団戦闘が得意なコボルトがいるということで、初心者が足を踏み入れるものではないとラックに聞いたことがある。


 そんなコボルトの森に俺がいるなら行ってもいいだなんて、ゴーシュにずいぶんと信用されたものだ。


 ……そういえば森に同行することが決まった翌日、ゴーシュがウチの両親に挨拶に来たのだが、その時たまたま食堂にいたセリーヌともなにやら熱心に話をしているようだった。


 たまにこっちをチラッと見ていたし、あの時は俺への恨み言でも言ってるのかなと思っていたけど、もしかしたら俺の腕前みたいなものをセリーヌに聞いていたのかもしれない。


 デリカはゴブリンの耳を革袋に詰め込み立ち上がると、こちらに向かってニヤッと笑みを浮かべた。


「だからね、今日はディアドラさんのお気に入りだっていう泉まで足を伸ばしてみようかなって思ってるの」


 泉に行くと聞いて、ディアドラの表情がぱあっと輝く。


「わあ……泉、行くの? デリカ、すき!」


 ディアドラが俺の手を離して、デリカの背中に抱きついた。よっぽどうれしいようだ。今まで言わなかったのはデリカなりのサプライズなのだろう。大成功だね。


「ちょっ、ディアドラさんっ。ああもう、くすぐったいからっ!」


 と照れながら悶えるデリカ。


『ああいう無邪気を装って抱きつきにいく奥義を習得しているとは、ディアドラちゃんもなかなかやりよる……』


 などと感心しているニコラだが、お前と違って本当に無邪気なだけだと思う。


 だがディアドラはピタリと動きを止めると、すぐにデリカから離れて俺の元に戻ってきてしまった。


「どうしたの、ディアドラ?」


「デリカ、ゴブリンくさいの……」


 それを聞いたデリカは服の首元をつまみ、スンスンと体の臭いを嗅いで、顔をしかめた。


「ちょっとみんな、私に近づかないでね……」


 悲しそうに呟くデリカ。ゴブリンと差し向かいで戦えば、いろいろ飛び散っちゃうしね、しょうがないね。


『近づくなと言われると、余計に嗅ぎにいきたくなってくるんですけど、ここは特攻すべきでしょうか……?』


 性癖をこじらせつつあるニコラからの念話が届くが、それは本気に怒られそうなので止めたほうがいいと思うよ。

 カクヨム版「異世界で妹天使となにかする。」の投稿も始めております!


 内容はなろうWEB版の準拠で、投稿しながら設定の変更やらなにやらの気になる部分を修正したりしてます。カクヨム版もなろう版と同じく応援していただけるとうれしいです!よろしくお願いいたします\(^o^)/


 カクヨム版のリンクはこちら!

https://kakuyomu.jp/works/16816452219906764017

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作『ご近所JK伊勢崎さんは異世界帰りの大聖女
~そして俺は彼女専用の魔力供給おじさんとして、突如目覚めた時空魔法で地球と異世界を駆け巡る~』

タイトルクリックで飛べます! ぜひ読んでくださいませ~!

書籍発売中!「異世界をフリマスキルで生き延びます。~いいね☆を集めてお手軽スキルゲット~」もよろしくお願いします!

↓クリックで特集ページに飛びます。
i000000

「異世界で妹天使となにかする。」一巻二巻発売中!
Kindle Unlimitedでも読めますよ~。ぜひご覧になってください!
コミカライズ一巻発売中! ただいま「ニコニコ静画」にて連載中です!


↓クリックで二巻書報に飛びます。
i000000

i000000
↑クリックで一巻書報に飛びます。

Twitterはじめました。お気軽にフォローしてくださいませ。
https://twitter.com/fukami040

ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
[一言] >「えっ、気配を消すギフト? マルクってそんなものまで授かってたの!?」  (元)天使から授かった隠密ギフト! >『ああいう無邪気を装って抱きつきにいく奥義を習得しているとは、ディアドラち…
[一言] 追いついたしまった…… 楽しく読ませてもらっています カクヨムの方も引き続き応援ぽちぽちしてますよー(⭐︎3済)
[一言] マイヤ>エステル>ラック>デリカか… で、こいつらに「もう全部あいつ一人でいいんじゃないかな」って言われそうなのがマルク、と
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ