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【書籍化】異世界で妹天使となにかする。  作者: 深見おしお@『伊勢崎さん』電撃大王連載中


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323 マイヤさん

「……さてと、それじゃあ行きましょうか」


 依頼書にギルドカードで印を捺(お)したセリーヌがこちらに振り返る。


「待ってください、セリーヌ様」


 そこでマイヤが声を上げた。


「依頼主に渡すだけとはいえ、これだけの人数でぞろぞろと出向くのはあまり良くないのではありませんか?」


「――ぶふっ、さっきも思ったけどよ! お前のその口調、本当に似合わねえな!」


 こらえきれなかったように副ギルド長が吹き出すと、腹を抱えて笑い始める。すると突然、マイヤの切れ長の目が鋭く釣り上がった。こわっ! バックに「!?」が見えそうなヤンキーの目つきだ。


「……うるせえ。お嬢様に粗野な口調がうつったら責任取れるのか? あぁ? お嬢様のいねえ所でなら普通に話してやるから、今は黙ってろ……」


「おっ、おう……」


 後ずさりして、またしても両手を上げる副ギルド長。リアーネも目を白黒させているし、本当に今まで猫かぶってたんだなあ。


「それで、いかがなさいます? セリーヌ様」


 マイヤは再び取り澄ました表情でセリーヌに尋ねる。その変化にセリーヌは苦笑いを浮かべながら、


「そ、そうねえ……。言われてみればそうかもしれないわね。でも……」


 俺たちを見回した。セリーヌが一人で行くとなると、俺たちはどうするんだという話のようだ。しかし既に考えがあったのだろう、マイヤが即答する。


「心配ありません。リアーネ様がたまにお忍びで行かれる軽食店が、この近くにあります。そちらに皆様をご案内いたしましょう」


「えっ、でもボク……」


 エステルが戸惑いながら口を開いた。どうやらセリーヌに付いていきたかったようだが――


「ねえエステルさん。人付き合いが苦手とおっしゃられるなら、この機会に少しは慣れてみませんか? 今回はわたくしたちとご一緒いたしましょう?」


「うんうん、一緒に行こ! エステルちゃん!」


 優しく微笑むリアーネと、あっさり食べ物に釣られたニコラの二人に誘われたエステルは、少し考えた後、意を決したようにリアーネに向き直った。


「そ、そうだね、です。あの、よろしくお願いします」


「まあ、うれしいですわ! 軽食店で女子会というものを見かけたことがあるのですが、これはまさしく女子会ですわね!」


 ぺこりと頭を下げたエステルに、リアーネが両手を合わせてはしゃぐように喜ぶ。……ふっ、女子会か。ナチュラルにハブられたぜ。


「あ、あの、マルクは……?」


 気をつかってエステルが声をかけてくれたが、その瞬間、こちらに向かってにこりと微笑むリアーネの目が『空気を読んでくださる?』と雄弁に語っていた気がした。俺は首を振って答える。


「僕はセリーヌと一緒に行くよ。マイヤさん、一人くらいならいいでしょ?」


「……そうですね。問題ないと思います」


「はい、決まりと。それじゃあマルクは私と行きましょうか。マイヤ、夕食までに戻ればいいのよね?」


「そのようにお願いいたします」


「わかったわ。それじゃあお先に出るわね~」


 血の入った革袋を手に取ると、セリーヌはさっそく部屋から抜け出した。俺もその後を急いで追いかけたのだった。



 ◇◇◇



「――ねえマルク。あんたお嬢様になにかやらかしたの……? って、あんたに限って悪さをするわけないわよねえ」


 冒険者ギルドを出て少し歩くと、セリーヌが慰めるように俺の頭をぽふぽふと撫でながら尋ねてきた。やはりセリーヌもリアーネの態度には気づいていたようだが、俺が悪くないという前提で聞いてくれるのが嬉しい。


「前に石玉を領主様に差し上げた話はしたでしょ? 領主様はその石玉をリアーネ様に見せたらしいんだけど、それからリアーネ様はずっと石玉を作る練習をしているんだって。僕に対抗意識を燃やしているんじゃないかなあ」


 説明しながら軽くため息がでてきた。努力する子は嫌いじゃないけれど、目の敵(かたき)のようにされるのは少し堪(こた)えるね。


「へえ~? あの石玉を見て意地になるなんて、なかなか見どころあるじゃない。冒険者たるもの、負けん気が強くないとね」


「いや、そもそも伯爵令嬢なんだけどね……」


 とはいえ、貴族なら魔法が使えなくてもいいんじゃないかというと、どうやらそういうものでもないらしい。


 勉学の才があれば勉学に励み、芸術の才があれば芸術に打ち込み、そして魔法の才があるならば魔法の腕をみがく――せっかく授かった長所を伸ばすことこそが、貴族の義務なんだそうだ。


 リアーネには魔法の家庭教師までつけているという話もトライアンから聞いた。


「まっ、そういうことなら問題ないんじゃないかしら? 嫌われてるってわけでもないみたいだしね。……そ、それともマルク、あのお嬢様に気に入られたいの?」


 なんだか早口気味にセリーヌが尋ねる。うーん、そうだなあ――


「お貴族様とは距離を取りたかったし、ちょうどいいと言えばちょうどいいのかな……?」


 よく考えてみると悪いことではない気がした。トライアンからは娘と仲良くして欲しいと頼まれはしたけれど、こちらが無理に歩み寄ってまで仲良くなる必要はないと思っているし。


 そんな俺の答えにセリーヌは上機嫌に笑いかけた。


「ふふっ、あんたも言うじゃない。でも同感よ、お貴族様のお相手は疲れるからね。……そういえばマイヤも以前は似たようなこと言ってたはずなんだけどね~。どうしてあんなことになったんだか」


「マイヤさんってセリーヌの知り合いなんだよね?」


「ええ、そうよ。私が領都を拠点に活動している頃に知り合ってね。今の姿から考えられないくらいに喧嘩っ早くてガサツだったけど、面倒見が良くて色々と世話になったわ。それがある日、突然姿を消してね? 仕事で死ぬようなタマじゃないとは思っていたし、ふらりと別の町にでも拠点を移したのかと思っていたんだけど……。まさか領主様のところにメイドとして就職してたとはねえ」


 セリーヌは遠い目をしながら過去を語り、ふるふると首を振った。


「まっ、マイヤのことは今夜にでも聞くとして……。それよりさっさと用事を済ませましょうか。その後は女の子に振られたかわいそうなマルクに、領都で私がお気に入りだったお店で昼食をごちそうしてあげるわね~?」


 いじわるそうに笑ったセリーヌが、俺の頭をかき混ぜるように撫で回す。


「別に振られたわけじゃないからね……。それでダルカン商会だっけ。どこにあるの?」


「ふふっ、それはホラ、冒険者ギルドに行く途中にエステルが言っていた金ピカの建物があったでしょ? アレよん。できることなら店主が不在のうちにさっさと店員に革袋を押し付けて帰りたいところね」


 あのクセが強い建物のヌシか。セリーヌもあまり会いたくなさそうだし、クセが強い人物なのは間違いなさそうだなあ。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 早速、監視目的の同行者と別行動しちゃってるけど描写がないだけで他にも監視がいたのかな?
[一言] そう、尻が大事ならホモとは距離を置くんだ ソーシャルディスタンスって言っときゃ何とかなる
[一言] 領主の義理の息子になって、 お義父さん、やめて下さい だめえ、許して!? って言うルートもちょっと面白いなって思っていました。 セリーヌさんといちゃいちゃする方がより良さそうです。
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