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【書籍化】異世界で妹天使となにかする。  作者: 深見おしお@『伊勢崎さん』コミックス1巻9/27発売!


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31 休憩

 森の中で見つけた川に沿って少し進むと、見晴らしのいい場所にたどり着いた。いくつもの切り株が並んでおり、椅子やテーブル代わりに使えそうだ。誰が最初に場所を整えたかは分からないが、冒険者が休憩に使っている共有スペースらしい。


「あのまま帰ってもいいんだけど、せっかくだからこういうのも体験しておかないとね」


 セリーヌが腰紐に備え付けた革袋から干し肉と黒いパンを取り出して、俺とニコラに手渡す。


「苦手でも今回は出来るだけ食べなさいよ」


 これが噂の干し肉と黒パンか。実家の食堂では干し肉は出さないしパンも白パンなので、こういうものは話に聞いたことはあっても見るのは初めてだ。


 口に含んでみると、噂通り干し肉はしょっぱくて噛み切れないし黒パンも硬い。


 セリーヌを見てみると干し肉を黒パンにギュッと押し込んでモギュモギュと噛んでいる。さすがに慣れた様子だけど、子供にこの硬さはちょっときついな。


 水魔法でお湯を出してみる。以前は水しか出せなかったが、火魔法も絡めることでお湯を出せるようになった。ベチャベチャにしない程度に黒パンを湿らせて干し肉と一緒に食べてみる。硬さは随分マシになった。


「お兄ちゃん、ニコラにもお湯ちょうだい」


「ほい」


 ニコラの目の前にお湯を出すと、ニコラも同じ様にパンを軽く湿らせてモッギュモッギュと食べはじめた。


 セリーヌが呆れ顔でボヤく。


「マルクはほんと器用に魔法を使うわね。逆に使えない属性とかあるの? ついでに私にもお湯ちょうだい」


 セリーヌはお湯で手を軽く洗うと、お湯を手で受けて飲み始めた。


「うーん、闇と無は使ったことがないから分からないかな」


 闇属性は周囲を暗くしたり、対象の能力を下げたり出来るらしい。無属性は属性防御の高い魔物を攻撃できる手段なんだとか。どちらにしろ戦闘では役に立つこともあるだろうけど、普段の生活で使うことはなさそうなので練習はやっていなかった。


 いつどこで役に立つかも分からないから、使えないより使えたほうがいいんだろうけど、今は他の属性の魔法も上達しているし、他が伸び悩んでからもでいいだろうと思う。


「んぐんぐ……お湯ありがと。それだけ器用なのにストーンバレットは使えないのねえ」


「ストーンバレットって石を相手に当てる魔法なんでしょ?」


 石を生成し動かしてみる。石がスーっと動いて、マナが届かない距離まで進むと止まって落ちた。


「これ以上は届かないよ」


「……例えばだけど、私のファイアアロー。魔物に当てるところまでマナでコントロールしていると思ってる?」


「え? そうじゃないの?」


 セリーヌは手をポンと叩いて


「なるほどねえ~」


 なにやら一人で納得したらしい。そして説明してくれた。


「例えば石ころを何かに当てたい場合、手を伸ばしたところまでしか届かないわけじゃないでしょ? 石ころを投げることが出来るわ。そして投げるためには手を振りかぶって手を離すわよね?」


「あっ、そうか!」


 セリーヌの言いたいことは分かった。マナで全てを動かすんじゃなくて、推進力を加えて離せばいいんだな。


 さっそく石を作り出し、前に飛ぶようにマナを込めてみる。


 ――ボンッ


 石が爆発した。


 石の硬度が低すぎたか、マナを込めすぎたみたいだ。セリーヌが何も言わずにこちらを見ている。


「次はいけそうな気がする」


 それだけを答え、もう一度集中する。もっと石を硬く、そしてマナの量は減らしてみる。そうだ、ついでに弾道が安定しやすいように、長細く、先端は尖らせ、底は平たい形にしよう。


 前世でよく知られる弾丸のような形だ。正直理屈はよく分からないがあれだけ前世で普及してるならきっとこの形がいいんだろう。なにより魔法がイメージが大事だから自分がいいと思うものが一番いいのだ。


 弾丸が出来上がった。さっそく前に飛ばしてみる。狙いは川の中ほどに見える大岩だ。今度こそ!


 弾丸は俺の手から離れ、音も無く川の上を飛んで行った。


 ――バゴォン! 


 三十メートルほど向こうの苔むした大岩が粉砕された。大成功だ!


「セリーヌ、出来たよ!」


 今度こそドヤ顔でセリーヌの方を振り向く。


「やったじゃない! やれば出来る子だと思ってたわ~!」


 セリーヌが俺を抱き寄せて頭を撫で回す。俺の横っ面に柔らかいものが当たる。おっぱいってやっぱりイイネ。


「お兄ちゃんすごーい!」


 ニコラは俺に抱きついてきたように見せかけて、セリーヌに密着して色々堪能していた。


『ぐへへ……』


 そういうのは念話で言わなくていいからね。


「それだけの威力があれば、D級までの依頼に出るような魔物なら一撃かもね。まぁ粉砕して素材が残らないかもしれないけど」


「素材?」


 セリーヌが俺を撫で回すのを止めて答える。


「魔物はただ討伐するだけじゃなくて、骨や皮や血液やら色々と使えるのよ。中には食べられる魔物もいるからね」


「えっ、ゴブリンも食べたりするの?」


「いやいや、ゴブリンは食べないわよ! 基本的に二本足で歩く魔物は食べないかな? 食べるとしても四本足の魔物ね。まぁ森で迷って食べるものに困った冒険者がゴブリンを食べて生き延びたなんて話も聞いたことはあるけど、普通は食べないわ」


 そういうものか。前世でも一部で猿なんかを食べる方々もいたけど、普及していたとは言い難いし、本能的に自分たちと同じ二本足の魔物は避けるものなのかもしれない。


「そういうことだから、冒険者を目指すなら粉砕しないで魔物を倒せるようになったほうがいいかもね。まっ、今のストーンバレットの威力だけでも、冒険者で食っていけるレベルだけど」


 大きく育つのよ~と俺の頭を最後にひと撫でして、セリーヌが立ち上がった。休憩は終わりらしい。セリーヌにくっついていたニコラも名残惜しげに離れる。


「それじゃあそろそろ帰りましょうか。行きと違うルートを通るから気を抜かないようにね。さあ付いて来なさ~い」


 俺とニコラはカルガモの親子のように、セリーヌの後ろに付いて歩きはじめた。

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