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27 冒険者ギルド

 すぐに家へと引き返しキッチンにいた母さんと父さんに、セリーヌに連れて行ってもらって町の外でギルド依頼を見学する話を告げると、あっさりと承諾された。


「いいわよ~。そろそろ一度お外を見せてあげたいと思っていたし、セリーヌさんなら安心だわ」


 母さんはセリーヌの提案を歓迎し、父さんは頷いて俺の頭を撫でている。


 多少は話し合いの場が持たれると思っていただけに肩透かしだった。思ってたほど外は危険じゃないのか、両親が楽観的なのか、セリーヌを信用しているのか。どれだか分からないけど、あっさりと話が進むなら気にしないことにした。


 ちなみにニコラに同行するのか聞いてみると、付いて行くと答えた。意外そうな顔をしていると


『サポートというお役目は忘れてませんよ』


 とのことだった。



 ――――――



 そして翌日、セリーヌとニコラと共に自宅を出発し、冒険者ギルドへと出かけた。


 南の噴水広場から大通り沿いに町の中央に向かって進む。この辺を歩くのは初めてだ。自宅周辺は住居以外では食料品や細々とした雑貨や古着等、日々の生活に必要な露店や店舗が多かったが、この辺りでは自宅周辺には無かった武具の店や鍛冶屋なんかをよく見かける。


 その中に殊更変わった建物があった。上下に空間があり真ん中を押すと開く、いわゆるウエスタンドアがやたらと目立つ。前世の知識まんまの如何にもな冒険者ギルドだった。


 中に入ると建物の右側半分を占めるのは飲食スペースだ。朝っぱらから酒を飲んでる革鎧を着込んだおっさんがセリーヌに声をかける。


「おいセリーヌ。なんだそのガキは? お前の隠し子か? グハハ!」


「ええそうよ、かわいいでしょ。分かったらもう私を口説くのやめてよね」


「えっ!? マ、マジかよ……。嘘だと言ってくれよぉ……」


 自分で聞いておきながらセリーヌの冗談にショックを受けて項垂れている。ずいぶんと若く産んだなら俺くらいの子供がいてもおかしくはなかったりするけど、そもそもセリーヌの言い方で冗談かどうかぐらいは分かると思う。おっさんはずいぶんと酔っ払ってるな。


 セリーヌはおっさんを放置して飲食スペースの反対側へと向かった。壁には大きな掲示板が打ち付けられており、そこには大小様々な紙が貼られている。依頼書ってやつだろう。


「ここで自分の能力や希望に沿った依頼を探して、あっちのカウンターに持っていくのよ。えーと丁度いいのはあるかしら」


 しばらくするとセリーヌは一枚の依頼書を掲示板からはがし取った。ちらっと「ゴブリン」という文字が見えた気がする。


「やっぱりこれが一番ね。薬草取りなんて、やったところでつまんないでしょうし」


 つまるつまらないの話ではないとは思うんだけど、外で薬草を取ってくるくらいの依頼なら、わざわざ見学までする必要もない気がしたので、特に異論はなかった。


「ゴブリン?」


「そう、ゴブリンの討伐依頼。常設依頼と言って、だいたいいつも貼り出されてる依頼なのよ。ゴブリンが増えると人が襲われたり外の牧場なんかにも被害が出るし、常に数減らしておかないとね~」


 害獣駆除みたいな扱いなのかな。


「まぁゴブリンだし一匹あたりの値段は安いから、ある程度慣れた冒険者には人気の無い依頼なんだけどね。でもあんた達に体験させるなら丁度いい依頼よ」


 セリーヌはにっこり笑うと腰を曲げてニコラを撫でた。そしてそのまま依頼書をヒラヒラと振る。


「さて、これから依頼書をカウンターまで持っていくわね。本当は私一人でカウンターに行けばいいんだけど、せっかくだからあんた達も付いてきなさい」


 セリーヌは俺の頭もポンと撫でると、二つあるギルドの受付カウンターの内、順番待ちの少ない方へと進んだ。俺とニコラも一緒に並ぶ。しばらくするとすぐに自分達の順番になった。セリーヌが備え付けられた椅子に座る。


 艷やかな黒髪を背中まで伸ばした受付嬢だ。やっぱりこの世界でも顔採用というのがあるんだろうか。美人である。


「こんにちはセリーヌさん。……あら、今日はかわいいパーティメンバーがご一緒なんですね。ようやくソロは卒業でしょうか?」


 受付嬢はこちらを見てニコリと笑いかける。


「うふん、将来のパーティーメンバーになるかもね。今日はこの子達の社会見学みたいなものよ。コレお願い」


 セリーヌは依頼書を受付嬢に手渡す。受付嬢が依頼書に書かれた内容を読んで、困惑した口調でセリーヌに問いかけた。


「えっ、薬草採取等ではなくてゴブリンの討伐なんですか? 一応確認しますけど、冒険者やその付き添いの怪我や死亡は自己責任で、ギルドでは一切の補償はありませんよ。ご理解いただけてますよね?」


「分かってるわよ。この子達二人くらいならちゃあんと守れるわ」


「……まぁ、確かにセリーヌさんなら大丈夫ですね」


 そう答えると受付嬢があっさりとセリーヌに依頼書を返した。どうやらセリーヌはギルドの中で実力を認められているようだ。この町の規模からするとC級冒険者というのは珍しいのかもしれない。


 セリーヌが懐からカード状のものを取り出す。受付嬢から依頼書を返してもらうと、その上にカードを置きマナを込めた。すると依頼書になにやら紋様が描きこまれる。紋様はうっすらと輝いたが、しばらくすると輝きを失う。不思議そうに眺めているとセリーヌが教えてくれた。


「これはギルドカード。ちょっとした魔道具になっていて、これを使って依頼書に署名をするのよ」


 なるほど。どういう仕組みかは分からないけど手書きのサインやただの判子よりも本人証明には良いものなんだろうな。セリーヌが再び依頼書を受付嬢に手渡す。


 受付嬢が大きめの判子のようなものを取り出し、依頼書にポンと押すと、これもまた微かに光った。これもなんらかの魔道具なんだろう。


「はい、確かに受領いたしました。セリーヌさんお気を付けて。君たちもセリーヌさんから離れちゃだめよ?」


 これで依頼の受付は終了らしい。


「心配しないで。ゴブリンなんかに指一本触れさせないわ。それじゃ、行ってくるわね」


 セリーヌがカウンターを後にする。受付嬢がこちらに向かって小さく手を振っていたのでニコラと二人で手を振り返し、小走りでセリーヌに追いつく。


 冒険者ギルドから出る時に横目で見ると、飲食スペースの皮鎧のおっさんは酔い潰れて眠っていた。酒は飲んでも飲まれるなだな。酒が原因で死んだ俺が言うのもなんだけどね!

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