表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】異世界で妹天使となにかする。  作者: 深見おしお@『伊勢崎さん』コミックス1巻9/27発売!


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

230/387

230 ぎゅっ、シュバッ! ふぉ~ん

 演説を続けるディールに他人の振りをしつつ公園を横断し、その後しばらく森の中を進むと川へとたどり着いた。この向こうが目的地の狩場とのことだ。川幅はそれなりにあるけれど、もちろん橋なんて掛かっていない。


 それなら土魔法で橋か足場でも作ろうかな? なんて考えていたところ、川岸に立ったディールがこちらに振り返り腕を組みながら高らかに宣言する。


「よし! それでは俺が一人づつ抱えて川を渡ってやろう!」


 そう言い放ったディールは緑色のマナを全身に纏ったかと思うと――、ふわりと宙に浮かんだ。


 おおっ、セリーヌが重力を無視してふんわりと着地をしたことがあるし、もしかしたらと思っていたけれど、やっぱり空を飛ぶ魔法もあるんだなあ。


『はー。ただのやべー奴じゃなかったんですねー』


 感心したようなニコラの念話が届く。まったくもって同感である。なんだかんだ言いつつも、セリーヌが魔法の実力を認めてるってのは伊達じゃなかったんだなあ……。


 ディールはただのカッパ型珍獣ではなかったようだ。そのように評価を上方修正したところで、セリーヌが冷めた言葉を彼に投げかけた。


「ディール、あんたって確か浮くのがやっとで、ひとっ子ひとり持ち上げられないんじゃなかったっけ?」


「ふむ。これまでは確かにそうだった。……だが! 今日こそやれる気がするのだ! さあ、セリーヌ! 俺に身を任せるがいい! 必ずやお前を対岸まで届けてみせようではないか!」


 ふわふわと宙に浮かんだディールが鼻の穴を大きくしながら両手を広げて見せると、セリーヌが嫌そうな顔をして後ずさった。うわ、セリーヌのあんな顔を見たの、ウチの食堂で飲みすぎたおっさんが吐いたゲロを見た時以来だよ。


 しかしセリーヌのそんなレア顔よりも、ディールに聞いておきたいことがあった。


「ねえ、ディールさん。体を浮かすのってどうやってやるの?」


 俺の声にディールはふよふよと浮きながらセリーヌににじり寄るのを止め、こちらへと振り返る。


「ふむ、これか? 風のマナを全身にふわっと放出させた後に、腰のあたりでぎゅっとしてシュバッ! そしてふぉ~んとするのだ」


「なに言ってるの、あんた?」

『なに言ってるんですかね、この人』


 セリーヌの冷めた声とニコラの念話でツッコミが入るが、風のマナをふわっと放出した後、ぎゅっ、シュバッ! ふぉ~んなら、全く意味が分からないってこともない。


 俺は「どうしてこれが分からないのだ?」と馬鹿にしたようにセリーヌを見つめるディールをよそに、さっそく風のマナを全身にふわっと放つ。


 後は、と……、腰でぎゅっとして……シュバッ! そして……ふぉ~ん……。……お、おお!? 体が浮いてきたぞ!


「フハハ! 子供! 筋が良いではないか! 後はそれを維持しながら動くだけだな。だがそれにはかなりの鍛錬が必要になるぞ!」


 ディールが俺を見ながら満足げに頷いている。鍛錬が必要らしいけれど、せっかくだからコツでも聞いておこう。


「ディールさんはどんな感じで動くんですか?」


「肩から背中のあたりをふぁー……っとしながら、足をふぉ~っとするのだ。これにはさすがの俺ですら数年はかかった。だが子供よ、見込みはあるぞ! 今後も弛まぬ努力を続けるがいい」


 背中あたりをふぁー……、足をふぉ~か。こう……、いや、こうかな? ふぉ~よりもふょっふゅ~の方が俺に合ってる気がする。


 すると俺の体が浮かんだまま前へと進んだ。なるほど、確かにこれはふぁーでふぉ~で間違いない。しかし俺にはふぁーでふぉっふゅ~のほうが伝わりやすいのだろう。人によって感覚が微妙に変わるところも魔法の面白いところだと思う。


 そうして何度か試運転を続けると、次第に自由に動き回れるようになってきた。それをじっと見つめていたディールは首を軽く振ると肩をすくめた。


「やれやれ……。いきなり子供にレビテーションを習得させてしまうとは、さすがは俺だ。指導者としても天才であったか……」


「そうですね。ディールさん、ありがとうございます。ちなみに僕はふぉっふゅ~のほうが合ってるみたいでした」


「ほう? 子供は子供のわりになかなか魔力の出力が大きいようだな。ふむ、確かにそれならふぉ~よりもふぉっふゅ~だろうな」


「やっぱりそうなりますよね!」


「うむ」


 俺の言葉にディールが大きく頷く。そのように俺とディールが魔法談義を交わしていると、ニコラからちょっと引いたような念話が届いた。


『うわっ、お兄ちゃんが緑の人とどこかの終身名誉監督みたいな言葉で通じ合ってる……』


『え? ニコラ、お前はコレが分からないの?』


『さっぱり分かりませんよ。お兄ちゃんの場合はイメージとアホみたいな魔力量でなんとかなるんでしょうけど、私は感覚派じゃなくて理論派ですから。カンピューターじゃなくてID野球なんです』


 ニコラは日々自分が楽になるような魔法を創作したりしているが、あれらにはそれなりの理論のようなものがあるらしい。道理で俺には真似出来ないはずだ。俺は未だにイメージに頼り切ってるもんなあ……。


 これまで色々とゴリ押しでやってきたような気がするので、そろそろ本格的にニコラに教えを請うた方がいいのかもしれない。そう反省しているとニコニコ顔のセリーヌが俺の傍まで歩いてきた。


「マルクならやってくれると私は信じてたわよ~。それじゃマルク、私を向こうの岸まで運んでもらえるかしらん?」


 セリーヌは微笑みながらその場にかがみ込んだ。どうやらこのままセリーヌを持って運べと言うことみたいだけれど……。


「え? 浮いて動くのは出来そうだけど、僕の筋力が強化されてるわけじゃないからあまり重いものは……大丈夫です、イケマス」


 突然表情を消したセリーヌの迫力に俺はすぐさま首を縦に振ると、セリーヌはそのまま無言で俺の首をしっかりと抱え込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作『ご近所JK伊勢崎さんは異世界帰りの大聖女
~そして俺は彼女専用の魔力供給おじさんとして、突如目覚めた時空魔法で地球と異世界を駆け巡る~』

タイトルクリックで飛べます! ぜひ読んでくださいませ~!

書籍発売中!「異世界をフリマスキルで生き延びます。~いいね☆を集めてお手軽スキルゲット~」もよろしくお願いします!

↓クリックで特集ページに飛びます。
i000000

「異世界で妹天使となにかする。」一巻二巻発売中!
Kindle Unlimitedでも読めますよ~。ぜひご覧になってください!
コミカライズ一巻発売中! ただいま「ニコニコ静画」にて連載中です!


↓クリックで二巻書報に飛びます。
i000000

i000000
↑クリックで一巻書報に飛びます。

Twitterはじめました。お気軽にフォローしてくださいませ。
https://twitter.com/fukami040

ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
[一言] こ、これが、ぐるぐる族の会話か。 大阪だと割と通じそう
[良い点] 珍獣が増えてしまいましたね(^◇^;) [一言] マルク、魔法はカッパールに師事した方が良さそうw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ