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【書籍化】異世界で妹天使となにかする。  作者: 深見おしお@『伊勢崎さん』コミックス1巻9/27発売!


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199 夜明け前より瑠璃色な

 家の外に出ると、まずは扉を土魔法で塗り固めた。セキュリティとしてはこれで十分だろう。むしろここまでする必要はないと思わなくも無いけれど、ニコラの私物は家に置きっぱなしだし、かなり目立つ建物だからな。誰もここに来ないとは限らない。


 その後は畑の水撒きだけ待ってもらい、三人でエステルの家へと向かった。俺の土地を囲う外壁を作り直し、けもの道に足を踏み入れたところでニコラから念話が届く。


『お兄ちゃん』


『うん? 何かな』


『私、ずっと自分はSだと思っていたんですけど、さっきエステルに着替えを見られ続けているうちに、自分の中のMの素質を見い出してしまったようなんです。これってどうしたらいいですかね?』


『……永遠に封印したらいいと思うよ』


『ええっ!? それって勿体なくないですか? ここはやはり両方育てるべきですかね? そうすればSりながらMの愉悦を味わうことが出来るのでは? ……いや、待てよ? それを一挙両得と見るべきか、雑味が入ると見るべきか……。ぐぬぬ、これは大問題ですよ』


 俺は真剣に検討に入ったニコラを放置して空を見上げた。まだ太陽も昇っていない瑠璃色の空の下、光球で足元を照らしながらエステルに続いて歩いて行く。



 エステルの話によれば、エステル宅は広場を挟んで反対側にあるらしい。村の中心を広場だと仮定すると、広場より西にあるのが俺の家とセリーヌの家、東にあるのがエステルの家。そういう位置関係のようだ。


「へえー、随分遠いんだね。エステルに悪いし、明日からは僕がニコラを家まで連れて行くね」


 するとエステルが驚いたように声を上げた。


「えっ!? 友達なんだしそんなことないよ! それに朝から歩くのってとても気持ちいいし、ボクは毎日でもマルクに会いたいんだ。だからこれからも続けたいんだけど、マルクの迷惑になっちゃうかな……?」


 エステルが俺を上目遣いしながら見つめる。エステルの方が身長が高いのにもかかわらず、この時はまるで俺よりも小さく見えた。


 ……正直なところエステルの負担になることはなるべく避けてあげたいところだけれど、これって断る方がエステルに悪いよなあ。それくらい俺にだって分かる。


「……そっか。エステルがいいならいいよ。これからもよろしくね」


「うん!」


 エステルが俺に昼の太陽のように眩しい笑顔を向けると、ギュッと俺の手を握った。そしてそのまま手を繋いで歩いていると、またしてもニコラから念話が届く。


『ヒューヒュー、お熱いですねえ。正直めちゃくちゃ羨ましいです。……どおれ、それでは私もいっちょ噛みますかね』


 俺に念話を送ったニコラは顔をニヤつかせると、ススス……とエステルの背後に回り込む。そして――


「エステルちゃーん! ニコラとも友達になろー?」


 そう言い放つや否や、ニコラはエステルの腰にしがみつこうとした――が、エステルは背後からの抱きつきを軽やかに横に避けると、ニコラの頭をポンポンと撫でながら申し訳なさそうな顔を見せる。


「ごめんねニコラ。友達は今のところ二人で精一杯なんだ。ボクに余裕が出来たら次の機会によろしくね?」


「……はぁい」


 エステルの顔を見て、毒気の抜かれたニコラは大人しく引き下がると俺の隣に戻った。


『しゅーん。まさか真っ向から断られるとは……。思った以上にガードが硬いですね。しかしこれも放置プレイの一種だと思えば? いやいやMの素質を育てるのはまだ検討中の身……。うーん、とりあえずぼっちは寂しいので、お兄ちゃんが私の手を握っててください』


『はいはい』


 そうして俺を真ん中に三人で手を繋ぎ、雑談をしながら歩いていく。ちなみにお友達は断ったが、エステルはニコラに対して冷たく接しているわけではなく、言うなれば昨日までの俺との間柄の様に、年上のお姉さんらしいやさしい微笑を浮かべつつ、楽しげに会話を交わしている。


 ある意味器用だとも言えるが、やっぱり不器用なんだろう。下心を持って近づく男子もいたみたいだし、本人の気づかぬ間に人間関係に壁を作ってしまったんだろうな。


 ……とはいえニコラの場合は実際に下心もあるだろうし、その辺を勘の鋭いエステルが感じ取っている可能性もあるんだけどね!

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