表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】異世界で妹天使となにかする。  作者: 深見おしお@『伊勢崎さん』コミックス1巻9/27発売!


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

181/387

181 親子丼

 適当に森の中を散策しながらホームステイ計画に必要な物を考えた。……やっぱり一番必要なのは畑だな。


 今日もポーション風呂にしてみたが、ポーションの在庫はまだまだあるとしても供給が無いまま使い続けるわけにはいかない。


 それに、きっとお願いすればセリーヌ宅で住まわせてもらえると甘っちょろいことを考えてはいるけれど、これは俺が勝手にセリーヌの為にやることだ。甘えずに自分で暮らせるようしておくべきだろう。食い扶持を稼ぐためにも、薬草の他に魔法トマトと魔法キャベツが作れる畑は必須と言える。そして畑を作るためには――


「兎にも角にも整地だなー」


 目の前に広がる雑木林を眺めながら、俺は独り言を呟いた。



 ――しばらく作業に没頭していると、ニコラから興奮冷めやらぬ口調で念話が届いた。


『お兄ちゃん、そろそろ入浴タイムが終わりそうですよ。それではですね、ついにお風呂に誘われなくなった哀れなお兄ちゃんに少しだけレポートをしてあげましょう。まずはセリーヌですが、いつもはガードが固い彼女がですね、今回は魔力供給の疲れが残っていたのか、湯船でぐったりとして無防備な姿を私に晒し続けてましてね。その見事な裸体に私もついつい両手を合わせて拝んでしまいましたよ。そしてエクレインママはそんな実の娘の裸体を見て、「うわっ……私の体、緩みすぎ……?」と危機感を覚えたようです。なんとですね、私が無邪気にぽよぽよ部分にタッチすると、気にしない素振りをしながらも恥ずかしがるようになったんですよ! その様子がまた初々しくてねえフヒヒヒヒ。これが親子の化学反応ってやつなんですかね? つまり何が言いたいかというと、ハーフエルフ親子丼最高!』


『お、おう……。それじゃ今から引き返すよ』


 俺はやべー奴との念話を打ち切り、整地を終えた辺り一帯を見渡す。今はセリーヌに勘ぐられると困るので整地だけだ。もし見つかったら整地の練習だとか原木が欲しかったということにしておこう。


 ちなみに今回引き抜きまくった原木は、アイテムボックスによるとナーブ原木という名前らしい。結構な量の原木を収納したがアイテムボックスにはまだ余裕がありそうなので、このまま収納しておくことにした。たしか商業ギルドで原木は売れたはずだしね。……八歳じゃ会員登録すらできないけど。


 それから偽岩風呂に戻り、平地の端っこで土魔法の椅子に座って待っていると、エクレインが俺に手を振りながら上機嫌で近づいてきた。残りの二人もそれに続く。


「マルクちゃ~ん。お風呂っていいわねえ。私病みつきになっちゃいそうだわあ。水魔法で体を洗うのは面倒くさいだけなんだけど、これなら毎日でも入りたいわねえ」


「母さん、今日のお風呂は特別製でポーションまで入れてるから、滅多に入れる代物じゃないわよ~」


 すっかり疲れの取れた様子のセリーヌが口を開く。入浴中に魔法で洗濯乾燥をしたのだろう、汗で濡れていた黒いドレスもすっかり元通りだ。そしてその腰に巻き付いているニコラは気持ちよさそうにふにゃりと顔を緩めていた。どうやら風呂で燃え尽きたらしい。


「あら、そうなの? でもお湯に浸かるだけでも十分気持ちいいと思うのよねえ」


「それは確かにその通りね~。それなら浴槽は作ってもらってるんだし、トーリ爺さんにお湯の出る魔道具と水を掻き出す魔道具でも作ってもらえば毎日だって入れるんじゃないかしらん?」


「あら、それはいい案だけどかなりお高くなりそうね。ねぇセリーヌ、母さんのために手持ちのお金で交換してきてくれない?」


「酒浸りの母さんにそこまでする気は毛頭無いわよ~。トーリ爺さんもグプル酒を飲むんだし、グプル酒の酒樽を積み上げて持って行けばいいんじゃない?」


「うーん、そうなんだけどお。魔道具と交換するのにグプル酒が何樽必要になるのかしらと考えるだけで正直面倒くさくなってくるわあ。なるべく仕事をせずにお酒を飲みながらギリギリの生活をしていくのも、それはそれで楽しいのよねえ」


「もう~。母さん老け込むにはまだ早いわよ~。もっとちゃきちゃき働きなさいよ」


 相変わらず駄目な姉とそれを叱る妹にしか見えないが、二人が親子だというのだからハーフエルフは不思議だ。そんな二人の会話を聞いて、闇魔法を教えてもらおうと考えていたのを思い出した。


「エクレインさん。良かったら家に帰ってから闇魔法を少し教えて欲しいな。闇魔法って使ったことがないんだ」


「あら~、いいわよ。でも闇魔法って適性がないと全く使えないのよね。だから使える人が少ないんだけど、マルクちゃんに扱えるのかしら?」


「母さん、さっきの作業を見てたでしょ? マルクは整地で土風、お湯を作るのに火水、それにポーションで光魔法まで使ってるのよ。すんなり闇魔法が使えてもおかしくないわ~」


「言われてみれば確かにそうだわ。こんなに小さいのに四元の加護持ちのディールよりも使える属性が多いのねえ」


 なんだろうか、耳慣れない単語が出てきたぞ。


「その四元の加護って何なの?」


「火水風土の四属性に加護が与えられるギフトよ。そのお陰であいつは高水準で火水風土の属性魔法を使えるの。昔は散々自慢されたのよね~」


「うふふ、セリーヌは火魔法は得意だったけど、他はイマイチだったもんね。しかも村が森に囲まれてるから気軽に練習だって出来なくて、毎日川下の川幅が広い所まで練習しに行って、夜遅くまで頑張ってたのよねえ」


 ほほう。セリーヌにもそんな時代があったのか。たしかに練習場所探しに苦労したなんて話を聞いたことがあった。


「ちょっと~! 止めてよ母さん、昔の話よ。ほら、マルクも闇魔法を教わるのならグプルの実をいくつか取ってから戻ってくるといいわ。それじゃあ私たちは先に帰ってるからね~!」


 少し赤く頬を染めたセリーヌは、うふふと笑い続けるエクレインの背中を押しながらエクレイン、セリーヌ、ニコラと三両連結で森の中へと入って行った。仲が良さそうで何よりだね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作『ご近所JK伊勢崎さんは異世界帰りの大聖女
~そして俺は彼女専用の魔力供給おじさんとして、突如目覚めた時空魔法で地球と異世界を駆け巡る~』

タイトルクリックで飛べます! ぜひ読んでくださいませ~!

書籍発売中!「異世界をフリマスキルで生き延びます。~いいね☆を集めてお手軽スキルゲット~」もよろしくお願いします!

↓クリックで特集ページに飛びます。
i000000

「異世界で妹天使となにかする。」一巻二巻発売中!
Kindle Unlimitedでも読めますよ~。ぜひご覧になってください!
コミカライズ一巻発売中! ただいま「ニコニコ静画」にて連載中です!


↓クリックで二巻書報に飛びます。
i000000

i000000
↑クリックで一巻書報に飛びます。

Twitterはじめました。お気軽にフォローしてくださいませ。
https://twitter.com/fukami040

ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
[一言] あぁ、命中精度が必須の環境ってそういうことだったんですね!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ