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17 迷子フラグ

 今日も空き地で魔法の練習だ。


 そろそろ公園にありがちな屋根付きのテーブルとベンチでも作ってみようと思う。しかし屋根を土で作って、もしも崩れてきたら危ないだろうし、土魔法で骨組みだけをしっかりと作って、上に板切れでも乗せて固定したほうが良いような気がする。児童公園化していることに関してはもう自重しないことにした。


 そんなことを考えていると、デリカが赤毛のポニーテールをフリフリしつつ、プリプリ怒りながらやってきた。


「あーーーったまきた! 昨日教会学校で、またラングに自慢されたわ! シスターと一緒に薬草を取りに行ったら、遠くでゴブリンを見かけたんだって!」


 おおう、聞いてはいたけど、やっぱりゴブリンはいるんだなあ。まぁラングも冒険に憧れるようなお年頃だし、自慢しちゃうのは仕方ない。とはいえ、これはマズい傾向だよね。


「親分、だからと言って、自分もこっそり町の外に行くとか言い出さないでよ?」


 とりあえず先制攻撃だ。厄介事の種は早めに取り除くに限る。


「そんなの言うわけないでしょ! 正義の『月夜のウルフ団』は規律をしっかり守るの!」


 やっぱりデリカはいい子だった。とりあえずの懸念は回避したようだ。


「それなら十歳になるまで我慢しとこうよ。別に外に出たからって偉くもなんともないよ?」


「親分としては子分に先を越されているのが駄目なの! なにかラングをギャフンと言わせるアイデアはない?」


 そんなものはない。ニコラの方を見ると、ニコラも首を横に振っている。でもこのまま放っておいて、やっぱり一人で外に行って、ご近所総出で大捜索なんてテンプレは勘弁して欲しいところなんだよなあ。お説教で済めばいいけど、大怪我でもされたらシャレにならない。


「家族の大人の誰かについていって貰ったら? 大人が同伴したら外に出られるんでしょ?」


「お父さんもお母さんも仕事で忙しいもの。子供のわがままに付き合わせたりしたら駄目よ!」


 デリカの両親は工務店を営んでいる。先日はデリカの家に招待されて、おやつをごちそうになった。っていうか、子供のわがままなのは自覚してるんだな。


「それじゃあギルおじさんとかよくヒマヒマ言ってるし、駄目もとで付き添いをお願いしてみたらどう?」


「それは名案ね! お願いしてみる!」


デリカは拳をグッと固めて頷く。後はもうこれくらいしか穏便に外に出る手段はない。ギルに全てをぶん投げよう。



 ――――――



「あー、やめとけやめとけ、外になんか出ても何もいいことないぞ。それよりも、町の中にいるだけで不自由なく暮らせることを両親に感謝するんだな」


 空き地にやってきたギルに聞いてみたところ、あっさりと断られた。ぐうの音も出ない正論である。


「それよりもデリカの嬢ちゃん、親分としての格を見せ付けたいなら、もっと手っ取り早いのがあるだろう?」


「えっ本当!? なになに!?」


 ギルが自分の上腕をペシペシと叩きながら答えた。


「簡単よ、腕っぷしを上げればいいんだよ。ラングよりも強いってところを見せつければ、嬢ちゃんは子分より強えんだ。ゴブリンを見ようがオークを倒そうが、どうでもいいだろ?」


 おお……、パワー イズ ジャスティス。たしかにその通りだ。前世は平和な世界で暮らしていたせいか、全く気づかなかったわ。そういえばウルフ団って巡回と言う名の散歩はしてるけど、子供にありがちな剣の特訓とかそういうのを全くしてないな。実に平和的な組織である。


「たしかにその通りだわ! でもどんな訓練をすれば強くなれるの?」


「棒っきれでもあれば、剣術の基本くらいならワシでも教えられるぞ。こう見えて若い頃は護衛も付けずに行商をしていたこともあるからな」


 ギルがニヤリと笑った。



 ――――――



 こうして「月夜のウルフ団」はギルを剣術顧問として仰ぎ、簡単な剣の手ほどきを受けることとなった。


 結局のところラングも剣の手ほどきに参加することになるので、デリカもラングもさほど腕前に差が開くことも無く、似たようなレベルで収まっていた。そのためデリカがラングを一方的にボコボコにして、親分としての格を見せつけるようなパワハラ事案は起こらなかった。


 しかし実際に腕前を競うことで、外に出ただのどうだのと言うわだかまりは綺麗さっぱり消え去ったみたいだ。みんないい子なんだよね。


 わざわざ聞いたりはしないけど、もしかしたらギルはそこまで予想して剣を教えたのかもしれない。


 ちなみに俺も一応は剣術を習ってみたけど、魔法ほどはうまく扱える気がしなかった。まぁ魔法の方で身を守れればそれでいいだろうと思う。ちなみにニコラは棒っきれに触りもしなかったよ。

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