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【書籍化】異世界で妹天使となにかする。  作者: 深見おしお@『伊勢崎さん』コミックス1巻9/27発売!


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158 ニコラのギフト

 更に五分ほど歩いただろうか。セリーヌを挟んで向こう側を歩いていたニコラが歩みを止め、直後にセリーヌが「いるわね」と短く言い放つ。


 セリーヌが気付いたのは冒険者としての勘だろうか、それとも俺より熟練された空間感知が為せる技なのか。通路の陰から一匹のストーンリザードがヌッと顔を出した。喉の下を大きく膨らませているのは威嚇行動なんだろう。今すぐにでも飛びかかって来そうだ。


「シャー!」


 金属が擦れるような威嚇音を鳴らすストーンリザードを前に、ウェイケルが剣を構え腰を落とし臨戦態勢を取る。


「マルク、出てきたのは基本的にあんたが全部やっつけなさい。こういう場所でファイアアローを使うと、熱がこもって大変なのよ」


 どこかに天然か人工かの通気口があるとは思うけど、たしかに密閉に近い空間でファイアアローを連発すると大変なことになる気がする。


 特に異論がないので頷くと、すぐさまストーンバレットを撃ち込む。先手必勝、ストーンリザードの大きく膨らませた喉は格好の的だ。


 ドスッ!


 ストーンバレットが白い喉を一撃で貫くと、ストーンリザードは腹を見せるようにひっくり返りピクリとも動かなくなった。


 とりあえず動きが止まっていれば、落ち着いて攻撃が出来るのでありがたい。これから出てくるストーンリザードも、律儀に威嚇行動してから攻撃してきてくれないかな。


 息の根が止まったストーンリザードを見て、ウェイケルが軽く口笛を吹く。


「やっぱすごいっすね。こっちの坊っちゃんは。……そういえば、そっちのお嬢ちゃんは何か出来るんすか?」


「かわいいだけで十分だけど、ニコラちゃんだってもちろんすごいのよ~。……今だって私より先にストーンリザードに気付いてたんだから。ねー?」


「うん!」


 ニコラは甘えるように腰にしがみつく。公然とセクハラが出来るチャンスは見逃さない。


「ニコラちゃんが空間感知が出来ることは聞いてはいたけど、こうやって見るのは初めてだったわね」


 セリーヌがニコラの頭を撫でながら呟く。ニコラが持つのは感知系のギフトだ。言われてみるとセリーヌの前で披露したことはなかったのか。まぁセリーヌがいればほぼ必要ないギフトだしね。


 そういえばニコラの空間感知はここでも狂わされないのだろうか。もしも正常に機能するなら、魔石坑道でニコラが予想以上に役立ってくれそうだけど。


 などと考えていると、ウェイケルが興味深げにニコラを見ながら前に回り込み、しゃがみ込んで目線を合わせる。


「どうだいお嬢ちゃん。大きくなったら青豹団に入らないか? お嬢ちゃんは将来絶対に美人になるから、団の紅一点としても申し分ない。それに俺のことをウェーイって呼んでもいいんだぜ?」


 その呼び名にどれほどの価値があるのか。ニコラはスンッと表情を消して、


「結構です!」


「そ、そうか……」


 俺と同じくきっぱり断っていた。


『いつもみたいに愛想を振りまかないの?』


『この手のタイプはやさしくすると調子に乗るので、甘やかさないに限ります』


 二回連続でフラれたからか、ウェイケルは俺に断られた時より肩を落としているように見える。なんだかかわいそうになってきた。タイプが合わないだけで、悪い奴じゃなさそうなんだよなあ。



 ――――――



 しばらく進むと道が左右に分かれた。


「ストーンリザードの巣は左側にあるっす。でもラックたちがまだ巣のある方にいるのか、迷って右側に行ったのかは分からないっす」


 するとニコラがウェイケルの隣まで歩き、「こっち」と左を指差した。どうやらニコラの感知ギフトは魔石坑道でも難なく効果を発揮するようだ。


「あら、ニコラちゃん分かるのね?」


「うん!」


「えらいわー。それじゃあ巣のある方角に行ってみましょ」


「ういっす」


 わりとあっさりとニコラを信じたセリーヌに従い、ウェイケルは左側に進路を取った。


 それにしてもここまでずいぶんと魔石坑道を歩いてきたが、この辺りは入り口付近の通路に比べ、壁や地面がスコップで雑にくり抜いたかのようにボコボコになっている。不思議に思っているとウェイケルが地面を指差した。


「坊っちゃんお嬢ちゃん。ストーンリザードが巣を広げたんで、この辺は既にヤツらの餌場だ。あちこちの岩を食い散らかして穴だらけになってるから、足を取られないように気を付けるんだぜ」


 そういえば石を食べるトカゲだった。穴が空いてるのはストーンリザードが壁や地面の岩を食べた痕跡なのか。


「うん、分かったよ」


 俺は相槌を打ちながら、近くに横たわっていたストーンリザードの死骸をアイテムボックスに入れる。


 ――うん?


 ストーンリザードの死骸 魔石入り


 どういうわけかアイテムボックスの中で魔石入りと表記されている。アイテムボックスの不思議鑑定機能は今更ではあるんだけど、これってどういうことだろう。


 ヌシのような大物は体内に魔石があるらしいけれど、これはそんな大物には見えない。ごく普通のストーンリザードだ。


 ……あっ、もしかして、食べた石の中に魔石が入ってたのかな?


 そう考えると納得がいった。おそらく予想は当たっているだろう。これは得したかもしれない。


 持ち帰った後に捌いてもらって魔石を取り出してもらおうかな。でもたしか魔石坑道で採れるのはクズ魔石が殆どだって言っていたし、ハズレならむしろ手間賃がかかるだけになるかもしれないのか。


 アイテムボックスから魔石だけ取り出せたら楽なんだけどなあ。


 ……ダメ元で一応やってみるか。


 すると――


 ストーンリザードの死骸 魔石入り


 このようになっていたラベリングが、


 ストーンリザードの死骸


 このように変わり、俺の手の中には魔石が握られていた。大人の親指の爪くらいの大きさの赤い石だ。うわあ、出来ちゃったよ。


 新しい発見になんだか嬉しくなってくるが、さすがに今はそういう状況でもない。今はこっそり喜んで、後でセリーヌに報告しよう。俺は再び魔石をアイテムボックスへと戻した。

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