表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】異世界で妹天使となにかする。  作者: 深見おしお@『伊勢崎さん』コミックス1巻9/27発売!


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

149/387

149 おやくそく

 ニコラの思惑が気になるところだが、だからと言って作るのを取り止めるほどのことではない……だろう、多分。俺は気を取り直し、露天風呂のすぐ隣に同じ物をもう一つ作った。


 二つ目ということで、さっき作ったのよりも効率よく作れたと思う。このように練習が身になっているのを実感出来るのはすごく楽しいね。


 そして各風呂に脱衣スペースを確保した上で全体を石壁で囲い、更に風呂と風呂の間には高くて頑丈な仕切りを作って隣の風呂は見えないようにした。これで偽岩風呂男女セットの完成である。


 どうせなら入り口にのれんを掛けて「男湯」「女湯」なんてのもやってみたいところだが、都合のいい布も持ってないし、なにより漢字にツッコミが入るのは間違いないので自重した。



「それじゃあ僕はこっちに入るからね。また後で」


 そういって俺は男湯(仮)の入り口を通ろうとすると、


「ニコラはお兄ちゃんと一緒に入るね!」


 俺の後にニコラが続いた。え? なんで?


「あら、ニコラちゃん。今日はマルクと一緒に入りたかったの? そういうところもかわいいわね~。それじゃデリカちゃん、私たちも中で仲良く背中の流し合いっこでもしましょうか」


「えあっ!? お、お手柔らかに……」


 デリカが顔を赤らめながらセリーヌに続いて女湯(仮)に入って行った。


『……どういうつもり?』


「ふんふふふ~ん」


 ニコラは俺を無視して鼻歌を歌いながら男湯の脱衣所でいそいそを服を脱ぐと、さっさと風呂場の方へと向かってしまった。俺も気にしていても仕方ないと切り替え、服を脱いでそれに続く。


 とりあえずはかけ湯だ。俺は浴槽の近くでかけ湯を始めるが、近くにニコラの姿は見当たらない。


 しかしそんなに広くもないので、すぐにニコラを発見した。何故か俺が土魔法で作った、男湯と女湯を隔てる仕切りの近くをウロウロとしている。


 そして仕切りの端っこに狙いを定めると、何やら魔法を発動し始めた。


『お兄ちゃん、仕切りを固く作りすぎですよ。やっかいな……。ほんと何も分かってませんね……。……っと、開いた開いた』


 念話でニコラのボヤきが伝わる。どうやら仕切りに小さい穴を開けたようだ。


 ニコラは穴に息を吹きかけ削れた砂を吹き飛ばすと、穴にかぶりつくように顔を当て、隣の様子を覗き始めた。


『おほー! これはいい、これはいいですよ! セリーヌのちち! しり! ふともも! デリカのちち! しり! ふとももーっ!』


『……いや、なにやってんのお前? いつも一緒に風呂に入ってガン見してるくせに』


 呆れつつも念話でそう伝えると、肩を揺らしながら大興奮していたニコラがピタリと動きを止める。そして振り返ることなく覗き穴を見続けたまま、大仰にため息をついて答えた。


『はぁ~、分かってませんねえ。これが露天風呂のお約束なんですよ、お・や・く・そ・く。それにですね、私は普段お兄ちゃんの言う通りガン見してますからね。セリーヌもあれでなかなか慎み深いところがありますから、ちゃんと見られてもいいような姿をこちらに向けているんですよ。それが今は無防備……、ああっ、セリーヌのお胸が! そ、そんな形にぃっ!?』


 それからしばらくの間、ニコラは鼻息荒く覗き穴に目を押し付けていたが、見たいシーンを一通り見終わったらしく、くるりとこちらを向いた。ニコラの右目にはまるで赤いマジックペンで描かれたような丸い跡がついている。


『覗き見だからこそ得られる背徳感も最高のスパイスですし、あえて難題に挑むことで得られる達成感、それにいつもと違うシチュエーションによって新たな一面を引き出すこともあります。とにかく覗きはいろんな可能性を秘めているわけです。すごいでしょう?』


 大層な論文を発表したかのようにドヤ顔でそう語ると、ニコラはつるぺたの胸を大きく張った。自分の変態活動に忙しいのか、今は『BDでは消えます(ミステリアスライト)』を発動させていない。どうでもいいけど。


『まぁ、私はもちろん濃ゆい方が大好物ですけどね? それでも間……間にこういったデザートをいただくことは胸焼けを防いでくれることにもなるのですよ。誰が最初に発見したかは知りませんけど、スゲエ知恵ですね』


『お前それ串カツ……いや、なんでもない』


『もちろん、私は今回お兄ちゃんがいい機会を与えてくれたことに感謝しています。お兄ちゃんにも覗く権利がありますよ。さぁ、どうぞ』


 ニコラは丁寧にお辞儀をすると、その手を覗き穴の方へと向けた。


『いえ、結構です……』


『やれやれ、そう言うとは思ってましたが、本当に仕方のないヘタレですね』


 俺は今ドン引きをしている。そしてそれに気付かないニコラは再び仕切りに体を密着させて鼻息荒く覗きを始めた。少し低い場所に穴を開けているようで、壁に尻丸出しのガニ股で張り付いている様子はまるでヤモリのようだ。


 こんなんでも教会学校じゃお嫁さんにしたい女の子ランキングナンバーワンだし、セカード村の宴会ではニコラにヌシの切り身を貢ぐため、村の男の子たちがニコラの前に列をなしたんだから、世の中は不思議だね。



 ――それにしても、今は魔物を感知するために空間感知をしているはずだから、セリーヌにはすぐに気付かれそうなもんだけどな。……って、これはどういうことだろう?


 俺が遠くばかりではなく近くに対して空間感知で探ってみたところ、驚くべきことに、仕切りに張り付いているニコラからは存在をほとんど感じ取ることが出来なかった。


 実際に目に見えてるから何となく感じ取れるだけで、そこにいるのを知らなければスルーする程度の薄い気配しかニコラから感じ取れないのだ。


 そして更に驚くことに、俺のすぐ隣のなにも無いはずの空間にはニコラっぽい存在が空間感知で感じ取れている。


 ……ええぇ、なにこれ? 気配の遮断した上に更にダミーまで作れているの? 普段は能力を使いたがらないくせに、こういう時には無駄に才能を発揮するな……。


「マルクー、ニコラちゃーん。このお風呂やっぱりすごく素敵ね~。とてもゆったりとできるわ~。そっちはどう~?」


 仕切りの向こう側からセリーヌの声が聞こえた。するとニコラは俺の方、いや正確にはダミーらしき存在に向かって口をパクパクと動かす。すると次の瞬間、


「うん、こっちも楽しいよー!」


「ええっ!?」


 なっ!? 俺の隣のダミーからニコラの声がした。なんなのこいつ……。なんでこんなこと出来るの?


「うん? マルクどうかしたの~?」


 ニコラがまた口パクをする。


「洗いっこしててお兄ちゃんの脇に手を滑らせちゃったの!」


 するとまたダミーから声がした。


 ……こんな魔法見たことないし、俺に出来るとも思えない。ニコラの変な魔法と言えば『BDでは消えます(ミステリアスライト)』だが、これはあれよりも更に難易度が高いことくらいは俺にも分かる。


 何がニコラをそこまで駆り立てるのか。そしてこいつの魔法の才能が正しく使われる日は来るのか。


 俺は無様に壁に張り付いて、こっちに尻を向けているニコラを見ながら呆れればいいのか、驚けばいいのか分からず。


 ……とりあえず未だに風呂に入っていないことを思い出し、かけ湯を再開した。



 ああ、露天風呂懐かしいなあ。前世の社員旅行以来だなあ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作『ご近所JK伊勢崎さんは異世界帰りの大聖女
~そして俺は彼女専用の魔力供給おじさんとして、突如目覚めた時空魔法で地球と異世界を駆け巡る~』

タイトルクリックで飛べます! ぜひ読んでくださいませ~!

書籍発売中!「異世界をフリマスキルで生き延びます。~いいね☆を集めてお手軽スキルゲット~」もよろしくお願いします!

↓クリックで特集ページに飛びます。
i000000

「異世界で妹天使となにかする。」一巻二巻発売中!
Kindle Unlimitedでも読めますよ~。ぜひご覧になってください!
コミカライズ一巻発売中! ただいま「ニコニコ静画」にて連載中です!


↓クリックで二巻書報に飛びます。
i000000

i000000
↑クリックで一巻書報に飛びます。

Twitterはじめました。お気軽にフォローしてくださいませ。
https://twitter.com/fukami040

ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
[一言] 使い方に無駄しかないが普通に有用な魔法じゃないか!
[良い点] まさかのGS〇神ネタ(笑) 二コラは横〇くんが憑依してんのかw
[良い点] ニコラチートすぎるw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ