表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】異世界で妹天使となにかする。  作者: 深見おしお@『伊勢崎さん』コミックス1巻9/27発売!


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

135/387

135 折り返し

 ……まぁこれで意趣返しにはなっただろう。俺の勝手な自己満足だが、俺の感じた悪寒と今まで被害にあった人の痛みを少しは知ればいいと思う。


 脅威が去ったことで一息つき、セリーヌたちの方に振り返った。俺の方を見つめる三人は、全員なんとも言えない表情をしていた。


「えっと、マルク。……すごかったわね」


『さすがにアレはないわー。マジでないわー』


「お見事なもんだけど、なかなかエグいことするわね~」


「油断してくれてたお陰で少しは余裕があったからね。……もしセリーヌならどうしてたの?」


「私が一人の時に遭遇したなら、チンケな山賊みたいだし報奨金も少なそうだから、まぁ、その場でね」


 と、手の平に炎を生み出した。この領内では略奪行為は縛り首だ。遅かれ早かれ死ぬのなら、それは慈悲なのかもしれない。


「ああ、そうそう。照明魔法で目眩ましはいい案だったけど、出来れば事前に教えて欲しかったわ~。私とニコラちゃんは勘付いて顔を背けたけれど、デリカちゃんがね」


「少しの間だけだったし、気にしないでいいのよ!」


 デリカがわたわたと手を振る。どうやら一人だけモロに食らったらしく、少し恥ずかしいようだ。


「ううん、ごめんねデリカ。もし集団戦だったりしたら、味方も混乱したかもしれない。これからは気を付けるよ」


「もうっ、いいって言ってるのに!」


 デリカがふくれっ面をする。久々にプリプリしてるデリカを見たね。懐かしい顔を見て、戦闘でこわばった体から力が抜けていくのを感じた。


「ヌシの時の風魔法を纏わせた円盤とか槍もそうだったけど、教えてもいないのに色々と考えながら戦えているわよねえ。えらいえらい」


 セリーヌが俺の頭を撫でる。目眩ましはともかく、風を纏わせるのは老師ぶったニコラの助言のお陰もあったんだけど……。そう思ってニコラの顔を見ると、案の定満面のドヤ顔をひけらかしていた。



 ――――――



「……よし、これでいいかな」


 俺は土魔法で「山賊です。近づくな危険」と書かれた看板を立てる。これでヘタに近づく人はいないだろう。


「おまたせ。それじゃあ戻ろう」


 俺たちはドームハウスの敷地内に引き返すと出発の準備を始めた。仮設トイレで用を足した後、仮設トイレを砂に戻す。穴を開けていた部分には、昨日収納した砂を使って埋めた。そしてドームハウスと柵を土に分解する。


 これで片付けも完了だ。あっさりとしたもんである。セリーヌが度々言っていることだが、土魔法は野宿に便利だなあと我ながら思った。


「忘れ物は無いかしらん? 無いなら行きましょ~」


 セリーヌの声を合図に全員が馬車に乗り込み、デリカが馬を進める。通りすがりに山賊のドームハウスを見ると、おっさんがこちらを見ることもなくグッタリとしていた。


「あれって、どうやって通報すればいいのかな」


「そうねえ……。鉱山集落に衛兵は詰めていないと思うけど、山賊を捕まえてるって誰かに教えてあげれば、あんたが報酬の権利を放棄する代わりに最寄りの町まで通報に行ってくれる人もいると思うわよ」


「なるほど、それじゃそうしようかな」


 俺は馬車が進むにつれて、次第に小さくなっていくドームハウスの様子を何気なく見続けた。



 ――――――



 いつの間にか僅かに生えていた雑草も姿を消し、視界には荒れた大地が広がっている。寝足りなかったらしいニコラはセリーヌの膝でスピスピと眠っていた。


「鉱山集落でモンスターが湧いたって言ってたね。そういうことってよくあるの?」


 山賊の言葉で気になっていたことをセリーヌに質問する。セリーヌはニコラの頭を撫でながら、


「鉱山を掘り進めていくうちに魔物の巣と開通させてしまうことは、稀にだけどあるわね」


「そういう時ってどうするの?」


「冒険者ギルドに間引きや巣の殲滅を依頼するんだけど……。もしかしたら私たちと入れ違いで、冒険者ギルドにも依頼が入ったかもしれないわね」


「えっ、それだと僕らの依頼の結果を聞くまでもなく、鉱山集落の様子が分かると思うんだけど、その場合依頼はどうなるの?」


「大丈夫よん。私たちは鉱山集落と町を行き来してる行商人さんの様子を伝えるのが依頼だから。このままゆっくり進みましょ」


 セリーヌがニコラのほっぺをプニプニとつつきながら答えた。俺は依頼料は気にしないが、セリーヌがタダ働きになるのは気が引ける。そういうことならひとまずは安心だな。


「集落にはどれくらいで着きそう?」


「そうねえ~。夕方くらいかしら。その日は宿に泊まって、次の日に行商人さんを探し出して話を聞いて、それを町まで持ち帰れば依頼は完了ね」


 この三日間だけでも色々な出来事があった旅だったが、どうやら折り返し時点が見えたようだ。



 その後も淡々と移動を続けた。荒野が続き、近くの山からは魔物らしき鳴き声も聞こえる。この辺は見るからに安全な地域ではなさそうだ。周辺を眺めながらセリーヌが呟く。


「どうやら今がこの辺の魔物の活発になる時間帯みたいね。早朝から活動する山賊ってのもおかしいと思ってたけど、そういった事情で早起きして獲物を探しにいく習慣がついてたんでしょうねえ」


 そう言いながら、近くをうろついていた芋虫のような魔物に向かってファイアアローを放つ。


「もうすぐ到着するし、足を止めずにこのまま行っちゃいましょ」


「分かったわ」


 デリカが了承し、馬車を止めることなく走らせる。そうしてセリーヌに露払いをしてもらいながら、一時間ほど進んだだろうか。


 ついに目的地のサドラ鉱山集落に到着した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作『ご近所JK伊勢崎さんは異世界帰りの大聖女
~そして俺は彼女専用の魔力供給おじさんとして、突如目覚めた時空魔法で地球と異世界を駆け巡る~』

タイトルクリックで飛べます! ぜひ読んでくださいませ~!

書籍発売中!「異世界をフリマスキルで生き延びます。~いいね☆を集めてお手軽スキルゲット~」もよろしくお願いします!

↓クリックで特集ページに飛びます。
i000000

「異世界で妹天使となにかする。」一巻二巻発売中!
Kindle Unlimitedでも読めますよ~。ぜひご覧になってください!
コミカライズ一巻発売中! ただいま「ニコニコ静画」にて連載中です!


↓クリックで二巻書報に飛びます。
i000000

i000000
↑クリックで一巻書報に飛びます。

Twitterはじめました。お気軽にフォローしてくださいませ。
https://twitter.com/fukami040

ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ