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【書籍化】異世界で妹天使となにかする。  作者: 深見おしお@『伊勢崎さん』コミックス1巻9/27発売!


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104 一生のお願い

「えっ、デリカどうして?」


 突然の参加表明に戸惑いながら理由を問いただすと、デリカは眉間に皺を寄せる。


「もうすぐ教会学校の鑑定会があるじゃない。その時に戦闘系のスキルが備わってなかったら、衛兵の試験に受かる見込みもないから家業を継ぐための修行を始めろって母さんに言われたの」


 そういえばそろそろデリカは教会学校卒業だ。教会学校では卒業時に今後の身の振り方の参考になればと、教会学校卒業生は無料でスキルを見てもらえるのだ。


 というか工務店は弟で長男のユーリが継ぐのだと思っていたけど、そういうものでもないみたいだな。まあデリカの母親はもっと安全な仕事についてほしいみたいだし、手を変え品を変えデリカの進路を変更させようと考えているのだろう。


「遠出をするなら魔物にも遭遇するでしょ? そういうのを経験すれば、きっと今より強くなれると思うの」


「うーん、連れていくこと自体は別にいいわよ。ご両親から許可が出たらだけど」


 相変わらずセリーヌは気楽に答えると、デリカがポニーテールを跳ね上げながら喜んだ。


「本当!? 両親は大丈夫。一生のお願いをここで使うわ!」


 拳を握りしめ、一生のお願いの使用を宣言するデリカ。一生のお願いってそこまでの威力があるものなのか。俺の前世では、何度お願いしても何一つ叶えて貰えなかったんだけど。


「でも偵察がメインの依頼だし、もし魔物に襲われても私もマルクも魔法を撃つだけになると思うから、あまりデリカちゃんの身にならないかもよ? 剣術を習ってるのよね?」


「それでも鑑定会までにやれることは全部やっておきたいの!」


 必死なデリカの様子に二人で顔を見合わせる。だが俺としては少々心配だ。


「ねえ、デリカ。魔物はこないだの盗賊と同じくらいに怖いよ?」


 以前盗賊に襲われた時に、俺以上にビビっていたのがデリカだ。


「大丈夫よ。剣術を習いに行って多少は実戦の経験を得たわ!」


 デリカはここで働いた給料で町の道場に剣術を習いに行っている。でも木剣で試合するのはまた別のような気がするけどなあ。俺が頭を掻きながらどうすればいいのか考えていると、


『連れていけばいいじゃないですか。私も付いていきますし、それなら旅の潤いは多いに越したことはありませんよ。特にデリカは最近どんどん大人っぽくなってますしね。その成長をお泊りしながら確かめたいです』


 ニコラが近くのテーブルを拭きながら念話を飛ばしてきた。相変わらず動機は不純だが、デリカを連れて行くことに賛成のようだ。


『それにデリカのためにもなりますよ。魔物を倒してレベルアップすれば夢に近づくでしょうから』


『えっ、レベルアップってなにそれ。ゲームみたいなヤツ?』


『そこまでの物ではないですけど……。お兄ちゃんも魂ってものが存在することは、よく知っていますよね?』


『そりゃあ一度、魂だけになったからな。ぼんやりと覚えてるよ』


『魔物が死んで魂が昇天していく際には、魂の残滓と魔物の魔素が混じり合った混合物がほんの少し発生します。それは魔物を倒した者の魂に吸収されるのですが、そうなると魂がほんの少し強くなるんです。そして魂の強さは肉体にも影響を及ぼします』


『そうなの? 俺はゴブリンとかコボルトを倒しまくっても特に体感はしなかったけど。遠距離攻撃だったから?』


『距離は関係ありません。得られたものが体感出来ないほど微々たるものだったからです。雑魚を倒しまくったくらいで体感出来るほどに強くなれるなら、この辺の雑魚魔物は狩られ尽くされてますよ』


『あー、そう言われればそうだな』


『それにお兄ちゃんの場合は魔法の成長の度合いがアレなので、そちらを基準に考えるから余計に分からないんでしょう。一般人レベルのデリカなら、多少は体感出来るかもしれません』


 アレとか言わないで欲しい。でもそういうことならデリカの夢の後押しをするのも悪くない。


 俺は前世では特に将来の夢も持たず、大学に進学しながらもろくに就職活動をしなかった結果、なんとか滑り込んだのがブラック企業だった。だからだろうか、こういった夢を持つ若者は応援したいね。


「分かった。なるべく危険な目にあわないように僕もデリカを守るよ」


 倒すことでレベルアップが出来るなら、デリカを守りながらやってあげられることも何かあるだろう。


「あらあら、守るとか一丁前なこと言っちゃって~。マルクもしっかり男の子なのね」


 セリーヌが茶々を入れ、デリカがプイッと顔を背ける。耳が赤くなっているような気がするが、そんなことよりもひとつ問題がある。育てている野菜や薬草の維持だ。


「それでセリーヌ、いつ頃行く予定なの?」


「んー、リザ?」


 セリーヌは空になったポテトサラダの皿を、空虚な瞳で見つめ続けていたリザに水を向ける。


「あっ、……えっと、そうですね。なるべく早い方がいいので、明後日には出発して頂きたいです。あと、その、こちらも出来ればお代わりを……」


 リザが俺の方に空の皿をそっと差し出す。俺がアイテムボックスから追加のポテトサラダを取り出すと、リザの顔がパアァァァと輝いた。餌付けをしてるみたいで楽しいね。


 それにしても、明後日出発なら準備期間は明日一日までか。それまでに野菜と薬草を何とかしないといけないらしい。あと旅の支度も必要だろう。


 なんだか結構ハードスケジュールな気がしてきた。家の手伝いが終わり次第準備を始めよう。

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[良い点] リザさん食い意地はりすぎでしょw 残念系美女好き
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