表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/387

10 ギル

 翌日もやってきたおっさんはギルと名乗った。この町で雑貨屋や古本屋など、いくつかの店舗を経営しているらしい。ちなみに宿屋はやっていないとか。


 ホウレンソウは大事なので両親にもしっかり報告した。土地を余らせる程度には資産家のギルは、ご近所ではそこそこ知られているらしく、お世話になってるなら今度ご挨拶に行かなきゃねと母さんが言っていた。


 そして俺は今日も畑作りである。魔法で砂を作ったり土を掘ったりするのはいい訓練になっていると思う。ニコラもアドバイザー兼お菓子受け取り係として一緒にいる。


「なあ、お前は訓練とかしないの?」


 ニコラはキョトンとした顔をして


「えっ、しませんよ? 私の第一目標はお兄ちゃんに寄生することで、もし仮にお兄ちゃんが稼げない穀潰しになるようなら、実家の家事手伝いでパパママに寄生するつもりです」


「五歳児とは思えない夢の無い人生計画だな。母さんには『ニコラはね、お姫さまになりたい!』とか言ってるくせに。そういやウチの宿屋ってやっぱ継がなきゃならないのかねえ。別に絶対に継ぎたくないわけでもないけど、せっかくなので今はまだ色々とやってみたいと思うんだよね」


「まあパパもママもまだまだ若いですし、なんでしたら冒険者にでもなって膝に矢を受けてからでも、家を継ぐには間に合うんじゃないですか?」


「リタイヤ前提かよ。まあ父さんも母さんもまだまだ弟か妹が出来そうなくらいには若いし、今から考えなくてもいいか」


 ちなみに今は五歳にして子供部屋で寝ているんだが、それまでは両親と同じ部屋に寝ていた。そりゃもう向こうは子供だからまだ分からないとばかりに夜はお盛んでね。俺とニコラが気まずいったらありゃしなかった。子供部屋が欲しい~と俺が駄々をこね、ニコラが泣き落とす共同戦線でなんとか子供部屋を勝ち取ったのだった。


 そんな話をしながら魔法の訓練をしていると、ギルがやってきた。


「お、坊主ども頑張ってるな。ほら嬢ちゃん、菓子だぞ~」


「ギルおじちゃん、いつもありがとう!」


 ニコラがいつものスマイルでギルからおやつを貰う。ギルの顔はデレッデレである。これは一見餌付けしているように見えるが、逆にギルが落とされているのである。


「畑もだいぶ出来上がってきたようだな。そろそろ何を植えるか考えるか……。お、そういえば昨日、坊主んところの母親がわざわざウチに挨拶にきたぞ。坊主たちは『旅路のやすらぎ亭』のところの子供だったんだな。ワシは泊まったことはないが、ウチの客からたまに聞くには、メシがうまくて部屋も清潔、なかなか評判の宿屋らしいな」


 ウチってそういう評価だったんだ。立地条件でそこそこ繁盛していると思っていたけど、それだけじゃなかったんだな。こういうのを聞くと父さんの代で終わらせるのは忍びないとは思うけど、とりあえず問題は先送りにしよう。


「よく分からないけどお客さんは結構入ってるよ。それでギルおじさん、何を植えてみる?」


「ん、そうだな……せっかく坊主が作る畑だ。坊主のところの宿でも使えるような野菜がいいな。トマトでも作っておすそ分けしてやろう」


「うげっ、トマトー!?」


 俺はトマトが嫌いだ。あの青臭さ、齧ったときにムニュっとはみ出る中身のグロさ、そのくせリコピンリコピンとテレビの健康番組でしつこくアピールしてくるあの悪魔の野菜が大嫌いだ。


「がはは! ガキはトマト嫌いが多いからな! でも坊主が魔法で耕した畑だとどうかな? おそらく違った味になるぞ!」


「家で食べてるトマトは美味しくなかったよ?」


「そりゃ魔法で耕した畑から取れる野菜は、手間がかかってる分値段が高いからな。普通の宿屋では使ったりはしないもんだ」


「そういうものなの? 本当かなあ」


 正直信じられないけど、なんと言っても魔法パワーだからな。判断は実際食ってからでも遅くはないだろう。


「そうだな、それじゃあ明日は種と道具をウチの店から持ってくるか。とりあえず畑の大きさは今くらいで十分だから、今日は坊主も適当に練習を繰り上げて帰りな」


「そうする。それでトマトって植えてからどれくらいで出来るの?」


「この畑なら一週間前後じゃないか?」


 マジすか。早くも魔法パワーのすごさの片鱗を感じたわ。


 そしてギルは帰って行った。さて俺も練習を切り上げておやつでも食うか。……ってニコラ、ニコラさん? 俺の分のおやつはどこ?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作『ご近所JK伊勢崎さんは異世界帰りの大聖女
~そして俺は彼女専用の魔力供給おじさんとして、突如目覚めた時空魔法で地球と異世界を駆け巡る~』

タイトルクリックで飛べます! ぜひ読んでくださいませ~!

書籍発売中!「異世界をフリマスキルで生き延びます。~いいね☆を集めてお手軽スキルゲット~」もよろしくお願いします!

↓クリックで特集ページに飛びます。
i000000

「異世界で妹天使となにかする。」一巻二巻発売中!
Kindle Unlimitedでも読めますよ~。ぜひご覧になってください!
コミカライズ一巻発売中! ただいま「ニコニコ静画」にて連載中です!


↓クリックで二巻書報に飛びます。
i000000

i000000
↑クリックで一巻書報に飛びます。

Twitterはじめました。お気軽にフォローしてくださいませ。
https://twitter.com/fukami040

ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
[一言] トマトソースやケチャップは美味しいが 非加熱トマト、お前たちはダメだ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ