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1 三秒ルール

2020年8月8日、書籍版第一巻が発売!コミカライズも決定いたしました!

挿絵(By みてみん)

 ――なにやら頭に衝撃が走った気がした。そして目が覚めた。


 周囲はとにかく真っ白。そして目の前には同じ様に真っ白い貫頭衣を着た金髪の少女が、俺の両頬を両手で挟んだまま固まっている。よく分からないけれど、とりあえず声をかけてみるか。


「あの、すいません。ここはどこですか?」


「……はっ! ……やっぱり目覚めてしまいましたか。このまま目を覚まさなければ良かったんですけど。はぁー、どうしよう……」


 体をビクンと揺らした後に不穏な発言をした少女は、ガックリと肩を落としてそう答えた。よく見たら金髪なだけじゃなくて、目の色も青くて外国人さんのようだ。掛け値なしの美少女である。


 というか背中に羽が生えているように見えるけどコスプレってやつ? 外国人さんのコスプレってクオリティ高いのは飛び抜けて高くていいよね。


 そんな余計なことを考えたりもしつつも、目の前の状況を理解していくのと同時に自分の体の変化に気づいた。


 あれ? 俺って手足もなんもなくね? というか丸っこい球になってね?


 頬を触られてるような感触はあるんだが、手足は無く、そしてなぜか自分が球体になっているのは自覚できた。そんな球体の俺を金髪の少女が両手に持って、少女の顔と同じ辺りまで掲げているのが今の状態のようだ。はっきり言って普通じゃない。


「あ、あの、これってどういう状況?」


「あっはい、説明しますね。あなたは死にました」


  アッハイ。……っていやいやおかしいって!


  昨日はたしか仕事が終わってそのまま行きつけの居酒屋に寄って、ずいぶん酔っ払ったけどなんとか自宅に帰って、そのままベッドに潜ったはずだって!


「あー死んだ時のことをよく思い出せない方は確かにいるんですけど、あなたの場合は違いますね。酔っ払ったときに派手に滑って後頭部を床にぶつけたでしょう? 酔っ払って覚えてないかも知れませんけど。アレが原因でお布団の中で死亡したみたいですね。そんなに苦しくはなかったんじゃないでしょうか。ラッキーですねー。まぁその場ですぐに病院に駆け込んでいたら助かっていたかもしれませんが」


 マジかよ。俺死んじゃったの。まだやりたいこともあったのに。というかわざわざ話さなくてもダイレクトに頭の中の思考を読んじゃってますよね。


「そうですね。私、天使ですから」


 ドヤ顔で天使(自称)は答えた。ウソであってくれと思いたいけど、どう考えてもドッキリでもないし夢にしてはリアルすぎる。やっぱり俺死んだんだなあ。そして目の前の少女は天使なんだろうなあ。


「あの、それでこれから俺はどうなるんでしょう。なんか球体になってますし」


「あ、ああ……それなんですけどね、今のあなたは魂だけの状態です。そしてこれから魂洗機で魂を洗い、記憶を無くして輪廻転生の旅に出てもらうはずだったんですけど」


 魂洗機? と疑問に思ったところで天使の目線が横に向く。目線の先には二槽式の洗濯機みたいなモノがあった。え? もしかして俺ってこれで洗われちゃうの?


「そうですね。本来ならここにあなたを入れて、ゴワンゴワンと現世の記憶や罪を落としてもらい、キレイになったところで現世に再出荷するんですけどね……」


 なんだか歯切れが悪いな。遠い目をしながら変な汗かいてるし。


「実は私、今日が転生作業初日の新人でして、ついついうっかり、あなたをポロリと落としてしまったんですよね。それでその衝撃であなたが目を覚ましたんですけど」


 頭を打って死んで、死んでからも頭かどうかは分からないけど床に落とされたワケですか。嫌なことは続くもんだな。でも体調?に不調はないし、いいんじゃないですかね。死んだのは残念だけどどうしようもない。さっさと洗濯機にゴーしてくださいよ。


「そうしたかったのは山々なんですが……。普通は意識がない状態の魂をサッと魂洗機に入れて、サッと出荷するんです。ほらこのように」


 と真横に天使が目線を向けた瞬間、真っ白い小部屋だと思っていた白い壁が半透明になり、周囲の様子が分かった。


 まるでコールセンターか何かの工場のように横一列に並んだ羽の生えた白い方々が、いきなり空間に現れた球体を掴み取り、魂洗機とやらの洗濯槽にしか見えない方にぶち込んでいる。


 そして洗濯槽にぶちこんだ球体をすぐさま取り出し、次は脱水槽らしい方に叩き込む。それで脱水された? らしい白い球体は脱水槽の横に空いた穴からコロリと転がり、自動的に横付けされた白いベルトコンベアのようなものに乗せられて奥へ奥へと消えていく。


 その一連の作業を延々と繰り返しているようだ。作業スピードは恐ろしく早い。まさに職人芸だ。ちなみに天使たちは横一列に並んでいるが、その端は見えない。広さどんだけだよ。


「あんなペースで作業しているなら、俺一人にこんなに構っている余裕はないんじゃないの?」


「そうなんですけど、あなたのように意識を取り戻してしまうと、かなり面倒なことになってしまうんですよね。魂洗機は前世の記憶や汚れを洗い流せますが、天界で目覚めてしまうとそれらが上書きされちゃって消えなくなっちゃうんです。あーあー……どうしよう」


 天使は俺を両手に持ったまましゃがみこんだ。かなり落ち込んでるようだ。また俺を落とさないでね。


「で、でもあんな流れ作業じゃ、今までにも失敗した前例とかあるんじゃないの? それにほら、三秒以内ならセーフだとか!」


「そうなんです。実は意識を取り戻しても三秒以内なら完全に上書きする前に洗っちゃうのでセーフなんですよね。研修でもそのように習いましたから。ガンコな汚れ程度の認識です。でも思わず頭が真っ白になっちゃって、あなたを手に持ったまま固まっちゃったんですよね」


 三秒ルールあるんかい。しかももう手遅れなのかよ。


「はぁ……。とりあえず、上司に報告に行きます。ホウレンソウは大事ですからね。はー、すっごい怒られるんだろうなあ……」


 と、天使が俺を掴んだまま目を瞑った。すると目の前が真っ白になり、次の瞬間、長髪白髪の偉い人オーラが半端無いじいさんが現れた。

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