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咲也・此花STEPS!! 2~訳ありフリーターだった俺が伝説の砂漠で一国一城の『にゃるじ』になるまで!~  作者: 日向 るきあ
<後半>STEP9.~暁に帝王、君臨す~

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STEP9-4 ~完全勝利! 暁に帝王、君臨す~

「……チッ! 情けをかけたことを後悔しろよ、アズールッ!」

 女暗殺者は装甲車両を追い抜かんばかりの速度で、砂の中を撤退していく。

 俺は彼女と、装甲車両がつづいてユキマイを出たことを確かめ、大きく息を吐いた。


『敵影、砲撃可能圏内から消えました。

 状況終了と判断します。皆さん、お疲れ様でした!』

「わああああ!!」

「やったぁぁぁ!!」

「かっこよかったぜ咲也さァァァん!!」

「漢だぜこのやろう!」

「一生ついていきますー!!」

「結婚してくれー!」


 YUIのアナウンスを受け、ユキマイの地を勝どきが包む。

 なんか、若干変な歓声も混じってた気もするが、深くは考えずにおくことにした。

 目下の問題はそう、ここに立っている『ダークヒーロー』だ。


 ナナっちは奴の胸板にこぶしをぶつけながら号泣している。

 奴のほうも抵抗するでもなく、むしろ驚くほど優しい顔で頭を撫でてやっている。

 無理に引っぱがす気になんかもちろん、なれなかった。

 もともと、可能ならばここに受け入れるつもりでいたのだし。

 しかし奴は、どういうつもりなのだろう。

 とりあえず、俺は奴に歩み寄った。


「なあアズール。取り込み中悪いけど……」

 そのときぐいっと後ろに引っ張られた。ふりかえらなくったってわかる、サクだ。

「お前は近づくな!

 アズール、奈々緒から離れろ。武器を捨て、地面に両手をつけ」

 俺をかばって立ち、アズールを睨みつけ、逆らえば殺すといわんばかりの対応だ。

「抵抗するな。俺がいいというまで、聞いたことにだけ答えろ。

 貴様、どういうつもりだ」

「おいサク」

「メイちゃん、アズールは……」

「どう見たってすでに怪我人じゃないだろう。

 誰に治させた。仲間はいるのか」

 当のアズールはというと、気分を害した様子もない。

「かまわねえよ、仔猫ちゃんたち。

 俺は消されねえだけ御の字の大悪人だ。ここは素直に従うさ」

 ナナっちから離れ、砂の上にひざと手のひらをついた。

 そして、静かな口調で答えを返しはじめた。


「つもりもへったくれも、流れってやつよ。

 俺は切り捨てられた。負傷して、死ぬつもりで海に落ちた。

 だが命救ってもらっちまったから、恩返しに舞い戻ってきた。そんだけだ」

「誰が救った」

「奈々緒だよ」

「え……??」

 俺たちの疑問の声がハモった。

「ナナっち、いつ見つけてたんだ?」

「いや、今会ったばっかだよ?」

「おいおい、無自覚かよ。

 わかってかけてきたかと思ってたのに」

「……どういうことだ」

「んー。とりあえず俺の身に起きたことを順番に言うぜ?


 俺は傷だらけの死に掛けで海に落ちた。だがいっこも苦しくねえ。それどころか痛みもどんどん引いてきて、ひたすら気持ちよくって、そのまんま眠っちまった。

 目が覚めたら怪我もさっぱり治ってたしアタマもスッキリだ。さすがにわかったね、俺は『アクアヴィータ』に包まれて海の中ふよふよしてるんだって。

 俺みたいなクズにそんなことしてくれる聖人様なんざ、ひとりしかいねえ。

 ってなわけで海から上がってここまで戻ってきた……って訳だ」


 それを聞くと、ナナっちの瞳にまた、涙が浮かんだ。

「そんな、ことって……

 俺、ずっと海に祈ってた。

 アズのこと、守ってください、助けてくださいって……

 奇跡だ。ユキマイの海が、願いをかなえてくれたんだ。

 ありがとう。ありがとうサクやん。おまえのおかげだよ!

 お前たちにとってこいつは、敵でしかなかったのに。それなのに……!」


 けれど、それはうれし涙だった。

 ナナっちはあふれるそれらを拭きもせず、ありがとう、ありがとうと俺に頭をさげた。

「ちょ、ナナっち! 俺のおかげじゃないって、お前のチカラだって!

 そりゃ俺だって、ナナっちのトモダチなら、絶対助かったほうがいいって思ってたけど!」

「……………………。」


 あわててナナっちに駆けよったそのとき、俺はアズールがこちらを凝視しているのに気が付いた。

 その目と口はぽかんと開き、なんだかちょっと間の抜けた顔になってしまっている。

 だが、それは奴だけではなかった。

 まわりのみんなまで、同じようにぽかんと俺を見ている。


「えっ、えっ、なに? おれまたなんかやらかしちゃった? ねえ??」

 救いを求め見回すと、当然サクと目が合った。

 奴はこめかみを押さえ、大きくため息をつきつつも、丁寧に解説してくれた。

「おまえは……

 いいかサキ。

 お前はユキマイの化身。お前に心底疎まれれば、ここでは生きてゆけないだろう。

 だが逆に、お前が心底生かしたいと思えば、そのものは生かされる。

 つまり、お前はこの外道を、心のそこから『生かしてやりたい』と思っていたということだ。

 たとえそこに、奈々緒のためという理由があったにしてもな。

 まったく、お人よしというか、器がでかいというのか……」

「まじかー……」

 アズールまでもが深くため息をつく。

 そして、こないだと同じ、真面目な顔で俺を見た。


「前言撤回だわ。俺の聖人様はひとりじゃなかった。

 俺は奈々緒に命の恩を返したいとだけ思ってここに来たけど、その恩は、お前にも返さなきゃならねえようだな――此花咲也」

 そして、俺にむけてひざまずき、深く深く、こうべをたれた。


「頼む。俺を、お前の所有として使ってくれ。

 研究材料として扱うもよし。傭兵として戦わせるもよし。

 俺は生体兵器だ。メンテナンスなしでは長く生きねえ。

 長くて半年。その間だけ、好きに利用してくれればいい。


 あとは黙っていても死ぬ、お前らに迷惑は……」

「あのさ。

 メンテってさ、特殊な施設とかいるのか?

 薬品も施設も俺たちでどうにかできる。あと、技術者も」

「……は? おまえ、なに言ってんだ?

『俺』は、シノケンの機密だぜ。すなわち朱鳥の機密だ。

 おに、……ソーマちゃんあたりなら全容把握してるがよ。

 もし今連絡取ったりすれば……」

「だれが瑠名にとっつかまるって?」


 そのとき、現れた人物にアズールはぽかんと口を開けた。

 砂を踏んで現れたのはそう、やつの“おにいちゃん”こと、亜貴だった。


「え、おま……な、なんでここに」

「おまえさぁ。ほんっとウソもダメダメだな!

 おかげでおにーちゃん、身辺がやばいって気付いちまった。んでもって身一つで親友のうちまで亡命してきちまった。

 あーあ、俺のツイブレグッズどーしよー。せっかく親父が買ってくれたのになー。あーあ」

「あ……や、それはっ……そんなつもりじゃ……ええっ……いや、なにこれどーなって……」

 亜貴が意地悪く笑いかければ、アズールは冷や汗ダラダラといった様子で目を泳がせる。こいつでもこんな顔になるのか。はじめてみたぞ。

 っていうか亜貴も見たことないほどいい顔してる。これドSだ。完全にドSだ。もはやサクといい勝負だ間違いない。

 その新たなドSはこれでもかっていうほど晴れやかな笑顔で言い放った。

「ま、そもそもこのことは、俺のトモダチのうさぎちゃんからリークされてたんだけどな!」

「は、……?!

 おいちょっと待て! それって俺を裏切った、あのクソ依頼主のガキ……」

「そーゆーこと。

 うさぎちゃんはな、わざとお前をハブったんだよ。

 捨てられたお前が他の傭兵たちをサクッと撃退して、うまいことユキマイ側に走れるよーに。

 ――ユキマイ国にチカラを与え、朱鳥からの独立を確実なものにさせるためにな。

 理由は、ま、言わなくたってわかるだろ」

「やはりか……」

「だったなー……」

 サクとイザークがうなずきあってる。

 そういえばイザークは以前『瑠名の動きがおかしい』といっていた。

 サクは『誠人さんのような人材を派遣してくるのが謎だ』とも。

 だが、そもそも朱鳥側に支援の動きがあったなら納得だ。


 しかしそんな俺たちを尻目に、亜貴はアズールをざくざくとこき下ろす。

「だってのにこんなことになるとか、おまえマジでドジすぎだろ。対処できねえような攻撃はさせてねーはずだって、うさぎちゃん驚愕してたぜ?

 はーまったくもう。だからダメだっつったろ、なりだけでっけー二歳児が家出なんか。

 お前は俺が世話してやる。おやじもテキトーなとこで呼ぶからな。

 ちゃんとお前の部屋ももらってあるぞ。どさくさまぎれに奈々緒君のお部屋に転がり込んでとか、そーゆー不埒なことはおにーちゃんが許しませんからね?」

「なあああ!! ちがう!! そんなこと考えてないから!!

 ナナはちがうから!! そういうこと考える対象じゃないから!!」

「へーえ? うちで毎日毎日毎っ日、奈々緒君バトル動画再生しまくってたのは誰だ? “勇者ナナキ”の出演番組片っ端から録画してたのは誰だ? それとか」

「やめて――!!」

「……まあ、そういうわけだ。

 こいつがセクハラしそうになったら俺に言って、咲也。

 奈々緒君も、甘い顔しなくていいから。

 これで問題ないかな、朔夜さん?」

「……あ、ああ……

 よ、よろしく……頼む……」


 いつの間に戻ったか、清楚な笑みでサラッと確認取る亜貴。

 サクもあきらかに気おされていた。

 俺は断言できる。このとき、俺たちは全員ひとつのことを思っていたと。

 すなわち――亜貴だけは敵に回してはいけない。

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― 新着の感想 ―
[一言] アズールと亜貴萌え萌えデス(≧∀≦)
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