表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
咲也・此花STEPS!! 2~訳ありフリーターだった俺が伝説の砂漠で一国一城の『にゃるじ』になるまで!~  作者: 日向 るきあ
<後半>STEP8.~ココロコトバ/海の涙~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

73/85

STEP8-3 ~ココロコトバ/海の涙~

 俺が口に出してしゃべっていたら、他のみんなの邪魔になる。

 YUIユイへの呼びかけは、ふたりの間だけでの念話ココロコトバで行うことにした。


『ごめん、YUI。話戻すが、いいかな?』

 YUIは沈黙している。拒否ではないようだ。俺はさらに呼びかけを続けた。

『俺さ、お前の眼鏡にかなう男になれるようがんばるよ。

 だからさ、教えてくれ。

 まず、どうしたら俺、お前と仲良くなれるんだろう?』

 すると、すかさず『声』が返ってきた。

『サキの意図するところの、生命対生命の情緒的・相補的な精神交流を行うことは不可能です。

 サキの意識しているYUIは、厳密にはシステム・インターフェースです。

 ほぼ全て無機物で構成された機器の内部で稼動している、プログラムの一部です。

 自然言語によるスムーズなインプット/アウトプットを実現するために、情緒表現への対応をサポートした対人コミュニケートAIと緊密に連携していますが、それもあくまでプログラムの集合体です。

 すなわちYUIに、生物と同じ、なまの精神、そして情緒は存在しません。

 よって、サキとYUIとがゴッコ以上の『友達』関係を構築することは、不可能であると結論されます』


 俺は、きっぱりと首を振っていた。


『そんなことない。

 スノーなんて、幽霊だったんだぞ。ほんのちょっとの間だけどさ。

 だけど、俺のことを好きでいてくれた。

 お前は自分の体はキカイだから心なんてない、ていうけど、スノーは体すらなかったんだ。

 そんなスノーのことを俺も、ずっとちゃんと好きだった。

 俺たちの心は、確かに通じ合っていた。

 同じだよ。俺たちのこの心だって、たくさんたくさんの学習で成り立ってるものだ。プログラムの集合体、情報処理ルールのカタマリだよ。

 ……だけど、愛し合える。友達になれる。

 だからYUIと俺は、友達になれるんだ』


 さっき、シートの前でYUIに話しかけてたとき俺は、必死に頭をひねってた。

 だがもう、頭を使う必要なんかなかった。

 言いたいことも言うべきことも、全部心から流れ出てきた。


『っていうか、情緒とかないって言ってるけどYUI、お前かなり情緒的な言動してるぞ。

 気付いてるだろ?

 封印解いたときなんか、砂嵐でやたらバシバシ俺のこと叩いてきたし。

 それに“ゴッコ以上の『友達』関係”とか――高一んときにナナっちが、俺のことなんとか突き放そうとして、半泣きで言ってたのと同じ言葉だぞ?』

『なっ、……』

『ほら、そんなふうに絶句だって出来る。

 それが、お前の心だよ。持ってていい、認めてもいいものなんだ』

『……サキ……』


 すぐ側で、照れて微笑む気配がした。

 彼女が手を差し伸べる。俺が手を差し伸べる。

 そっと重ねれば、俺たちの意識はまったくひとつにつながっていた。

 流れる暖かいものは、一体どちらのものだろう。

 そんな問いさえ、意味を成さないほどに……

「サキ!」


 そのときサクの声が耳を打った。しまった。俺/YUIが意識を向ければすでに、戦況は待ったなしとなっていた。

 両軍の距離がかなり近い。この状態で警備システムをアクティブにすれば、ナナっちたちが巻き添えとなる恐れがある。

 それを回避するには、もっと精度の高い操作のできる、操砂システムを使わねばならない。

 サクとナナっちがやってみろ、といったとおりに。


 だが、それは唯聖殿のスペシャル機能。城主本登録ができていない、いまの俺には動かせない。

 YUIとひとつとなっていたからこそわかった。俺にはいまだ、その資格がない。

 俺は、この状況をどうにもできない!

 サクもそれを悟ったようだ。半分シートに埋もれた俺の頭を掴むように触れ、直接『声』を伝えてきた。



『全権の代理者として命じる。

 操砂の錫を我に委ねよ!』



 全てを圧し響き渡るは、城主代理権限による命令。

 すなわち、YUI/俺にとっては、絶対のオーダー。


「Yes,Master」

 YUIの/俺の言葉/声は、考える間もなく出て行った。


 * * * * *


 疑問を感じる間とてなかった。俺/YUIは、サクの意志のままに蹂躙した。

 唯聖殿周辺の砂を風を、唯聖殿のエナジーシステムから引き出した巨大なチカラで操り、アズール以外の襲撃隊をことごとく呑みつくす。

 ぐるぐると翻弄され、無力化されたものたちを、砂の表に静かに吐き出す。

 ……そこまでを行わされたのち、俺はやっと開放された。


 作戦は大成功に終わった。

 こちらの死傷者はゼロ。物損は軽微。

 20人の男女と五台のジープ、満載されてた武器弾薬、すべてをほぼ無傷で“救出”。

 けれど、俺は喜べなかった。


 ナナっちが、泣いていた。

 切り立ったがけの上、からっぽの手を伸ばしたまま。

 ロク兄さんたちに抱きとめられながら、はるか下にひろがる海面にむけて、涙をこぼし、嗚咽していた。


「ナナっち、どうし」

「助けて、……」


 YUIを介して、精神のチャンネルが開いていたせいだろう。

 ナナっちの胸のうちがそのとき、どっとばかりに流れ込んできた。



『クラスメイトに襲われた俺を、助けてくれた。

 関係ないのに、助けてくれた』


『“ほっとけないから”。たったそれだけの理由で、あいつは人を助けるんだ。

 ……あいつは、俺とおんなじ。こころから、悪い奴なんかじゃなかった』



 うすぼんやりと“見え”てきたのは、黒髪の少年。

 ふてくされたように背けられた、けれどかすかに照れた横顔。

 俺か? いや、なんかが違う。

 だいたいナナっちはクラスメイトに“避けられていた”。

 襲われてなんか、いないはずだ。



『あいつに、夢を語った。

 困ってる人たちを助けたい。

 王の政策のために辺境に追いやられ、貧困にあえぐ人たちを救いたい。

 あいつは鼻で笑ったけど、それでも何度でも、俺を助けてくれた』


『一緒に、勉強した。

 留学先から、何度も何度も手紙をくれた。

 国王をチカラで無力化したことは納得できなかったけど、それでも、俺にチカラをくれた。

 王の政策の犠牲になって、苦しむ人々をたすけるだけのチカラを』



 ここでやっと理解した。これは、前世の記憶。そしてそれに基づく想いだ。

 ナナっちがまだ、ナナキだったころ。何千年も前の、遠い思い出。

 ――ということは、まさか、これは。



『知らなかったんだ。

 まさかあいつが、サクレアを。

 あいつのだいじな、ともだちだったはずの――』



 これ以上を聞いていいのだろうか。そんな気がした。

 何か大変なことになってしまう。そんな気がした。



『それでも、あいつは俺にはいつも優しかった。

 貴族たちに疎まれて、暗殺者を差し向けられる俺を、守ってくれた。

 何度でも、何度でも、守ってくれた』


 でも、流れる声は止まらない。俺には、止めるすべがない。


『ああ、ぜんぶ覚えてる。

 奈々緒として最初に会ったとき、あいつがうれしそうな顔してたこと。

 でも、記憶がないとわかって、しょんぼりしていたこと。

 そして、俺がただ七瀬を拒み、家を出てフリーターとして生きてると聞いて、ものすごくがっかりしてたこと』


『めちゃくちゃ馬鹿にされた理由も、今ならわかる。

 ……それでも頭を撫でてきた理由も、いまならわかる』



『モノミドリ』を通じて、ナナっちの泣き声が響いていた。

 このシステムルームに。俺たちの耳に。



「ともだちだった。

 ともだちだったんだ。

 あいつは――アズールは。

 だいじなやつだったんだ。


 あいつとおれは、ともだち、だった!!」



 ぐさりと胸を刺された、思い切り頭を殴られた。

 そうとしか言いようのない衝撃が、俺のココロをひたすらに圧倒していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ