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咲也・此花STEPS!! 2~訳ありフリーターだった俺が伝説の砂漠で一国一城の『にゃるじ』になるまで!~  作者: 日向 るきあ
<後半>STEP8.~ココロコトバ/海の涙~

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STEP8-1『適格者なし。唯聖殿管理システムは、『城主』本登録要請を却下します』

「なぜじゃ。こんなはずでは……」

 俺の目の前で、カイルさんがぼうぜんとしている。

 サクも疑念を隠せない表情だ。

 この状況は、ゆうべからもう、三度目だ。

 白い、巨大な繭玉にも似たぷにふわシートから、俺はそっと身体を抜け出させた。


 あれからすぐ、俺はこの城の中央部、本館二階セントラルシステムルームに入った。

 唯聖殿管理システムに、『城主』としての本登録をするために。


 現状でも、システムのほかの部分がしっかり機能しているから、大体のことは出来る。

 各部屋とも電気はつくし、空調も効き、上下水道、コンロ、エレベーターや自動ドアもふつーに使える。

 製薬部、食糧管理部のファームユニットも、昨晩のうちにセッティングを無事に終え、自動管理が再開されている。

 なぞの材質にコーティングされた壁や、これまたなぞの材質でできた床も、複数の方法でもって常につるぴかに保たれている。

 当然、警備システムもちゃんと働いている。

 信じられないかもしれないが、機械文明まっさかりの現代とほとんど同じ、もしくはそれ以上のインフラが、数千年前からここにはあったのである。

 だが、この城にはそれよりさらに、スペシャルな機能が秘められているというのだ!


 城全体の動向を大きく変えるそれを起動できるのは『城主』たる王、もしくはその代理権限者である『城代じょうだい』のみ。

 もちろん『城主』は俺なのだが、現状は仮登録、その権限は行使できない状態だ。

 というのは、アズールの死後、憂城の長が新たなあるじとしてサクレアを仮登録しておいてくれたはいいのだが、サクレアがその後すぐに死んでしまったためだ。

 ともあれ、それを本登録にして、正式の城主となるために、俺はこうしているのだが――


「どうなっているのだ……サキは確かにサクレア、我らが神王だ。

 それは、このシステムでも確認されているのに……」

 歩くチート王子様のサクでも、これはどうにもならない感じらしい。

「えーと……大丈夫だよ、あんだけすごいバリアがあるんじゃん。

 それに皆もいるし、何とかなるって」

「そういう問題ではないだろう」


 そう、俺がサクレアであることまでは、認証済みだ。

 神としての俺はすでに、この城のパワーソースの一部として組み込まれている。

 通常のユーザー登録はさらっとクリア、大臣クラスまでの権限付与も問題なかった。

 しかし、正式な『城主』としての登録だけが出来ない。

 何度やっても『適格者なし』で棄却。

 現状『管理権限者』としてカイルさん、『城代』としてサクが登録されているから、最悪ふたりに頼めばスペシャル使用は可能だが……


「多分さ、俺はまだまだなんだよ。

 いっぱい、勉強もしたし訓練もした。

 けど、俺にはまだ経験が足りないと思うんだ。

 このシステムはきっと、そこんとこをわかってるんだと思……うわ」


 椅子のひじかけにそっと手を触れたとき、ぱちんと静電気が俺の指先を噛んだ。

 うう、もしかして嫌われてるんだろうか俺。


「ええっと……管理システムっておやつ食べるかな?」

「お前がいつも持ち歩いている猫用液体おやつは少なくとも食べないだろうな」

「それ以前にものを食べることはありませんかと……」

 俺はおもわず床にくず折れた。なんてことだ。対にゃんこ究極兵器『きゅーる』が通用しないとか、すでに俺の常識を超えている!

「……どうしたらいいんだ……」

「もしかするとデータが不完全なのかもしれませんな。

 サクレア様であると“とりあえず”認証はしているものの、内部的に微小な矛盾が発生しておるのかもしれませぬ。

 我々のほうで引き続き、調査をしてみます」

「ありがとうカイルさん」

「サキはもうすこし、システムアクセスを繰り返してみればどうだ?

 手ごたえが、ないわけではないのだろう?」

「うん……

 なんだろう、『何か』が欠けてるんだ。

 こいつにとって、必要なことが……。

 もうすこしこっちから、いろいろ話しかけてみるよ。

 そうすれば、何かわかるかもしれないから」


 もう一度ひじかけに手を触れれば、今度は静電気は起きなかった。


 * * * * *


 通常利用者としての意識接続エンゲージなら、この段階でもできる。

 管理システムの存在を意識して精神を集中。『城の様子が見たい』と念じれば、唯聖殿の内外で稼動するモニタリング・システムからの光学映像が、俺の脳裏にいくつか投影された。

 もっともおなじものは、目の前の壁面を埋めるモニター群にも映し出されているので、ここでやっても意味ないっちゃ意味ない。

 ユキマイの地は、いま命のサイクルを回し始めたばかり。今はまだ、そんなに気楽に『無駄遣い』ができる状況ではないのだ。

 俺はすぐに映像投影をオフし、謎の材質でできたつるつるの床にまっすぐ立った。


 壁面モニターのいくつかには、城のそとの様子が映し出されていた。

 昨日行った『浸水の儀』により、地表近くの水分量が大きく上がり、同時に土質そのものすら、すこし変更されている。

 そのため早くも、紛れ込んでいた種が芽をふいて、海からの風に揺れているのが見えた。

 俺にはわかる。あいつらは、外では雑草といわれる類の植物たち。

 けれどここでは、その強靭な生命力で大地に根を張ってくれた、貴重な先駆者たちだ。


『あーははは! あっははは! すげーなおい、こんなんアリかよお!

 俺ここ来てよかったわ! ほんとマジよかったわー!!』


 イザークがくるくる回りながら笑っている。

 誠人さんは、緑の芽のそばに膝をつき、感に耐えないようすで涙ぐんでいる。

 場所は違えど、長く砂漠に係わってきた二人には感じられたのだ。

 その土が、命を宿したということが。

 絶対不朽の死の砂漠が、命の生きる場所へと少しずつ、変わってきているということが。


 それは、ナナっちや七瀬のみんなも同様のよう。

 あるいは二人に声をかけ、あるいは互いに雑談を交わしつつ、スノーフレークス園の世話に出かけていく彼らも、格段に明るい表情だ。



 ――あの襲撃から、スノーフレークス園はこの近くに移設していた。

 元の場所にあるのは、精巧な作り物。つまり、ダミーである。

 ゆうべ『奴ら』は、そこをめちゃくちゃに荒らしていった。

 そこにいくつもの『しあなお手製・超リアルお花型隠しカメラ』が100以上仕込まれているとも知らずに。


 まずは警報装置のコードを切断。五台あった“普通の”監視カメラを、死角から的確に破壊。

 その上で、コンテナ周辺を踏み荒らし、物置と点滴灌漑装置を重機を用いて叩き壊した。


 しかし、惨事の仕上げはその後だった。

 農機具の電気系統がショートし、彼らが立ち去った後、発火。

 すぐそばに積まれていた肥料には、農機具の燃料タンクにわずかに残った燃料がしたたり、しみこんでいた。

 結果。物置とその周辺は、ミニマムなクレーターとなった。

 まるで“あらかじめ仕組まれていた”かのように。


 国道にまで被害は及ばなかったものの、まばゆい火柱はここからも見えた。

 それを見た俺の胸には、なんとも言えない気持ちがこみ上げてきたものだった。

 サクが察して頭を撫でてくれなかったら、もしかして眠れなかったかもしれない。



 でも、そんなのは、もうそれで終わりだ。

 いまスノーフレークス園があるのは、この唯聖殿の外延部。

 無敵の警備システムの勢力範囲内なのだ。


 あとは、彼らを待つばかり。

 さらなる戦果を上げるため、揚々とここに来てくれるのを――

 そうして俺たちに必要な『確定情報』をもたらしてくれるのを、待つばかりなのである。



 働く仲間たちの様子にパワーをもらい、俺は俺のしごとにとりかかった。

 唯聖殿管理システム『YUIユイ』に俺を認めてもらえるよう、もっとたくさんアクセスしてみること。

『YUI』には、対人コミュニケートAIが組み込まれている。

 つまり、この城には人間によく似た人格が、心があるのだ。

 ならば、話をするのが一番。

 とりあえず俺は、例のぷにふわシートに向かってまっすぐ座り、話しかけることにした。


「えっと……さっきも、あいさつはしたんだっけ。

 あの。忙しかったらまたにするから、遠慮なく、そういってくれな?」


『YUI』は沈黙している。

 かまわないのだと判断して、俺は話を続けることにした。


「俺さ。お前とも、仲良くなれたらなって思ってる。それは、ほんとだよ。

 だから……

 サクとかはああいってるけどさ。俺は、無理はしなくていいかなって。

 やっぱ、無理強いってやだし。

 お前にとって俺が不適格なら、俺が努力するだけのこと。そうだろ?

 だから……」


 そのとき、警報が鳴り響いた。

 そんな場合じゃない! とでも言うかのように。

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