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咲也・此花STEPS!! 2~訳ありフリーターだった俺が伝説の砂漠で一国一城の『にゃるじ』になるまで!~  作者: 日向 るきあ
<後半>STEP6.出国前夜の勇士たち

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STEP6-2 ご訪問・七瀬本宅!(1)~ようこそ我が家へ~

 そうだ。このままでは、スノーの植物体が危険にさらされ続けることになる!

「よしっ、解こう封印! いますぐ唯聖殿本陣の封印といて、警備システム展開しよう!!」

「うれしーい! サキってばすてき!」

「それはダメだ。

 今はまだ、それをするターンじゃない」

「っ!」


 このときなぜか、スノーとサクの間に火花が散った気がした。


「……ねぇサク。

 とりあえずの対策として、今後の“わたしたち”のコンテナの展開を、もっと中央部に寄せてくつもりなのはわかってるわ。

 でもそうしたら、いまのサキが通うのはきついわよね?」

「車にクーラーを利かせ、冷却術の使える者を帯同させればいいだけだ。問題はない。」

「ふふー。冷却、っていったらやっぱ七瀬よねー?

 ボディーガードとしても適任だしー。

 基本はあたしがついてけばいいけれど、あたしがキャン活しているときは兄さまたちや父さま。

 それもなければ七瀬の誰かになるわね。

 でも、その場合はわざわざ車で本社に迎えに行って、ここにくることになる。そんなのぶっちゃけ、無駄手間だわ。

 なにが言いたいかというとずばり! サキは当面、七瀬のおうちに移住すべきよ!

 そーすればあたしが瞬間移動で絶対安全に毎日送迎してあげられるわ! カンペキねっ!!」

「お前は、この間の話を聞いていなかったのか?

 いいか、お前たちが力を使えば使うほど、ユキマイの地力の回復は遅れるのだぞ。

 いくら『七瀬の八番目』の力があるといっても、ユキマイの地の負担はゼロじゃない。

 そんなときに瞬間移動などという超高位の術を、気軽に使いまくられては困る。

 そういっただろう、スノーフレークス」

「むうぅ……」

「それに、サキはただの要人じゃない。王なんだぞ。

 いずれまたサキを狙って、あの外道が投入されてくることだろう。

 そのときに七瀬本宅の戦力だけで、サキを守れるか?

 いくら今の七瀬家が、七瀬とお前たちとの二重の加護を受けているといっても、本宅に詰められる人数はどうしても本社より落ちる。

 さらに出香いつか以上の兄たちはみな外に家庭があるし、お前たちも仕事で別行動することがある。

 現時点での七瀬本宅へのサキの移住は、危険しかない」

「……わかってるわよ……。」

 サクの正論に、スノーはうつむいた。

 ナナっちがやさしく肩を抱けば、すねたように抱きつく。

 そう、スノーは本来、悠久のときを渡った女神。わかってないわけがないのだ。

 だが、それでも言い出すのは、そこにそれ以上の感情があるからだ。

 それをみてしまって、黙ってるなんて選択肢は俺にはない。

「あのさ。

 ちょっと、泊まりにいくってのは、ダメかな?

 一泊でもさ。七瀬の皆が集まる日に、都合がもしついたらさ。

 俺も、まだ会えてない未来の兄貴たちと、ちゃんと会っておきたいし……

 どうしても七瀬家のほうできついなら、すぐ帰るようにするから」

 サクもわかっていたようだ。俺がスノーの頭を撫でながら言えば、ため息をつきつつも妥協してくれた。

「それならまあ、大丈夫だろう。

 いずれ、こちらからも本宅への訪問をせねばならなかったことだし、ちょうどいい機会だ。くれぐれも、失礼のないようにな。

 ……いや、わたしも行こう。

 ただわたしのほうは、当分宿泊は時間的に厳しい。会見と談話をさせていただいたなら、失礼するつもりだが……」

「うちだったらぜんぜん歓迎だよ!

 俺の部屋、ふとん三枚だったらぎりぎりひけるから。

 そのうちメイちゃんも、来れたら来てくれるとうれしいな」

「もちろん、喜んで」

 スノーが歓声を上げて俺に飛びついた。

 よっぽどうれしかったのだろう、サクにまで「ま、まあ、あんたが来たいなら歓迎してあげなくもないわよっ!」なんてツンデレしている。

 だが実際問題として、それはいつになるのだろう。

 七瀬も、デリケートな時期だ。一家の集会なんて、しばらくは……


 と思ったら、まさかの速攻。

 七瀬家臨時集会は三日後と、あっという間に決定したのだった。


 * * * * *


 その日の朝――

 スーツ姿で席に着き、サクの隣でフラッシュを浴びながら、俺は若干びびっていた。

 目の前、見渡す限り人人人。それもみんな、カメラやマイクをがっちり向けて、ばんばん質問を飛ばしてくるのだ。

 目玉をそっと左に動かし、サクごしにナナっちをみれば、あくまで自然体で質問に答えてる。

 サクはいいんだ、昔っから肝の据わったやつだとわかってるから。なんでナナっち、お前はこんな状況大丈夫なんだよ。

「メイ社長、本日の訪問は……」

「“ナナキ”さん、ご家族の皆さんとはどのように……」

「“ソル”さん! 本日はやはり、ご実家挨拶ということでしょうか?!」

「ええっ、と……」

 降り続く質問の雨が、ふいに俺にふりかかる。

 思わずえーとが口から出ると、やんわりとしかしがっつりとサクに肩をつかまれた。

 俺はそのまま絶句した――だって、これで顔はあくまでにこやか笑顔なんだからもはや怖っとしか言いようがない。

「“ソル”はこうした場が初めてで緊張しているようですので、わたしが。

 本日は皆さんにお集まりいただき、重ねて感謝申し上げます。

 ご存知のとおり……」


 流暢に語るサクの声を聞きつつ、ようやく思い出した。

 ああ、そういや言われていたっけ。『お前は挨拶以外何も言うな』と。

 どうも、やはり、俺はかなり緊張していたようだった。


 ここはユキシロ製薬本社ビル・正面玄関ホール。

 広大なこの空間は、その一角が会見用のステージになるよう設計してある。

 ……のだが、おしよせた人々はもはや玄関ホールを埋め尽くすいきおいだ。

 今をときめくユキシロ製薬の社長と、社内選考で抜擢された新人モデル。

 そんな二人が、更正事業ほかで親密な関係を築きつつある七瀬の本家へ、両者の交流を深めるために行く――それもナナキ役をつとめる、リアルヒーローの御曹司に連れられて――となったら、マスコミミニコミは黙ってなかった。


 もっともこの情報を公表したのはユキシロなんだが。

 あらかじめマスコミを集めておくことで、制御できない混乱を避けつつ、奴らに派手なことをさせないようにする作戦、ということだ。

『あのいかれ外道(=アズールのことだ)でもなければ、マスコミをぶっとばすような馬鹿はやらないだろう』とサクはいうけれど、万一やつが来やがったらと思うと心配になる。

『そのために警備がいるのだ。お前はいつもどおりのほほんと飯と風呂をいただいてぐっすり寝てくればいい』とか相変わらず、ひっどいのたまいようだが……

 いや、それ以前に記者会見ひとつ堂々とこなせなくって、俺はちゃんとした王さまになれるんだろうか?


 とか何とか考えていたら、いつのまにか、記者会見は終わっていた。


 * * * * *


 七瀬本家。我が親友ナナっちの生まれ育った家ではあるが、来るのは初めてだ。

 その理由は――

 高校時代には、ナナっちが『絶対来ないでくれ』と言ったから。

 バイト時代には、ナナっちはすでに家を出ていたし、俺たちの住んでいるところからだとちょっと遠すぎて、偶然に行く理由もつかなかったから。


 実は、七瀬の人たちを怖いと思ったことは、高速バス事件のときまではなかった。

 そりゃ、ニュースでたまにすげーことになってるなーとは思ったりしたが、それ以上に、彼らはこそっと言ってくれたりしたからだ。

『いつも坊ちゃんを、ありがとうございます』……と。

 もちろん、一般人の俺を気遣い、すれ違いざまにそっと、だけれど。


 だから、これは城門かっ! と思うほどの荘厳な門構えを行く手に見つけても、俺はむしろワクワクしていた。

 それよりなによりうれしいのは、ナナっちがニコニコしていたこと。

 案内役として助手席に座ってくれてはいたが、ときおり振り返っては言葉を交わす顔、バックミラー越しの顔はほこらしげだ。


 正門前に車を止めれば、駆け寄ってきたスーツメンが、うやうやしく助手席のドアを開ける。

 するとナナっちが「二人はまだ座ってて!」といいつつひょいと降りて、俺たちの乗る後部座席のドアを開けてくれた。

 エスコートされて降りれば、重々しく門が開く。

 車が二台は通れそうな石畳の道の両脇に、ずらっと並んだスーツメンが最敬礼し、ナナっちは明るい声をあげる。


「ようこそ、七瀬本家へ。

 俺たちの『我が家』に、ようこそおいでくださいました!」


 サクを、そして俺を手ずから門の中へと導くナナっちは、それはうれしそうな満面の笑顔。

 それは、迎えてくれる皆さんもそうだ。


「こんにちわー! おじゃまします!」


 だから俺は、門をくぐるとき一礼してそう言った。

 サクもちょっと照れくさそうに、それに続いた。

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