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咲也・此花STEPS!! 2~訳ありフリーターだった俺が伝説の砂漠で一国一城の『にゃるじ』になるまで!~  作者: 日向 るきあ
<後半>STEP5.サリュートのきのう、ユキマイのあす

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STEP5-4 ~王子様にはわかってない! 砂漠の恋の大作戦(ダブルミッション)~

2019.04.21

誤字報告ありがとうございます!

きゅっきゅとマーカーで版板書しながら

きゅっきゅとマーカーで『板』書しながら

 それからしばらく。

 俺はひたすら勉強と訓練に明け暮れた。

 仕事らしい仕事といえば、ファームや雪舞砂漠での豊穣神業をすこしと、『ソル』に扮して素材用の写真を撮られるモデル業をちょっぴり。そして、ごくごくまれーに、ぷれ王さま業。

 けれど、もう迷いはなかった。

 ゆきさんやルナさんはもちろん、イザーク、ティアさん、サーディンさん。

 憂城うじょうや七瀬の人たちにも頭を下げ、教えを請うた。


 みんなは驚いていた。

『こんなに飲み込みの早い生徒は見たことない』と何度も言われた。

 しまいには『もう、自分に教えられることはない。まさしく、免許皆伝です』とまで。

 うれしかった。すごくすごく、うれしかった。

 それでも、俺は止まらなかった。

 なぜかって。学べば学ぶほど、わからないところが出てくるのだ。

 そして、わからなかったひとつを知ったことで、これまでの仮説が見事にひっくり返ることさえも。


 正直に言おう。そのすべてが、楽しかった。

 子供の頃、学者を目指していたのはきっと、ただただ土を離れるためだけじゃなかったのだ。

 勉強が、知ることそのものが、楽しかったのだ。


 そして、それを役立てることは、もっともっと楽しかった。

 せっかく勉強で培った知識も、実地で使える判断力になってなければ意味がない。

 それに磨きをかけるために、俺はさまざまなことを予測し始めた。

 それこそ、明日の平均株価、当たり馬券の予想から、週間天気予報にいたるまで。

 サクの経営判断までもをドンピシャで的中させたときには『はっきり言おう。お前は神だ』とまで断言された。


 そんな俺がただひとつだけ、予測できなかったものがあった。

 イザークとのコーヒーブレイクから一週間ほどたったある日、俺たち経営幹部一同(+スノー)はロクにいさんに呼び出された。

 そして告げられたのだ、こんな、衝撃のひとことを。


「これは私と、ほか信頼の置ける筋による見立てですが……

 ティアさんは隠しておいでですが、イザーク殿下を恋愛の対象として、お慕いしております。

 そして殿下はティアさんを、ご自分で気付かないながら。

 すなわち、このまま殿下の縁談を進めれば、のちに遺恨を残すことになるやも知れません」



 ――会議室は静けさに包まれた。



 イザークといえば、先日ぐうぜんシャサさんと鉢合わせし、その瞬間『おおおおおお美しい! 貴女こそ女神!! お付き合いしてくださいっ!!!!』などと盛大に一目ぼれかまして、現在お試しお付き合い中だったと思ったが……


「えっえっええええ?!

 イザっちが、ティアっちのこと?! それほんとロクっち?!」

「おいおいマジか……」

 なぜかぱっと見詰め合ってぱっと目をそらしあってしまうしまうシャサさんとイサ。うん、こっちはみんなわかってるのだ、なぜってわかりやすすぎるから。

 まあ、こっちももともとイサ(諦めモード)→←シャサさん(気付いてない)という、似たような構図じゃあったんだが、イザークがシャサさんにアプローチするようになってあきらかに空気が変わった。

 どうにかしなきゃ。とざわついてるところへ、これだ。

 チーム・ユキシロはどうやら、本気で腰を上げなければならないようだ。


「せめて、お気持ちだけでも通い合わせて差し上げたいですわ。

 たとえ成就にはいたらずとも、そこから前を向くことができますもの」

 ルナさんに言われると、ものすごくずしっと来る説得力がある。

 もっとも、ご本人はそんなおつもりではないようで、あくまで優しく微笑んでいる。

「そうだな、俺もそれには同意見だ」

「俺も賛成。こんな大事なことなし崩しにしたら、絶対に後悔する!」

 サクが、イサが(ちょっとばかり力強すぎる気がしないでもないが)うなずく。

「わたしも賛成よ。シィはどう?」

 ゆきさんの問いに、シャサさんも賛成をかえす。

「うん……ほんというとね、あたしもうすうす、ティアっちのことは気付いてたんだ。

 ティアっち、いっしょうけんめい隠そうとしてるけど、同じ女の子だしね。

 イザっちは、すごくすごくすてきだけど……うん。もしそうなら、ティアっちと幸せになったほうが絶対いい。あたしも、二人の恋を応援したい!」

「あたしも。サキは?」

 ひとつ秘密を手放して、ほっとした笑みのスノー。

 もちろん、俺に否はない。


「それでは、現状を整理します。

・ティアさんは、イザーク殿下をお慕いしているが、それを隠している。

・殿下はティアさんを、ご自分で気付かないながらお慕いしている。

・殿下はシャサさんをお気に召され、現在交際中

・シャサさんは、お二人の幸せのために交際を中断することもやぶさかでない

・我々は、縁談のことは脇においても、お二人の想いが通じ合うことを願っている

 ……と、このようになります」


 いつのまにか、ホワイトボードの前にロク兄さんが立っている。

 きゅっきゅとマーカーで板書しながら仕切るそのようす、サクに見とれてはバックにバラの花を咲かせまくり、灼熱の砂漠で俺を凍死させかけた人と同一人物とは思えない。

 だが、うん、これが本来のロク兄さんなのだ。

 現に、七瀬の、いや、チーム・ユキシロまで含めた誰ひとりとして、ロク兄さんを悪く言う人はいない。

 知的で優しくて紳士的で、下のものの話も嫌な顔ひとつせず聞いてくれる、そして行動してくれる頼れる男として、上からも下からも信頼されている。

 唯一アズールだけはケチだのなんだのボロクソいっていたけれど、あいつのことだ、たぶんろくでもないことを持ちかけて断られたに違いない。


「では、目標を設定してみましょう。

 我々がいま考えるベストは、イザーク殿下とティアさんが恋愛を成就させること。

 すなわち双方が、お互いの恋愛感情をはっきりと認識し受け入れあい、その上で、未来に向けてより発展的な関係をともに築いてゆくようになることです。よろしいでしょうか?」

「異議なし!」

「つぎに、それが達成できない場合の最低条件です。

 最低でも我々は、

・イザーク殿下にご自分の恋心を認識していただくこと

・ティアさんに、イザーク殿下への想いを伝えることを検討いただくこと

 これらを……」


 * * * * *


 かくして俺たちは、動き出した。

 表向きには、イザークとティアさんの恋を――。

 その一方でイサとシャサさんの恋の成就をねらうという、高難度のダブルミッションだ。

 もちろん、裏ミッションのほうは、イサとシャサさんにはナイショだ。

 一旦宿題ということで解散をよそおい、残りの俺たちは秘密の作戦会議に興じた。


 ただし、サクとルナさんはもともと多忙なところに、朱鳥政府が持ちかけてきた『ユキマイ砂漠を購入しないか』って件で、忙しさがさらに増している。

 そのため、作戦リーダーはロク兄さん、実行部隊はイサ、シャサさん、ゆきさん、ナナっち、俺とスノーをはじめとした各部門の有志となった。


 作戦の概要はこうだ。

 まずは、とにかく二人をデートモードで会わせる。

 といっても基本的に二人は一緒のことが多い。

 そこでとるのが、サプライズデート作戦である。


 まずは下準備。イサがティアさんにアプローチする。

 といってもいきなりでは拒否られる可能性もある。

 女子連からさりげなくコイバナをふり、どうせだったらティアちゃんも誰かよさげなひともらっちゃえばいーじゃん! 両国の絆だって深まるし! なんぞとたきつけておく。

 数名の候補に混ぜ込んでさりげなくイサを推したら、ティアさんの立ち回り先に“偶然”イサがいる機会を増やす。


 ティアさんが、『これは自分がイサさんを意識しているのかしら?』と思ってくれ始めたのを女子トークで確認したら、第二段階。

 サクが友人兼ユキマイ宰相として、イザークに女子連同様のハナシを持ちかける。

 そして、ティアさんとイサも、お互いをすこし意識しあってるようであるし、機会を作らせてくれないかと打診。

 いまだ、ティアさんへの気持ちに気付いてないイザークは快く了承してくれた。


 そんなわけで、二組がそれぞれデートするようになったら第三段階。

 デート先をバッティングさせ、とにかく出会うようにするのだ。

 待ち合わせのタイミングで二人が話すようにしたり、ダブルデートをセッティングしたり、そうしたら遊園地のお化け屋敷で二組を入れ替えたりと、俺たちはティアさんとイザークがデートをしてしまうように、あらゆる合法的手段を駆使した。


 結果は上々。イザークとティアさんにとっては慣れない外国生活ということもあり、一ヶ月もたたないうちに、その距離はどんどん近づいていった。

 一度は疑惑の人となった誠人さんをときどき投入し、燃料代わりにすれば効果は抜群。

 もっとも誠人さんはうそもなんにもつけない人なので、ただ単に用事作ってイザークとふたりきりで緑化トークさせただけだったのだが。


 一方で、あらかじめさぐっておいた二人の結婚観をもとに、それがシャサさんやイサと合わないことを、二組のデートの会話の中で明らかにしていく。


 さいしょに言い出したのは、イザークだった。

 タイミングを見計らってシャサさんが切り出そうとした別れに、奴は先んじて口火を切った。

 自分からアプローチしておきながら、酷いこととわかっている。だが、こんな中途半端な気持ちで、シャサさんと付き合い続けることはできない。本当に申し訳ないがと潔く自ら頭を下げたのだ。

 もちろん、シャサさんも同じ気持ちだと答え、二人は握手して交際を解消。


 一方でイサも、ティアさんに別れを切り出す。

 やはり、自分ではティアさんにつりあわないと思うようになった、これからもかげながら幸せを応援させてくれと。

 ティアさんも、わたしはイサさんを内助の功で支えきることはできないと考えるようになった、どうかもっとよい方と幸せになってくださいと了承。



 そうしてイザークとティアさんが、運命の場所に選んだのは――

 やはりというべきか、ユキマイ砂漠。

 それも、花咲くスノーフレークス園の近くに張られた、本部テントの裏。

 俺たちが、初めてイザーク一行と出会った、思い出の場所だった。

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