STEP2-1 ~もと訳ありフリーターな新米部長はねこみみ巫女さんにはーとをうちぬかれたようです~
2019.10.07 改稿いたしました!
俺の脳から論理が消えた。
原因は、目の前の液晶画面に表示された、なんだか夢夢しいサイトイメージ案。
……を彩る、とてつもなく愛くるしいねこみみ巫女さん(16)の画像。
「と、尊い……っ!!」
早めのランチから数時間。すでに『スノーフレークスを用いての雪舞砂漠緑化プロジェクト』は動き出していた。
そして俺は、真の女神の光臨に心打ち震え、呆然と立ち尽くしていた。
雪舞砂漠の緑化は、ここ朱鳥国における建国以来の課題のひとつだ。
異常なほどに地力がなく、雑草すら生えない不毛の砂漠。
複雑な流砂や砂嵐の影響で、中心部の通行・探査はほぼ不可能。
地下資源の埋蔵も確認されず、わずかに残った遺構も、探索しつくされて久しい。
それでも、海から吹く風による砂害には、常に対策のための予算が必要となる。
なおかつ、沿岸部に広がる広大なそこを放置すれば、国土を蝕む者たちの巣窟となるのは目に見えている。
そんな、厄介でしかない土地が、いまの朱鳥国にとっての雪舞砂漠だ。
『どっちかというと赤字の源であるおとぎの砂漠』を、一日でもはやく『ふつうに生産性のある国土』として改造したい。その悲願は草創期から政府に緑化基金を設立させ、毎年少なからぬ額の事業助成金を用意させてきた。
『スノーフレークスを用いての雪舞砂漠緑化プロジェクト』も、当然その緑化事業助成に応募して資金を得る予定ではある。
ただ、近年ではその難事業に挑む企業も減り、首相が変わってからは基金の廃止すら議題に上がっている。
最悪、助成が途中で打ち切られ、資金が枯渇する恐れもあった。
そのため、ミニ独立国の形をとった、クラウドファンディングを企画したのだという。
――が。
なんと企画名は『ユキマイ王国復活プロジェクト』!
キャンペーンガールの名は『ミス・サクレア』!
そしてそれに扮する女性は、社長の妹のほんわか天才美少女ルナさん!!
それもなんとなんと、白地に若草ポイントのねこみみしっぽなファンタジー系巫女さん姿に身をやつし、ふんわり優しく微笑んでおられるっ!!!!
正直に言おう、どストライクだった。
にゃんかわいすぎて生きるのが辛いなんて気持ちを、一次元二次元三次元含めた人類に対して抱いたのは、此花咲也二十余年の生涯において、まったく初めての経験だ。
可愛い。愛らしい。なんて可憐なお方だろう。
こんな子が、失われたしあわせの国を復興したいとけなげにお願いしてくるのなら、俺は全てを投げ打てるっ!
いや、ちがうぞ天国のスノー。これはあくまで、妹を見るような気持ちだからな?!
「まずえっと、俺の全財産ってたしか……」
「落ち着け。」
口走り始めた俺の額にチョップが炸裂した。
下手人は差し向かいに座っている末期のシスコン……もといサク。この情報を俺にもたらした張本人だ。
やつのチョップには精神鎮静効果がある(っぽい)。なんとか正気をとりもどした俺はひとつ息をついた。
「あ、ああ……ごめんサク」
「いつものことだ。
それよりどうだ、わが天使の晴れ姿は。世の有象無象ごときに拝ませるなどもったいなくも畏れ多いが、本人がよいといったものだ。不埒ものどもへの粛清はしばし控えねばなるまい」
「は、はあ」
「で、どうなのだ」
いや、これ妹がキャンペーンガールになった兄の言葉じゃないよね多分。俺はいまどっか、異世界からの電波を受信してんだよねきっと。
でも俺は言っていた。
「入信しますっ!」
「うむ……これは改善の余地あり、だな。
世の全員に現時点でこうなられては我らが新国家の建設に差しさわりがある。すこし、わが天使の魅力の訴求を抑えるように指示せねば。
だが、サキ。お前はもうすこししっかりしろ。
このプロジェクトが形になった暁には、お前は王になるのだからな」
「え゛」俺はふたたび絶句した。
「おっ、俺もコスプレすんのっ?!
いやさすがに二十歳過ぎた野郎のねこみみ女そ」
その瞬間、強めのつっこみチョップが脳天に炸裂した。
「そっちじゃないっ、この脳天お花畑っ。
『王』だ。本物の。
われらはこのユキシロを、ユキマイ砂漠を領土に有する独立国家とする」
「へ…………」