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咲也・此花STEPS!! 2~訳ありフリーターだった俺が伝説の砂漠で一国一城の『にゃるじ』になるまで!~  作者: 日向 るきあ
<後半>STEP5.サリュートのきのう、ユキマイのあす

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STEP5-2 砂漠の王子と過ごす午後~元ねこみみ神王は木から降りれなくなって救助されるようです~

「あーはははは! はーははははは!! ひーおかしー!

 それでサキのやつあんなとこ登ってたのか!!

 子猫かよお前さー。あーもーウケる。ったくおまえらサイコーだわもー!」


 その後俺は、おっかけてきたサクに動転し、べつの会議室の窓から飛び出して庭園の木に登り、にっちもさっちもいかなくなったところを、ちょうど通りかかったイザークたちに救助されたのだった。

 まったく、何をやっているのだろう。会議中に居眠り、寝ぼけて飛び出し、無駄に能力使って逃げ回った末に公賓に救助される。もはやアホとしか言いようがない。

 芝生のうえ、真っ赤な顔で正座する俺の前で、イザークは腹を抱えて笑い転げている。

 ティアさんも上品にくすくすと、失礼にならない程度の笑いを見せている。お美しい。

 なぜかサーディンさんの姿が見えないが、向こうのほうから激しい笑い声が聞こえているのできっとそれだろう。


「うう、すんません……」

「まったく、王たるものが公賓の前で失態を見せるのみならず救助の手間まで……ほんとうに申し訳ない、イザーク殿」

 俺の頭を下げさせつつ、サクもさすがに恥ずかしそうだ。

「いーっていーって。

 つか俺、ここで婿になる予定だろ? いうなればもう半分身内だぜ?

 どんだけつくろっても、遅かれ早かれだ。

 むしろこんだけ飾らねえとこみせてもらえっと逆に安心するわ!」

「そういってもらえるとうれしいが、いつまでもそうというわけにも行かなかろう。

 ……瑠名は手ごわい相手だ。下手なスキを見せれば、どんどんつけ込んでくる。

 奴らとの対峙を控えてこれでは、正直不安だ」

「ルメイなあ……奴らの動きじゃっかんおかしいのわかって言ってる?」

「無論だ」

「なら、いーけど。

 とりあえずはアレだ。お前らどうしでまず、情報共有したほうがよくね?

 お前らの間には特に、特別なつながりがある。

 いずれは、解決すべき問題だぞ。具体的なことは、いってやれないがな」

「……」

「ああ」


 俺とサクの間の微妙な問題。すなわち、ルナさんのことだ。

 一応は、解決したことにはなっている。

 すくなくとも、ルナさんは割り切ったふうでいる、ようだ。

 だが、俺の気持ちの中には、あれ以来微妙なしこりが残っているのは否めない。

 だって、ルナさんは待っている、といったのだ。

 諦めてなど、いないのだ。

 いつもみんなのことを考えるルナさんが、わがままを通してまで求めたそれは、本当はまだ宙ぶらりんなままであることを、俺は気付いてしまっている。

 そして……


 そのとき、イザークが俺をつついた。

「サキよ。

 新ユキマイの婚姻の制度についちゃ、ビジョンみえてるか」

「……いえ」

 はずかしながら、それもいまだに宙ぶらりんだ。

 この数日、働きたい、役に立ちたいといって俺は動き回ってきた。

 だが、それははたして正しいことだったのだろうか?

 瑠名家――朱鳥国との対峙は、もう視野に入る頃だというのに。

「よーしよーし。それではお兄さんがかわいーサクっちにミニ異文化教育をして進ぜよう。

 っても『たまたま遊びに来た外国のイケメン御曹司が気に入った弟分に勝手にうんちくたれてる』だけだからなー? 細かいところはちゃんっと調べなおせよ?」

「えっ、あ、はい……」


 * * * * *


 そして、ここは貴賓室。

 俺とイザークの前には、ティアさんが手ずから振舞ってくださった、サリュート風のコーヒーが薫り高い湯気を立てている。


「すまんな、サリュートとは豆が違うから、本格派はいずれ改めてご馳走するわ」

「いっいやいや?!

 むしろ俺がお入れするべきなんだけどここは?!」

「今日は俺が拉致ったからな! 遠慮すんなよ、弟分!」

「えっと、はあ……それじゃありがたく……

 飲み方の作法とかある?」

 サリュートの作法は、ネットとかでいちおう、急ごしらえだが勉強してある。

 だが、新興国というか国際的にはまだほとんど承認されてすらいない小国。情報はないにひとしく、素直に聞くしかないのがほとんどだ。

 とはいっても、イザークも『んなもん気にすんな、そっちの流儀でかまわないぜ』だそうだからどうにもならないのだが。

「特別な作法……てほどじゃないが、あっち風の飲み方はあるぜ。

 こーやってな……」

 おもむろに、イザークはコーヒーシュガーを数粒ぽんぽん、と自分の口に放り込んだ。

 そのまま音もなく、珈琲色の液体をすする。

「こっちのやつらにはガキっちいって言われることもあるんだがな。やってみるか?」

「ああ」

 俺もコーヒーシュガーを含んで、コーヒーを(音を立てないように……)すすってみた。

 うん、これはいい。コーヒーに溶かしてしまうよりもダイレクトに甘さが口の中で解けて、甘いの好きな俺には、むしろこっちのがいける。

 珈琲そのものの香ばしさも、むしろ引き立つようだ。

「どーよ?」

「んまい!」

 素直にそういうと、イザークはうれしそうににこにこと笑った。

「そうかそうか。

 ……サキはいい子だなあ。すなおで、ぜんぜん気取ったとこがない。

 前世は神王で、いまだに絶大なカリスマ誇ってるって聞いてたからどんなやつかと思ってたんだ、実はさ」

「いやいや誇ってない誇ってない! むしろアホの金字塔を日々更新してるわ……」

「ははは。

 ほんとなあ。おまえが女の子だったらお付き合い申し出ちゃうんだがなー。王だし。」

「ぶほっ?!」

「安心しろ、お前男だからしないって。

 俺は王命で、ユキマイの有力な女性に婿入りしなきゃなんねえ身だ。

 無事にお相手みっけるまでは、死んでも帰ってくんなって姉貴陛下に命令されてんだわ。

 こっちのお姉さま方はやさしそうだし、早くシアワセんなりてーわー。

 つかユキマイってほんっと美人ばっかだしな! そこんとこは俺ラッキーっていうか!!」

「あ、それ言えてる!」

 入社してみておどろいたものだ。まずはシャサさんからはじまり、会う女性会う女性みな綺麗でレベルが高い。

 しかもそれが全員俺に好意的だなんて、現実はいったい俺をどうする気なんだといまだに思う。

 スノーと出会っていなかったら、そして俺に常識と良識がなかったなら、今頃はテンプレのごときハーレム野郎になっていてもおかしくない勢いだ。

「もー全員美人だしレベル高いし、正直はんぱないわ……」

「お前たちはみんな、転生者だ。その分苦労してるからな。

 俺はそーいうのねーから、そこんとこは努力しないとだ。

 ……嫁様につりあわねえ婿ほど惨めなもんはねえからさ。

 特にうちみたいな多夫制だとなおのことよ」

「あ……」

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