STEP5-0 はじめまして、わたしはサリィです。どうか、たすけてください。
○月×日
みなさん、はじめまして。
わたしは、サリィといいます。
アル=レイム国の首都、レイムにすんでいます。
あしたでわたしは、5さいです。
これは、あしたのおひろめパーティーにと、新しく作ってもらったドレスです。
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あしたのパーティーで、わたしのだんな様がきまるから、ドキドキしています。
ここのところ、あちこちでぼうどうがおきています。とてもこわいです。
だから、守ってくれるような、つよくって、やさしい人だとうれしいです。
だんな様がまもってくれたら、わたしもきっと来年から、ちゃんと学校にいけるとおもいます。
○月×日
わたしは今、しんせきのいえにいます。
きのう、パーティーがはじまってすぐ、わたしのいえにほうだんがあたって、大きな穴があいてしまいました。
みちのむこうから、ぼうをもったたくさんのひとがはしってきたので、こわくなって逃げました。
そうして、このいえまでにげてきました。お父さんも、お母さんも、妹も、どこにいったのかわかりません。
ごめんなさい、うまくまとまりません。とても、とてもこわいです。
○月×日
わたしは、別のしんせきのだんな様の、およめさんになることになりました。
わたしはそのひとにあったこともなかったのだけれど……。
ここのうちでも、こどもをこれ以上おいておく余裕がないのだし、しかたないと思いました。
でも、だんな様はいいひとだったし、ひとりめの奥さまもとってもやさしくて、「わたしの子供になったと思ってね」といってくれるので、うれしくて泣いてしまいました。
きょうからはこのうちでがんばって、おてつだいもいっぱいして、かぞくと会える日をまとうと思います。
○月×日
わたしは、男の子のかっこうをすることになりました。
女の子だとわかると、およめさんにしたいといってさらわれるから、ということです。
わたしのおひろめパーティーも、だからこわされたのだとききました。
でも、なんでこんなことされなくちゃならないのか、わかりません。
このところは、ひるでもよなかでもどーん、どーん、ぱんぱん、というおとがして、すごくこわいです。
かぞくがしんぱいです。お父さん、お母さん、メアリィ、ぶじにもどってきてください。
○月×日
おとなりのうちが、こわされてしまいました。
うちも、かべに大きな穴があいてしまいました。
町中こんなかんじで、しょくにんさんも手がまわらないから、なおせるのがいつになるのかわからないそうです。
ふるいじゅうたんをはって、かぜよけにしています。
○月×日
このうちも、こわされました。
みんなでまたにげました。こわい。どうして。
みんながぶじなのがさいわいです。
レイムのまちは、どこもあなだらけです。
まるで、わたしのこころみたい。
ほうだんの音もじゅうの音も、だれかがどなる声ももうたくさん。
でも、お父さんとお母さんとメアリィとあえるまでは、この町をはなれたくない。
とても、くるしいです。
○月×日
だんな様と奥さまはもう、この町からにげようといっています。
東にあるサリューにつければ、安全だからと……
こどもひとりで生きていけないなんてわかっているけれど、ふたりをきけんにさらすのもつらいです。
そうだんのけっか、あと一週間、まってみようといってくれましたけど、わたしのあたまのなかはもうぐしゃぐしゃです。
だれか、たすけてください。かぞくとぶじにあわせてください。こんなたたかいを、どうかやめさせてください。どうか、どうか、おねがいします。
――これは、サリュート建国のきっかけと言われる『サリィのSOS』からの抜粋である。
なおこの三日後、地元ジャーナリストほかの協力で、サリィは家族と再会。
皆でサリューに逃げ延びた。




