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咲也・此花STEPS!! 2~訳ありフリーターだった俺が伝説の砂漠で一国一城の『にゃるじ』になるまで!~  作者: 日向 るきあ
<後半>STEP4.王の帰還の、そのまえに

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STEP4-2 王の帰還の、そのまえに(2)~記憶の戻らぬ神王(仮)は元衛兵に壁ドンをくらいそうです~

「あの、いしか……」

 サファリルックのチームリーダーに声をかければ、またしても無言でにらまれた。

 先ほどこけたときには大慌てで駆けつけてくれたから、嫌われているというわけでもなさそうなのだが……


 ここは、唯聖殿外延部に位置する遺構のひとつ。

 すでに行われた調査によれば、おそらくは日用品などをおさめた倉庫であろうということだ。

 ただし、数千年分の夜露や海風によって風化し、すでに地下部分しかかたちを残していない。

 砂上には遺物のひとつとて残されていないことも確認済みだ。

 ゆえに調査は、その地下部分に行われることとなった。


 ライトの明かりにうかぶのは、石造りの四角い部屋。

 チームリーダーの石川さん以下五名の調査チームはそこで、細かく丁寧に写真を撮り、メジャーで計り、図面にメモを取っている。

 広さは、ちょっとしたワンルームマンション程度。けして大きくはない空間だが、瓦礫や土器のようなものがそこここに点在しており、このペースだと相当の時間がかかるだろう。

 だってのに俺はここで、ほんとにこうやって、なーんにもせずに見ていていいのだろうか?

 当惑する俺を尻目に、石川リーダーは調査中のメンツにむけて声を張る。


「何度でもいうが、小石一個、ガラクタ一個見逃すなよ!

 ちょっとでも手落ちがありゃあ奴らはエアプ認定してくれやがる。

 絶対、奴らに隙を見せるな!!」

 何度も繰り返されたその言葉。

 いや、それは遺跡探索に使う用語じゃないような気がするんですが。

「ほんっとおめでたいんだな、此花は。

 二度いわねえぞ。

 俺らにとってこいつは、本来意味のねえ作業なんだ。

 なぜって、俺らにとっちゃこの辺は庭だ。

 何年も何年も守ってきた場所なんだ。間取りも、用途も、どこになにを残してきたかも昨日のことのように思い出せる」

 そういえば、石川さんも憂城の係累だったっけ。

「――だが、それでまんま報告書作って提出すりゃ、奴らの罠にはまるんだよ。

 あれを見ろ。以前の調査のときにはなかったブツだ。

 調査の後にやってきた奴らがワザワザおいてきやがったシロモノだよ」

 石川さんが指す先を見れば、そこに鎮座していたのは……

「お地蔵さん?」

「…………。」


 思ったまんまを口にしたところ、石川さんはすんごい目つきで俺をにらんだ。

 もともと、端正できりっとした顔立ちなのだ。背だって頭半分近く俺より大きい。そんなヤツがにらんでくるとなると、正直いって怖い。


「やっででも! そんなインチキ……」

「ここへの出入りの許可をしていたのはどこの誰だ?」

「あっ……」

「そういうことだ。

 だが、今度からはそうはいかねえ。

 今ここはユキシロの管轄だ。だいじな現場においたするよーな悪い子ちゃんどもは、きっちりとアゲてやらねえとな?」

 たのしそぉぉうに含み笑いをする石川さん、もはや完全に悪人だ。

「いっいしかわさんこわいこわいこわい」

「あぁん?」

 またしても睨まれた。

「おまえ此花ちょっと来い」

「ええええ?!」


 がしっ、と腕をつかまれて、俺は遺跡の外へと連行されるハメになった。

 なぜか作業中の皆さんが『がんばれっ!』と笑顔でアイコンタクトしてくる。なかにはサムズアップしてるやつまでいる。つまり、だれも助けてくれない。

 俺はどうされてしまうのだろう。っていうか俺はいったいなにをしちゃったんだろう。

 それを知るにはどの道、ついていくしかないのだが。

 恐ろしいなりに腹を決め、俺は歩を進めた。


 * * * * *


 やっと手が離されたのは、地下室を出てからだった。

 日よけのために張られている大形テント、その中にとめられたバンの側面を背に、まるで壁ドンのような構図で立たされる。


「あの……俺、なにか……

 知らないうちに悪いことしちゃってたなら謝る。ごめんなさい。

 でも、ならば理由を聞かせてほしいんだけど……」

「お前俺のこと思いださねえの?」

「え?」

「カイルんことは思い出したんだよな?

 なのにどうして俺のことは思いださねえんだよ?」

「え? ちょ、ちょっとまった!

 俺まだ記憶虫食いなんだ! けっして悪気じゃ……!!

 い、今思い出す! がんばるから!!」

「……」


 ジト目で石川さんが俺を睨む。

 がっちり腕組みしたその構え、思い出せませんでしたじゃ済まないことはうけあいだ。

 かといってテキトーなウソなんかついたらどうなるか。

 恐怖しつつも俺は必死に記憶を探った。

 と、よみがえるものがひとつ。

 だがそれは


「――っ!!」

 俺はその場にくず折れてしまった。全身痛い。怖い。呼吸が苦しい。

「サクレア!!」

 石川さんが焦った様子で俺のわきにひざをつき、背中をさすり始める。

「悪い、もういい。俺が悪かった。もう、思い出さなくていいからっ……」

 異常を察したのだろう。砂を踏む足音が、ざくざくといくつも近づいてくる。

 それと、俺を呼ぶ声が。

「どうしたサキ?!」

「大丈夫ですか?!」

「お……俺が無理、言ったから……

 たのむ、助けて!! サクレアが!!」

 ふわっと、頭に暖かいものが乗っかった。

 そこで俺の意識はふつりと途絶えた。


 * * * * *


 目覚めればそこは、バンの車内を利用して作られた簡易救護所。

 俺はストレッチャーの上、タオルケットを腹にかけられ横たわっていた。

 横を見ると、ベンチのうえ。

 すっかりしょんぼりとした石川さんと、心配そうなサクが座っているのが見えた。

 そういえば、あのとき聞こえた声のひとつは、サクのものだった。

 サクがお得意の精神沈静で、俺を落ち着かせてくれたのだろう。


「あ、……ごめん。俺……」

 いたわるように、サクが頭を撫でてくれた。そうして問いかけてくる。

「なにを思い出した」

 この暖かさが頭に載っていれば、パニックは起きない。俺は安心して、先ほどの記憶をたどる。

「えっと……地下の。扉のところ。そこから先は、みえてない」

「そうか。なら、よかった。

 石川チームリーダーの話に寄れば、彼が自分のことを思い出せと迫ったがためにお前は記憶を手繰り、その結果こうなったということだが」

「えっと……いや、あの」

「事実だけを言え。弁明はあとで聞く」

 もう、サクはノーマルモードだった。そして俺も。

 ぴしゃりと断ち切る言葉に、俺はひとつ息を吸い込んでから答える。

「……違う」

「?!」

 石川さんが、驚いた顔で俺を見る。

「記憶をたどろうとしてたことは事実だけど、それよりは地下空間に入ったことのほうが因果関係として強いと考えられる。あれはたまたま。タイミングが悪かっただけだよ」

「……だそうだ。

 どうやら、お前の考えすぎだったようだな」

「っ……」

 俺とサクの顔をぼうぜんと見比べて、石川さんは絶句する。

「お前たちはそこで、もうすこし休んでいろ。

 ではまた」


「……なん、で」

 サクが立ち去ると、石川さんは声をつまらせながら問いかけてきた。

「なんで俺をかばうんだよ。

 あれは、俺がお前に詰め寄ったからだ。さもなきゃあんなことにはならなかった。

 俺は、お前にさんざん酷い態度取ったのに……」

「理由があったからだろ?

 まえに、仲良かったのに、忘れられてたら……俺だってああなるよ」

「お前はそんなことしない!

 ……ほんとさ……お前どこまで優しいんだよ。ほんとさぁ……」


 石川さんは、首にかけてたタオルに顔を埋めて突っ伏してしまった。

 俺は自然と、その頭に手を伸ばしていた。

 艶のある黒髪を撫でれば、その感触がふわり、よびおこすものがあった。


「……クロウ」

「!!」

 石川琥郎いしかわくろう、あらためクロウが顔を上げる。

「クロウ、だよね。

 カイルと仲がよかった子。

 短い間だけど、俺たちの身の回りの世話もしてくれてて、その後は衛兵になった」


 クロウとはじめてあったときも、彼はこんな風になっていた。

 小さな失敗で叱られて、だれもいない廊下でひとりしゃがみこんでいた。

 どうしたの? と頭を撫でたらもっと泣き出してしまって、しばらく一緒にいてあげたのだっけ。


「……

 おっせぇよ、おもいだすの……」

 じろっ、と睨みあげてくるけれど、その目が涙で真っ赤なせいか、もうちっとも怖くない。

 すねたようなこの口調もなつかしい。

「うん、ごめんねクロウ」

「うう……さっくんのたらし」

「ニャー!!」

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