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咲也・此花STEPS!! 2~訳ありフリーターだった俺が伝説の砂漠で一国一城の『にゃるじ』になるまで!~  作者: 日向 るきあ
<後半>STEP3.志士たちは砂漠に集う

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STEP3-4 ~お散歩がえりの神王(仮)はゴスロリ天才美少女にロッカー経由で拉致られるようです~

 お風呂でかなりリフレッシュしたとはいえ、ここからがっつり遊び倒すのはさすがに厳しい。

 軽く町を見て歩いたら、今日は引き上げ。

 サクが先頭に立ってイザーク一行(鹿目さんつき。なんか気に入られたらしい)を案内し、俺とナナっちはその後ろに護衛をかねてついていた。


 ……なんて言うとカッコイイが、実態はただのお散歩だった。

 なぜなら俺たちの間にはスノーがいて、三人手をつないで雑談しつつ、のんびりまったり歩いているという状態なのだから。


 朱鳥国政府からのプロフェッショナルが尾けてきているのは、俺にもとうにわかっていた。

 イザークは今でこそ『自称王子様』だが、いずれ朱鳥がサリュートを国家承認すればホンモノの王子様となる身の上だ。それを守る、というのが名目なのだろう。

 しかしその人数はけして多くはないし、身の隠し方も雑。むしろ刺さるような視線を『俺たちに』感じさせている感じすらする。

 彼らはどちらかというと、俺たちチーム・ユキマイに『妙なことをするな』と圧をかけるため、派遣されているのだと考えられた。


 だが残念なことに俺は、まったく脅威を感じなかった。

 なぜなら、“歩く軍隊”といっても過言でないユキシロの警備員たちが、さらにさりげなくガードしてくれていることがわかっているからだ。

 そもそも、妙なことなんかする気もないのだし。

 心強い仲間たちに感謝しつつ、俺たちはしばし、さわやかな秋の日のお散歩を楽しませてもらうことにした。


 ニコニコしながらスノーが言う。

「いいひとね、イザークお兄ちゃんて!

 サキが冷気でガクブルだったの見て、それで銭湯っていってくれたのよ。

 ティアお姉ちゃんが汗、気にしてるのもわかってて。

 いっそおむこさんにしてあげてもいーかなー、なんて☆」

「っ?!」

「ふふっ、じょうだんよ。

 イザークお兄ちゃんにはもう好きな人がいるわ。まだ、自分で気付いてないけどね」

「……マジ?」

「やっぱルナさん……?」

「あたし、こーゆーのはナイショにするって決めてるの!

 じゃないと不公平になっちゃうもん。誰にとは言わないけど☆」

 いたずらっぽく笑うスノー。気になる、それはめっちゃ気になるぞ。

 ナナっちもなんだか気になる様子。

「お、もしかしてナナっち、気になる人いるのか? ルナさん?」

「えっ、ちっ違うよ!

 ルナさんはなんていうかこう……妹みたいっていうかさ……

 ルナさんも俺のことは、お兄さんみたいって言ってるし」

「だからサクがお前にゃ優しいのか……」

 うん、すごく納得した。

 しかしここまできっぱりルナさんを『妹みたい』といいきれるとは、いかに前々から年上がタイプだったとはいえ、ただごとではない。

 もしかして、すでに気になる人がいるのか。俺はストレートに聞いてみた。

「じゃあさ、だれが気になるんだよ? もしかして恵理子さん?」

「恵理子さん婚約してるってさ」

「マジ?!

 じゃあ、シャサさん? ゆきさん? 渡辺さん?」

「お姉さんたちみたいっていうか……」

「そうか! お玉さん!」

「いくらなんでも年上すぎだろ!!」

「っていうと……そうか、もしかして」

「ミーコは年下以前に猫ちゃんだよ?」

「っ……スノー」

「妹だから。」

 ナナっちは優しくニッコリ。スノーからは足を踏まれた。

「みゃああ!」

「なんかいまあたしとしてはなっとくいかないチョイスをきいたわ!」

「ス、スミマセン……」

 うう、スノーのやつ。

 悠久のときをわたった女神であるかとおもえば、こんなふうに四歳児になる。

 扱い難しすぎだろ。まあ、惚れた弱みで逆らえないが。

「じょせいにねんれいのはなしはNGなのよ!

 でもサキがそんなザンネン男でいてくれたら、あたしもライバルが減るからいいけどね!」

「あはは。

 ……ハナシ戻すとさ。

 じつは俺、まだそんな気持ちになれてない、って言うか……

 ごめんな、せっかく楽しい話ふってくれたのに、申し訳ないけど」

「あ、……」


 そういわれてみればそうだ。

 俺がユキシロで優しい皆に囲まれているあいだ、ナナっちはひとりアズールの支配下で、作戦行動に利用されていたのだ。

 スマホなんかも取り上げられて、当然外出も自由にできず……

 ロク兄さんたちの無事も心配しながら、辛い日々を送っていたのだ。


「……ごめん、無神経だった」

「あっ、そういうんじゃなくて。

 確かに自由はほとんどなくて、ロクにいのことも心配だったけど……

 おやじたちも心配してくれて、いろいろ取り計らってくれたし。

 それにあいつも言ってたとおり、あいつ俺に暴力振るったりセクハラしたりとか、一切なかったんだ。

 まあ馬鹿にはされたし、なんか頭撫でたりとかベタベタしてこられたりもしたけどさ」

「それセクハラだろりっぱな!」

「いや、そこまでではなかった。と思う。

 ……あいつとナナキって、もしかして仲よかったんじゃないのかな。

 たんに、上司と部下ってだけじゃなく」

「それはないだろ!

 だって、友達だったやつを馬鹿にしたり、あんなふうに酷い目にあわせたり……

 俺だったら考えられねえよ」

「そっか……

 まあ、そんなわけなんだ。

 そのあともいろいろあったし、気持ちの整理とかつけるのに、ちょっと時間がかかってるんだよ。

 だいじょぶ。あとほんのちょっとだよ。

 俺には、おまえたちがいるから」


 ナナっちはにっこり笑ってくれた。

 スノーは、黙って微笑んでいた。


 * * * * *


 サク(と警備の人たち)は、イザークたちをホテルに、鹿目さんを駅に送っていった。

 戻ってきたらルナさんや俺たちと一緒に、明日の打ち合わせだ。

 明日はイザークの来ユキマイ歓迎レセプションが開かれる。

 夜は鹿目さんも一緒の歓迎会だし、調整することがいろいろあるのだ。


 その間に、ナナっちとスノーは、ロク兄さんが取りまとめてくれていた現場からの報告を、報告書としてまとめ……

 俺は今後の遺跡探索についての打ち合わせに向かった。

 もっとも俺の転属は予想済みだったらしく、俺サイズの装備なんかはすでにそろえられていたし、手順といってもチームリーダー石川さんの『お前はまずは見学だ、余計なことはせず大人しくしてろ』の一言くらいしかなく、あっさりと終わってしまった。


 のだが。

 ほんとうに大変だったのは、その後だった。


 ことがおきたのは、ミーティングルームを出ようとしたまさにそのとき。

 出待ちよろしく待ち構えていたのは、仕上がったばかりの俺のスーツを手にしたしあな(相変わらずのゴスロリだ)と、数名の女子社員たち。

「面会です! これ着ていますぐ製薬部にっ! 急いでください此花さん!」

 彼女らの手で強引に、俺はミーティングルームに押し込まれていく。

 これは――剥かれる!

 直感した俺は思わず、まだ近くを歩いていた石川さんに助けを求めた。

「ちょ、まっ、ちょっ! たすけて、たすけて石川さああん!!」

 果たして石川さんは……

 生ぬるーい目で俺を見ると、ふうっとニヒルなため息をついて、きびすを返した。

「うそおお?! いやああ!! みすてないでちょっちょっわ――!!」

「はいできたっ! それじゃあいきますよ。しあなさん!!」

 まさしく秒速でお召し替えを完了させられた俺の前に、開かれたのはロッカーの扉。

 そして俺の襟首を引っつかむのはしあなさん。

「観念しろ、さっくん。お前に拒否る権利などない。

『イブニングウォーク』ははじめてだろうが、急いでいるから我慢しろ」

 悪役っぷりがまたまた加速したお言葉とともに、ロッカーのなかへ引きずり込まれる!

 むぎゅっと無理やりドアを閉められ、薄闇のなか数秒の落下感に耐えれば、そこはもう製薬部のミーティングルーム。

 照明を落としたままのそこにすたんと着地したとき、俺は、おもわず呟いていた。

「……りふじんだ」

 と。

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