STEP2-0 かみのこ「サクレア」ものがたり(1)~王さまになったこねこ~
2019.10.07 改稿いたしました!
(ラスト二文だけですが^^;)
むかしむかし。とある野原のまんなかに。
ちいさなちいさな、まずしい村がありました。
そこは冬にはとてもさむくなり、雪がたくさんふります。
けれど、村の人たちはがんばってお米ややさいを作り、みんなで助けあってくらしていました。
けがをしてひとりぼっちのこねこをみつけたときには、みんなで優しくてあてをして、村のなかまにしてあげました。
そうやって、まずしいながらも、みんななかよく、たのしくくらしておりました。
けれど、その年のこと。その村に「かんばつ」がやってきました。
雨がぜんぜんふらなくて、井戸や小川はひあがって、田んぼや畑はからからです。
このままでは、だいじに育ててきたお米ややさいも、かれてしまいます。
村の人たちはみんな、ひっしにがんばりました。
遠くの川から、水をくんできては田んぼにまきます。
でも、そんなのじゃちっともたりません。
ひろわれたこねこのサクレアも、小さなこねこなりにがんばりました。
川で毛皮をぬらしては、畑にもどって、ぷるぷる、小さなからだをふるわせて、すこしでもやさいに水をあげようとしました。
それでも、ぜんぜんたりません。
サクレアはそらをあおいで、みぃ、みぃとなきました。
どうしよう。ぼくはぜんぜんちからになれない。
かいぬしのお兄さんたちは、ひっしで水をはこんでる。
かいぬしのお姉さんたちは、水の神様に祈り続けてる。
まいにちまいにち、がんばって、みんな、もう倒れてしまいそうなのに。
ぼくをたすけてくれたひとたちを、ぼくはたすけてあげられない。
こんな小さな、よわいからだじゃ、ぼくはなんにもしてあげられない。
かなしくってくやしくて、サクレアはぽろぽろとなみだをながしました。
ぼくも、もっとちからがほしい。いのちのごおんを、かえしたい、と。
そのときです。
サクレアのなみだがしみた畑は、みるみるうるおい、しおれていたやさいはあっというまに元気をとりもどしたのです。
いつのまにか、田んぼには水があふれ、お米のいなほもぴんと頭をもたげています。
そのとき田んぼをのぞき込んだサクレアは、あっと声を上げました。
田んぼにたたえられた水面には――
お兄さんほどじゃないけれど、こねこよりはずうっと大きなからだ。そして、お姉さんのような優しいお顔をもった、ひとりのにんげんがうつっていたのです。
ふしぎなことに、みんながかわいいかわいいといってくれた、わかくさいろのおみみとしっぽはそのままでしたが、これはこれでりっぱなものです。
やったー、これでぼくもにんげんだ。これでみんなのおやくにたてる!
うれしさにぴょんぴょん、とびはねるサクレアのまわりには、いままでみたことのない、白いかわいいお花が、いくつもいくつも咲いていました。
その年、まずしかった村は、これまででいちばんの大豊作になりました。
あぜみちに咲いた白いお花は、きずや病気によくきく薬草であることがわかり、みんなはもっとよろこびました。
それからその村は、毎年豊作になりました。
村のひとたちは、たくさんとれたやさいやお米、白いお花で作った薬を、ほかの村や町のひとたちに売ったり、わけてあげたりして、もっとたくさんのひとたちが笑顔になりました。
やがて冬の寒さも和らいで、ずっとくらしやすくなった村の周りには、たくさんの人が住むようになりました。
寒くてさびしいユキマイの野原は、豊かに実る田んぼと畑と、たくさんのひとの笑顔があふれる、しあわせのくにになったのでした。
そしてサクレアは、しあわせのくにをまもる王さまになりました。
やさしい王さまになったサクレアは、そのあとも国のみんなや植物たちを元気にしてあげて、もっともっとみんなをしあわせにしてあげましたとさ。
~つづく~