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咲也・此花STEPS!! 2~訳ありフリーターだった俺が伝説の砂漠で一国一城の『にゃるじ』になるまで!~  作者: 日向 るきあ
<後半>STEP1.“やくたたず”の午後、舞い降りる天使

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STEP1-4 ~王さまの手、王さまの心~

「はああもう……チカケン戦よかよっぽどびびった……」

「ふふっ、お疲れ。

 サクやんが元気になって、ほんとよかった。

 イサがフォローしてくれたから大丈夫なんじゃないかなっては思ってたけど、やっぱいま聞いといてよかったよ」


 あの、恐怖のエンカウントバトル(しかもラスボス)からの生還を果たしたのち。

 イサはほかのやつと約束しているというので解散。『メシどう?』メールをくれていたナナっちと合流し、二人でいっしょに社食に向かった。


 ナナっちは、昼間の件を心配してくれていた。

 やつにとっては初の役員会議だったというのに、隣でいきなり変なこと言い出しちまって、あれはほんとに悪かった。

 社食への道中そのことを謝り、さきの顛末を話したら、ほっとした笑顔でねぎらってくれた。


 本当に本当に俺は、友達に恵まれている。改めて実感した。

 だがだからこそ、心配になった。

 適度な混み具合の社食の中、よさそうな席を物色しつつ、聞いてみた。


「そういや、そっちどうだったよ?

 あいだにスノーもはさむけど、それでもルナさんとカップル役だろ。

 サクのやつあの調子でブチ切れまくったりしてたんじゃ……」

「いや、それはなかったよ。

 ぜんぜんふつうに冷静でさ、いろいろいいアイデア出してくれた。

 キャラクターがふえたのを機に、アパレルブランド立ち上げるとかさ!」

「マジ……?」


 思わず俺はナナっちを凝視していた。

 ナナっちはいつもの穏やかな笑顔。嘘を言っているようには、見えない。

 ということは、本当なのか。あの末期シスコン男が。


「やっぱ、スノーになんか言われてたせいなのかな……

 それにしてはさっきは追っかけまわされたしなあ……」

「これは推測だけどさ、やっぱシゴトだったからじゃないかな?

 メイちゃんは社長だろ? シゴトのために、自分を抑える自制心は人一倍あると思うよ」

「そっ……かなー……?」

 俺もーなんども仕事中にチョップされてる気がするけど、もしかして幻覚だったのだろうか。

「それに俺はまだ、メイちゃんと会って日が浅いだろ?

 前世から仲間だったサクやんたちと、扱いは違って当たり前だと思うんだ。

 ……ちょっとうらやましいけどさ」

「いやっそのまんまのほうがいいって! この件に関してだけは絶対!!

 お前とロク兄さん以外の男全員そういうから!!」

 あんだけサクにうっとりしまくってるロク兄さんのことだ、もしかしたら俺がチョップくらってるとこなんかも羨んでたり……なんて、もちろん冗談だ。これはあくまで、ツッコミまちのツッコミボケだ。

 しかしナナっちから帰ってきたのは、深ーい納得の声とうなずきだった。

「あー……。

 たしかにロクにい、たまーにうらやましそうだなー……」

「マジにっ?!

 うあああ……そろそろリコンストラクションいかなきゃなのかあ……」

 サクの『カリスマ』はぶっちゃけチートだ。ロク兄さんはいまだにそいつの影響下にあるらしい。

 ご本人を見る限りは毎日とってもしあわせそーなんだが、やっぱそのままにしとくのはまずい気がする。主にロク兄さんの人生航路的に。

「んー。それはだいじょぶじゃないかな。

 実はロクにい、ゆきさんといいかんじなんだ」

「マジで?!」

「うん。ゆきさんと話してるとき、ふたりともすっごいいい顔してるもん!」

「お似合いかもー!」

「だよなー!」

「ってことは、将来的にゆきさんがナナっちのお姉さんか……

 そして、妹が、スノー……」


 ――俺はいままさに大変なことに気が付いた。


 姉貴がいる俺から言わせれば、リアルの女きょうだいというものは特に素晴らしいものではない。かといってすごく悪くもないし……まあ、なんというか、『普通』のものだ。

 だが、ゆきさんやスノーのような『特別』な女子がそれだったなら話はまったく別だ!

 スノーが妹になったら俺は泣くがスノーの『ような』妹だったらバンザイだ!

 ゆきさんがお姉さんになってくれたらもはや死亡フラグを疑う!

 ひとことでいえば、世の男としてみりゃこれはもーうらやまけしから! もしも俺がナナっちだったら、嫉妬からいちゃもんのひとつふたつつけてこられたってまーしかたねえよなとあたたかく聞き流してやれる自信がある(三分ぐらいなら)!


 だがそれは、文句を言われるのが俺の場合だ。

 ナナっちはそんな、不埒なことを考えるような奴じゃない。そのナナっちがいわれのない非難にさらされるなんざ、友として断じてほうってなんかおけない!!


「ナナっち!! お前は俺が守ってやるからな!!

 嫉妬に狂った男どもが文句言ってきたって、絶対守ってやるんだから!!」

 だが意気込む俺に対し、ナナっちはにっこり微笑んで――

「なにいってんだよサクやん。

 サクやんはスノーさんの婚約者で、つまりは俺の弟になるんだよ。

 弟や妹を守るのは兄貴の役目。

 だってのに文句の一つや二つ、なんてことないよ。

 俺だって、いつまでもうじうじしていたガキじゃないんだ。そのくらいなら任せてよ」

 ――あっさり余裕で返されてしまった。


 いや、だからって引っ込みはつかない!

 だって俺はまた見てしまっんだ。傷ついたココロを押し隠す、ナナっちのあの悲しい笑顔を。それも、たったの数日前に。

 いや、そんときと比べたらこんなんどーってことないちっさな問題だろうけど、高校入って2.5年、ずーっとナナっちを守ってきた自称・兄貴分としてはやっぱり、どうしたって心配になっちまう。


「で、でもっ、スノーはお前の神さまだし、俺はその半身だから!」

「俺はスノーさんとその巫女であるルーナさんの騎士だよ。当然お前もまもれなきゃだろ?」

「…………。」

 はい、完璧な返り討ちでした。

 俺はまたしてもすぐそこの席で人間スライムになってしまった。



「……まじめなはなし。

 今の俺があるのはさ。お前がともだちになってくれたおかげなんだ。

 学校で皆と仲良くなれたのも。おやじたちと和解できたのも」


 けれどそんな俺のうえに、優しい言葉がふってきた。


「みんなや、ユキシロとの縁をつないでくれた、お前のおかげなんだ。

 しってる? おやじさ、亜貴さんのお父さんと仲良くなったんだよ。

 五条さんたちも、しあなさんたちとすっかり仲良くなったって。

 みんなみんな、お前が優しく手を差し伸べたおかげなんだ」


 いつものあったかい手が、ぬくもりを伝えるように頭に置かれる。

 子供の頃、俺が泣いてるとおふくろがしてくれたみたいに、優しくゆっくり撫でてくれる。


「お前はいまのまま――優しくみんなを見守って――ほっとけなく思ったら手を伸ばしてくれれば、それでいいんだよ。

 おまえは、おれたちの心の中では、とっくに立派な王さまだよ。

 だから、まもりたい。

 すくなくとも俺は、そう思ってる」


 首をねじってナナっちを見れば、その目はとてもあったかで。

 俺の目から、どっと汗が出てきた。

 しかも、なんだか止まらない。

「はい『汗拭き』。

 定食、代わりにとってくるよ。どれがいい?」

「……ナナっちとおんなじの」

「了解。その席そのままとっといてね」

「……ん」

 できすぎるくらいにできた相棒は、俺にさっとハンカチを握らせると、俺が差し出した社員証を手にカウンターへと歩いていった。


 俺が守る、なんていっといて、情けない気がした。

 けれど、どうしても目からの汗が止まらない。

 だから、今は甘えることにした。



 心の中だけじゃない、心の外でも頼れるような、立派で優しい王さまになろう。

 一日も、一時間でもはやく。

 そのために、もっともっとがんばろう。

 勉強に訓練。仕事も、仲間たちのことも。

 わからないことがあったら聞いて、できるようになって。

 そうしてもっと、みんなの力になろう。

 ナナっちのハンカチに顔をうずめて、俺は再び決意を固めた。

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