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咲也・此花STEPS!! 2~訳ありフリーターだった俺が伝説の砂漠で一国一城の『にゃるじ』になるまで!~  作者: 日向 るきあ
<後半>STEP1.“やくたたず”の午後、舞い降りる天使

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STEP1-2 ~勇者誕生! 銀の天使は謎をささやく~

 まえにも、こういうことがあった。

 俺が、サクレアだった頃。

 みんなの手で唯聖殿から助け出され、辺境の小さな村で静養していた頃のことだ。

 ある日俺を呼び出して、ルナさんは言ってきた。

『あなたをまもるために、こんどこそ全てをかけたいの。だから、……』

 こんなふうに、切なげに目をうるませて。

 華奢な両手を胸の前に握り締め、ほほを染めて必死に。


 そのときは断らざるを得なかった。理由は、俺が余命いくばくもなかったからだ。

 けど今は、別の理由がある。

 俺の半身である、スノー。人としての名を、七瀬花菜恵ななせ はなえという少女。

 おととい人としての体を得、公式には婚約者、ということになっている。

 もちろん俺と彼女の間には、恋愛感情がある。

 そのことは、ルナさんだってわかっているはずだ。

 それでもあえて言い出した彼女に俺は、一体、どう答えればいいのだろう?


「サ~キ~?」

 そのとき、ばたん。会議室のドアが開いた。うわさをすれば影というべきか。そこに仁王立ちしているのはそう、スノーだった!

 すみれ色を基調としたシックなワンピース、同色の靴とリボンで装って、背後にはオレンジ色のちいさなリュック……を捧げ持ったスーツメン。

 これで縦巻きロールにでもしていたら、ちょっとした“あくやくれいじょう”だ。

「うちでお勉強おわったからきてみれば、これはどーいうことなのかしら?」

「あ、あのいえ、それはその」

「そんっな煮えきらないタイドでいるなら、」

 ずんずんと会議室にふみこんできたスノーは、やおらぴょんっと地を蹴った!

「ルナおねーちゃんはあたしがもらうんだから――!!」

 そして彼女がぎゅっとしたのは、俺ではなくてルナさんだった。

「え――?!」


「ほんとだからねー!

 シィおねーちゃんもゆきおねーちゃんも、奈々緒にいさまもぜーんぶあたしのおよめさんにしちゃうんだから――!!」

「ええっ?!」「ハナっち?!」

 驚くルナさんシャサさん……あわわすみませんごめんなさい。

「あらあら☆」

 ころころ笑う余裕のゆきさん。ごめ……んはなくて大丈夫か。

「ってなんで俺?!」

 あぜんとしてるナナっち、いやもうほんとごめん。

「…………」

 テーブルに8の字描いていじけだすイサ。おいちょっと待て。

「なるほど、悪くないかも知れんな」

「ってなにが??」

 そしてひとり、うなずくサク。逆になんでこいつはぜんぜん冷静なんだろう。

「『ユキマイ国』のキャラクター展開だ。

 虫除けと女性層への訴求もかね、『ユキマイの巫女を護る若き騎士』――いうなれば『勇者』のキャラクターがひとりほしかったところだ。

 当然、適任は奈々緒だ。

 しかしそうなると今度は距離感が難しくなってくる。また若者二人だけでは家族層に対しての訴求力がいまいち弱い。そこで、スノーだ」

「はあ」

 さくさくと、まるで当然のようにして、理路整然たる説明が始まってしまった。

「二人が力を合わせて護る幼子、神樹の女神のスノー。

 二人の間にやつをはさめば、距離感対策、家族層向け訴求力の強化、ともに充足することができる。

 さいわい奈々緒はあの動画で、幾度も家族愛を訴えていたからな。そういう意味でもちょうどいい」

「はあ…………。」

 ぐうの音もでないとはこのことだ。室内にも反対の気配はない。

 なにより本人たちが反対してない。

「え……と。ちょっと難しそうだけど、俺で、役に立てるなら……」

「わるくないアイデアね。たのまれてあげなくもないわ!

 ただし条件があるわよ。それは……」

 スノーがサクを手招きし、こしょこしょこしょ、と耳打ちする。

「っは?!」

 とたん、それまで冷静だったサクが、目をむいて驚きの声をあげた。

「お、お、おまえ、いったいなにを……」

「すぐにとはいわないわ。

 わたしはスノーフレークス。永遠にだって待ってあげられる。

 でもね、いまのあんたたちはいちおうニンゲンなんだから。

 とりあえず、あと100年以内でなんとかしなさい。いいわね?」

「っ……」


 言葉を失うサクの横で、ぱんっとスノーが手を打った。

「さって! それじゃーうちあわせしましょ!

 まずはあたしと兄さまの衣装づくりよ!!」

「えーと」

「ああ、サキはもどってていいわよ。

 役に立たないなら立つように、なんかおしごとさがしてらっしゃい。解散!」

 ……って、なんでスノーが仕切ってるんだろう。それもなんかすっごいなちゅらるに。

 だが実際問題として、議題は出尽くしている。役員会議はそのまま解散となった。

「んっじゃーあたしも警備もどるね。おつかれー!」

 シャサさんがんーっと伸びをしてドアを出て行く。

「ふああ……少し仮眠するわ。宿題、聞きたいとこはまた後でね」

「だいじょぶですよ、ごゆっくり」

 あくびまじりのゆきさんも優雅に立ち上がる。

 夜族であるゆきさんにとってこの時間は、俺たちにとっての早朝にあたる。

 昨日遅かった(=夜族以外にとっては朝早かった、になる)こともあり、少し仮眠を取りたいようだ。

 俺はもちろん、紳士的にねぎらって見送って……

 さてどうしようと考え始めたそのとき、茶髪の天使が舞い降りた。

「俺もまだデスクワークたんまり残ってっから抜けるわー。

 そこの彼、手伝ってくれるかい?(キラーン☆)」

「ココロの友よー!」

 いつもお茶目なイサらしく、無駄にナンパ風にしてのお誘いだったが、もちろん俺は飛びついた。


 ……が。

 ここで俺ははたと気付いた。さっきのことだ。

 ルナさんにあんな風に見つめられて、あの末期シスコンがタダで収まるわけがない!

 はたして無事に、逃げられるだろうか。

 おそるおそるサクの方を見れば、奴もこちらを見ていて――

 なぜか、慌てたように目をそらされた。


 なんだろう。ひょっとしてさっき、スノーが何か言ったことに関係あるのだろうか。

 ほとぼりが冷めたら聞いてみるかな。いやそれも危険かな……

 ともあれ命拾いに安堵しながら、俺はイサについて会議室を出た。


 * * * * *

スノー……スノーフレークス/七瀬ななせ 花菜恵はなえ

 Former Name:--

 Class:サクレアの半身、『七瀬の八番目』

 Element:植物(種族特性)・生命(種族特性・先天)・伝心(先天取得&後天強化)

 Battle Type:?

 Skill Name:元気になーれ!、ココロコトバ、きゅーきょくしんけん

 Belongs to:ユキシロ製薬『ユキマイ王国復活プロジェクト』キャンペーンガール

 Strain:神樹の女神

 Hair Color:白銀

 Eye Color:緑

古代の植物スノーフレークスの意識体。ナナっちの妹にして、禁忌至聖の存在『七瀬の八番目』として転生した。そのときのいきさつからアズールを「つくりの父親」と考えている。

『悠久のときをわたった女神であるかと思えばみため相応の四歳児になる』フリーダム無双女子。サキとは愛し合う婚約者。

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