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咲也・此花STEPS!! 2~訳ありフリーターだった俺が伝説の砂漠で一国一城の『にゃるじ』になるまで!~  作者: 日向 るきあ
STEP7.Beautiful Name~ナマエハ、キズナ~

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STEP7-3 ~逆転? いいえ、確定勝ちです!~

「お前ら大事なこと忘れてない?

 そいつは七瀬の八番目だ。始まるぜ、もうすぐに」

 やつはにたりと笑っている。

 その言葉を裏書するように、じわり、スノーの体が水に覆われる。

「やってみせるッ!

 花菜恵はなえはわが子だ! 命に代えても、守ってみせる――!!」

 やはり、吾朗おじさんは朱鳥で一番怖い男だったようだ。

 すさまじい気迫とともに、おじさんの周りに渦巻く水が吹き上がる。

 まるでこれこそが、八番目のもたらす水の厄災、そのものであるかのような勢いで。

「みんな、いくよ!」

「チームユキシロ・スタンバイ!」

 ナナっちが、シャサさんが声を飛ばし、七瀬とユキシロがそれぞれ支援の体制に入る。

 俺も吾朗おじさんの援護に戻りたかったが、いまは目の前に信用ならないクソヤロウがいる。

 警戒しながら、構えを取った。


「いいねいいねえ。これならお前をすぐ拉致れるわ。

 ザンネンだけどナナちんは後日にすっかなー。なーに、お前を人質にすりゃ、あいつは青筋立ててすっ飛んでくるわ。

 そら、見とこーぜ。天国のカノジョちゃんに見せらんねえことになる前にな!」

「ふざっけんな!」

 天国の、ていうかスノーはいま、目の前にいるのだ。

 スノーの力の制御が安定するまで、俺はこいつをこれ以上近寄らせちゃいけない!

 俺は全身にパワーをめぐらせる。不覚は取ってはいけないが、殺してもいけない。俺にはリコンストラクションがあるとはいえ、それが俺以外を蘇生できるかはわからないのだ。



『えーとさ。

 やっぱ、言わなきゃダメみたいだね』



「ふぇ?」

 そのとき心の中に響いてきた声に、俺はあれっと固まった。

 声自体には覚えがある。さっきの、だれか――少女の声だ。

 しかし、あきれたようなその調子。もしかして俺、なんかまずいことしてたのでしょうか。


『いや。そもそもね。

 あなたあたしを“誰”だって思ってる?』

『……えーと、そのー、どなたさまで……』

『スノーフレークスよっ!

 まったく、サキのにぶちん! ぼけぼけにゃんこ!

 カノジョの声ぐらい一発で気付いてよねっ! もうっ!』

 思わず声に出して叫んでいた。

「スノー?!

 っていうかお前大丈夫なのか?! 八番目のチカラが……」

 俺は驚いた。

 こんなことは初めてだった。スノーがスマホを介さず、直接俺に呼びかけてくるなんて。

 いや、それはうれしい。しかし悠長に話をしていられる状況なのだろうか? 荒ぶる八番目のチカラは、彼女を苦しめてはいないのだろうか?

『サキってば……。

 吾朗父さま、兄さまたち。

 わたしは大丈夫だよ。チカラ、解除して。

 んー、まどろっこしいなあ。ちょっと失礼しちゃうよ?』


 スノーの声が、はあっとため息をつく。

 そしておじさんたちに呼びかければ、白い光が背後からあふれた!


「あ……?」

 アズールがまたしてもぽかーんとしている。

 ふたたび俺も振り向けば、やはり驚いた様子の皆がいて。

 その真ん中に、白く美しい少女がいた。


 年のころは4、5歳程度か。

 ゆるく波打つ銀の髪を腰まで垂らし、きらきらとした緑の瞳、抜けるように白い肌。

 子供ながらにすらりとした体躯は白く、シンプルなワンピースで包まれているが、おさなくみずみずしい足元ははだし。

 だが、それがかえって、彼女を神聖なものに見せていた。


 彼女はすたすたと歩いてきて、小さな右手で俺の手を握った。

 そして俺に向け、桜の花のようなくちびるをとがらせる。

 そのまま愛くるしくまくし立てれば、玉の鈴を転がすような声が、快く耳をくすぐった。


「ほんっとーに、サキはうっかりさんなんだからっ。

『わたし』がなにものなのか、すっかりかっぽりわすれてるし!

 それにあたしというものがありながら、すーぐきれいなお姉さんにでれでれしたり、かわいいお兄さんといちゃいちゃしたりするんだもん! このたらし! でれでれにゃんこめ!」

「……え゛」

 あのー、咲也さんいまなんか、とっても聞き捨てなっちゃいけないお言葉を耳にした気がするのですが。

「でもきょうからはそーはいかないんだから。

 サキがだれかとらぶらぶしてたら、その三倍あたしが甘えちゃうんだ!

 あんたなんかにわたさないからね、くそおやじ」

 俺に抱きついた彼女はそして、べーっとアズールに舌を出す。

 対して『くそおやじ』は、しばし絶句したのちぼーぜんと問う。

「……えーと。おじょうちゃん、だれ?」

 皮肉なことだが、このときほど奴がまともな人間に見えたことはなかった。

 スノーはさらに口を尖らせ食って掛かる。

「だれってちょっとー! ずいぶんなごあいさつねっ、『つくりの娘』に対して!

 わたしは『スノーフレークス』! あんたがそうしたんでしょ、名前をつけて!」

「はあ?」

 が、その内容が謎だった。

 アズールはわかっていない様子。うん、俺もわかりません。

 再び俺と右手をつなぎ、彼女は可愛くため息をつく。

「はあっ……

 あんたさ、ほんとはおもってないんでしょ。ソーマおじさんのせーじゃないって。

 ほんとのとこはわかってるんだ。おじさんが『アズール』って名前付けたから、生まれた因果が『あんた』を“再生”したってこと。

 それとおんなじ。あんたがこの体に『スノーフレークス』の名をつけたから、『わたし』はここに受肉したの。あんたと同様の因果に導かれてね」

「……は?」

 奴はぴんときてないようす。もちろん俺もぴんと来ない。

 スノーはこめかみに左のひとさし指を押し付け、更なる説明に挑む。

「んー、つまりさぁ……

 順を追って説明するよ?

 あんたは“七瀬の八番目”としてこの肉体を作ったわね。

 目的は、八番目のもつ神の力を暴走させて邪魔者を消す、もしくはそれを七瀬への脅しとして使い、七瀬を意のままにするため。

 あんたはそこで、さらに欲をかいたわ。

 大大大好きなサキを確実に巻き込むため、管理名としてカノジョであるわたし、『スノーフレークス』の名をつけた。

 結果、この肉体と『わたし』との間に因果関係が生まれ、この肉体をつかさどる魂として、『わたし』が喚ばれ、宿ってしまった。

 ただの人間じゃなく――

 神樹・スノーフレークスの意識体、すなわち神であるこの『わたし』がね。

 神が神の力を制御できないなんて、そんなお馬鹿なことってないよね?

 当然の帰結として、あんたの思惑ははずれた。『わたし』は自力で八番目の力を完全制御し、ここに無事に立っている。

 ポイントはどこかわかる?

 あんたはサキをひっかけるためだけに、この体にこの名をつけたつもりだろうけど、それが間違いだったということよ。

 ひとことでいえば、あんたの作戦はあんたの欲ばった選択で最初っから瓦解してたの!

 以上! 説明おわりっ!」

 そのとき地下研究室内は、同じひとつの音に満たされた。すなわち――

「ええええ――!!」

「ま、でも感謝するわ。あんたがいろいろやってくれたおかげで、あたしはずっと早くひとの体を持つことができた。だいすきなサキとこうすることができるようになった。

 だから、ゆるしてあげる。サキや奈々緒兄さまを拉致ろうとしたこと。吾朗父さまたちをいじめたこと。

 あたしの気持ちが変わらないうちに、命乞いして改心するか、こっから消えるか選ばせたげるっ!」

 スノーの左手の中に、白い光が膨れ上がる。

 俺は思った。それぜんぜん許してない、許してないよスノーさん。

 ほら、アズールだってびびってる。

「お前、誰に似たんだよ……俺だってもちっと優しいぜ……」

「はい3!」

「いきなり3かよ!」

「2! 1! 消えて!」

「早えええ?!」

 ぶわりと光が膨れ上がる。直感した。ヤバいヤツだ。これ完全にヤバいヤツだ。

 行使者のスノー本人はまだしも、側で手をつながれてる俺とかとばっちりで確実に消滅する!

「ストップスノー俺まで死ぬ――!!」

「いきかえればいいじゃない。」

「こともなげにいわないで――?!」

 必死に叫べば、スノーフレークスは究極神拳(仮)をぶっ放すのをやめてくれた。

 もっとも、チャージしたパワーはいまだアズールに向けられている。

「もー、しょーがないなあ。サキのあまえんぼさん☆」

「それ甘えにカウントしちゃいや――!!」

「へーいへい、ごっつぁんですよ。

 サクレア。ひとつ貸しにしといてやるぜ。

 今度は拉致ってやっからな! あばよ!!」

 と、立ち直ったらしいアズールは捨て台詞を残し、何かを床にたたきつけた。

 くるり、黒いわっかが床から立ち上がり、奴の姿を包み隠す。

 一瞬後、黒の円柱が消え去ると、すでにそこに奴の姿はなかった。

2019.04.19

 ご指摘頂き、記述足らずの部分を変更いたしました。

 あわせて、7-1の伏線部分も変更させていただきました。

 ありがとうございました!


 そのときまたしても、心の中に声が響いた。

 さきほどアドバイスをくれたのと同じのようだが……そういや、誰だっけこれ?

「ふぇ?」

 そのとき心の中に響いてきた声に、俺はあれっと固まった。

 声自体には覚えがある。さっきの、だれか――少女の声だ。

 しかし、あきれたようなその調子。もしかして俺、なんかまずいことしてたのでしょうか。


『いや。そもそもね。

 あなたあたしを“誰”だって思ってる?』

『……えーと、そのー、どなたさまで……』


あわせてこちらも変更いたしました。

 スノーの声があきれたようにため息をつく。

 そしておじさんたちに呼びかけると、白い光が背後からあふれた!

 スノーの声が、はあっとため息をつく。

 そしておじさんたちに呼びかければ、白い光が背後からあふれた!

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