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咲也・此花STEPS!! 2~訳ありフリーターだった俺が伝説の砂漠で一国一城の『にゃるじ』になるまで!~  作者: 日向 るきあ
STEP7.Beautiful Name~ナマエハ、キズナ~

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STEP7-1 ~ふたりのゆうしゃはそれぞれのたたかいにおもむくようです!~

この部分、修正多いですね……ごめんなさい!

長くなってしまったので、2019.04.19にあとがき部分に移動させていただきました。

 予想外に予想外が積み重なり、一瞬頭が真っ白になった。


 あのどーみてもやばそーな野郎に体当たりする人がいたということ。

 それもみたかんじ、一般人。

 あまつさえやつを、梓と呼んで。

 自分を父と言って、いさめようとしていること。


 ただその人は、アズールにはぜんぜん似ていない。

 どちらかといえば温厚で、もう少し年齢を重ねたならば、カンペキなロマンスグレーのおじさまになりそうな感じだ。

 朱鳥人としては高めの身長に、わりとすらりとしたスタイルにしても、手足が長く、むしろやせぎすにすらみえるアズールとは系列が違う。


 そんな、正直他人にしか見えないひとが、父親と名乗り突撃してきた。

 俺はただ、あぜんぼうぜんと二人を見比べる。


 当のアズールはというと、不遜に不敵に笑って……いなかった!

 しりもちついたまま、その男性を見上げてぽかーんとしている。

「え……とォ、お父、上?」

 しかも“お父上”なんてまともな単語発してる!

 いやほんとお父さん? てことはもしかして、義理の? どうなってるのこれ。まさか亜貴のことおにいちゃん(以下略)ってのあれ、ジョークじゃなかった?

 混乱する俺をよそに、男性はアズールに向かい、全力で訴えつづける。

「梓。もう、おにいちゃんをいじめるな。

 お前の親は、この俺だ。

 お父さんに言いなさい。してほしいこと、してほしくないこと、全て。

 お前たちの不満も願いも、俺がぜんぶ受け止める。

 もう迷わない。どんなことをしてでも俺は、そんな父親でいてみせる!!」


 感動的……のはずだが、まさか過ぎる展開についていけなくなりかけたとき、しあなが俺の足を蹴った。

 同時に、ナナっちの声が飛び込んできた。

『サクやん。

 スノーさんのほうは、俺たちでがんばってみる。

 おまえは亜貴さんを助けてあげて!』

『わかった!』

 さっきもやってた、ココロを伝える力を使ったのだ。っていうかもう普通に使いこなしてるとか、さすがはナナっち。俺は同じように答えると全速力で、亜貴に駆け寄った。

「亜貴!」

 半身を起こして呆然としていた亜貴はしかし、俺を見るとびくっと身を縮めた。

「だれ……?」

「……え?」


 亜貴は、変な人を見る目で誰何してきた。

 だが、戸惑うその表情も、胸元で両手を握るしぐさも、なんというか……子供っぽい。

 もっというなら、小学校低学年の少年のようだ。

 どうなってるんだろう。戸惑っていると、また心の中に声。

『幼児退行させられてるわね。サキの記憶もだから飛んでる。

 優しく話しかけてあげて、サキ』

『サンクス!』


 さらりと滑り込んできたのは、ナナっちの声――ではなかった。

 鈴を振るような高く、愛らしい声はどことなく似ているが、そもそも女言葉だし。

 しかしこれだけはわかった、これはユキシロの誰かだ。

 今のだけでは誰だか判別つかなかったけど、あとで探してお礼をいうとしよう。

 そう、今はまず、亜貴のことだ。

 的確なアドバイスに感謝しつつ、俺は亜貴のまえにひざをついた。 ニッコリ笑って手を差し出す。はじめて会う親戚の子にするように。

 そして、そっと癒しの力を周囲に放った。

 亜貴が暖かく感じ、安心してくれるようにと願いをこめて。


「こわくないよ。俺はサキ。

 亜貴の味方で、友達だ」

「みか、た……ともだち……?」

 亜貴は依然、いぶかしげだ。そりゃそうか。街角でしらないおっさんがいきなり友達だ(ニッコリ)とか言ってきたら、俺なら通報する。

 だから、俺はさらに突き抜けちまうことにした。

 たとえ小学校低学年まで退行していても、この年代で男なら『ツイブレ』は確実にストライクゾーン。

 ならば俺には、必殺の手立てがある!


「ああ。

 俺は、かつてお前が助けた迷いネコだ。

 人の姿になって、お前を助けに来たんだよ!」


『ツイブレ』序盤には、主人公たちが一匹の迷い猫を助け、それがもとで勇者にスカウトされるというエピソードがある。

 そのときのセリフがこうだ……


『どばーんっ! ワガハイはお前たちに助けられた迷いネコだ。

 人の姿になって、お前たちをたすけにきたのだー!!』


 ……周囲からの視線はこのさい考えない考えない。


「ねこちゃん……!」

 はたして亜貴は、うん、と笑みを浮かべ、ひととびに俺に飛びついてきた。

「うっ、わっ、とっ……ふぎぎぎぃ――!!」

 これまたまるっきり子供の勢い。だが、亜貴はりっぱな成人男子だ。細身だが、背は俺より若干高い。つまり、重い。

 のけぞって、後ろにひっくり返りかけて、パワー全開で体を支える。

 もちろん、油断はしていない。しっかり亜貴をホールドし、俺のパワーで包み込み、アズールをにらんだままで後退した。


 奴はすでに立ち上がっていた。拾い上げたサングラスを手の中でもてあそびつつ、こちらをニヤニヤと見ている。

 やらせるもんか。床を蹴り、奴が踏み込んでも手が届かないところまでひととびに距離をあけた。


「へーえ。

 さすがはもふにゃんこ王、たいしたタラシっぷりだな。

 ま、いっか。それじゃ、こっちをどーん! だ!」

 対して奴は嘲り笑い、コンソールをさらに破壊した。

 小さな爆発が収まった後は、モニターもスイッチも、もはや原形をとどめていない。

 これでもう、亜貴が正気に戻っても、しあなが天才美少女であるとしても、水槽の機能をコントロールする役は果たせなくなった。

 あとは、ナナっちたちを信じ、任せるだけ。


 というかまず、こっちはこっちで、なんとかせねばならないのだ。

 万一ヤツに水槽を焼かれでもしたら、全てがおしまいになる。

 俺は亜貴と蒼馬さん、スノーの水槽を守りつつ、ヤツをどうにかせねばならない。

 どう動くべきか。亜貴をまずは誰かに預け……


 思考をめぐらせ始めたそのとき、ヤツが言い出した。

 サングラスを革ジャンに滑り込ませ、マジメな素顔を蒼馬さんに向けている。

「言っただろ、俺は3人も逃がせねえぞ。亜貴を連れて車で逃げろ」

「梓、お前は!」

「言っただろう、俺は……」

 なんとやつはふう、とため息をついて、なだめるかのような調子で言葉を継ぐ。

「すでに助かる手を打ってある。

 ……此花」

「……ああ」

 正直、戸惑わずにはいられない。こんな事態は初めてだ。ヤツがこんなにまともな調子で話すなんて。それも俺にまで、真っすぐな目を向けて。

 だが、だから俺はヤツが、まじめに二人を逃がそうとしていると思われた。

 俺はやつの言うとおり、亜貴をつれ、蒼馬さんに歩み寄った。

「え……おとう、さん? サキ……?」

「ごめんな亜貴。俺たちは、ちょっとばっかり急用ができた。

 実は俺は伝説の勇者でな。いますぐ、悪の大魔王を倒さなくちゃいけないんだ。

 お父さんといっしょに、安全なところで待っててくれ。

 お土産もって、帰ってくるから」

「えー!! だめだよ、おれもたたかう!

 おれ、やぞくなんだよ、つよいんだよ!!」

 亜貴はすっかり、やんちゃな少年の顔。

「そっか。じゃあ、俺の仲間を守ってくれるか。

 ユキシロ製薬、てとこにみんないる。

 俺の友達だって言えば、入れてくれるから」

 あそこならは安全だ。というかあそこ以上の避難場所を、俺は知らない。

「わかった、がんばる!! サキもがんばれよ!!

 えへへっ、おれたちふたりのゆーしゃだな! ばしょははなれても、いっしょにたたかう!」

「ああ。たのんだぞ!」

「おうっ!」

 にかっと笑った亜貴と俺は、がしっとこぶしを打ち合わせた。

「ほらおとーさんいくよっ! サキのなかまをまもりに!

 おとーさんもやぞくでつよいんだから、いっしょにたたかってくれよ、な!」

「……こんなふうで、いいのか……」

 うれしそうに袖を引かれて蒼馬さんは、驚いたように俺たちを見る。

「しかし、いいのですか、此花さん。我々は……」

「俺はユキシロの常務取締役だ。責任は、俺が取ります」

「ありがとうございます……!」


 東雲研究所は、政府内部の帝国残党とつながっているらしいと聞いてはいた。

 アズールが身内面してる、さらにこの言葉、ってことは、完全に確定だろう。

 つまり俺の決断は、自らの城に現役の敵幹部らを招きいれるということにほかならない。

 いかに、ここにいる蒼馬さんが、頭まで下げて俺に感謝を示してくれたとはいえ。


 俺の後ろで代表取締役社長がボソッとのたまう。

「お前そろそろ社長押し付けるぞ」

「やめてサクさんこわいこわい」

 一方でアズールは、奥のドアから蒼馬親子を送り出しつつ、こんな言葉をかけていた。

「父上よ。

 俺はあんたの息子じゃねえ。まして、あんたが名づけたから『アズール』になったわけでもねえ。

 ……俺の記憶は、抜き取ってもらえ。

 俺は元からこうなんだ。ただのいかれた、クソヤロウだよ」


 振り返った蒼馬さんが、口を開くのが見えた。

 だがそのとき、アズールがドアをぴしゃりと閉めて、二人の会話は途切れてしまった。

2019.01.16 17:25くらい

誤字修正しました

小学生低学年→小学校低学年


2019.01.24 13:21くらい

おかしな表現を修正しました

 これではもはや、亜貴が正気に戻っても、→これでもう、亜貴が正気に戻っても、


2019.04.19

 ご指摘頂きありがとうございます!

 的確なアドバイス~の一文、記述足らずのためこのように変更しました。

 さらりと滑り込んできたのは、ナナっちの声――ではなかった。

 鈴を振るような高く、愛らしい声はどことなく似ているが、そもそも女言葉だし。

 しかしこれだけはわかった、これはユキシロの誰かだ。

 今のだけでは誰だか判別つかなかったけど、あとで探してお礼をいうとしよう。

 そう、今はまず、亜貴のことだ。

 的確なアドバイスに感謝しつつ、俺は亜貴のまえにひざをついた。


2019.04.19

表記ブレを修正しました。

アンタが名づけたから→あんたが名づけたから

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