STEP3-2 ~スランプ一歩手前のぷれ王様はにゃんにゃんツアー(※お子様にもお楽しみいただける健全な内容です!)に強制連行されるようです~(上)
2020.06.12
地の文等すこし修正いたしました。
「じゃ、次のページ。
この闇オーブというのは……」
それから三日。
「……になるから、潜入作戦……確定で“闇オーブコンボ”が……」
俺はひたすら、鍛錬と勉強にあけくれていた。
サクの指示で『天才パワー』を使うことはないでもない。
だがそのほかは、シャサさんたちによる特訓、ルナさんやゆきさんたちによる集中授業と、まるで学生のような(正直給料をもらうのが申し訳ないような)生活をしていた。
「……此花クン。『ナイトウォーク』についてはわかるわね?」
「あ、はい。『夜族』の種族固有スキルで、闇の中なら自在に移動ができ……」
だが、ゆきさんの質問にそらで答えつつも、俺はぼんやりとべつのことを考えていた。
ナナっちは、相変わらず七瀬に通っているようだ。
引き続き、七瀬の本家やお兄さんたち、主だった幹部たちのもとに足を運び、粘り強く説得を続けていくことにしたのだという。
もっとも、それを教えてくれたのはロク兄さんだ。
やつは何かと理由をつけて、俺と距離を置くようになったのだ。
メールの返信も、一日に一度あればいいくらい。社食やティーラウンジで遭遇しても、ごめん、ときびすを返してしまう。
七瀬との交渉が前進すれば、ナナっちはきっとまた戻ってきてくれるはずだ。
俺が強くなれば、一緒に交渉にいってやれるはず。
その日を信じているけれど、もちろんスノーやみんなも支えてくれているけれど……
「……ち! サクっち!」
はっとわれに返ると、目の前にはきれいな翠玉色。
シャサさんの目が、心配そうに俺の目を覗き込んでいた。
そうだ、今は操気法の訓練中。
「どうしたの、完全にいまぼーっとしてたよ。
疲れてるなら、休もっか?」
「い、いえっ!
だいじょぶです、俺神の子ですし! 疲労回復とか、お手の物ですから!」
するとシャサさんは、ふう、と一つ息をつき、話し始めた。
「サクっち。
きみの『回復』には二種類ある。わかってるよね?」
「はい。軽傷の回復とか、ちょっとした不調の回復には『賦活』。
死亡状態やひん死、重い病気や、大怪我を瞬時に直すとか、あきらかに人の回復力の域を超えるレベルには『復元』が発動します」
「正解。
――サクっちが使ってるのが『リバイブ』のほうだったら、問題はないんだ。
超常の力のテコ入れを受けてとはいえ、体が本来の方法で回復してるから。
それによって起きる超回復で、訓練がちゃんときみの身になってくれるからね。
でも『リコンストラクション』だったら、困る。
こっちはいうなれば『なかったことにする』やつだから……」
そう、もしも死んだら、完全回復して生き返るかわりに一週間前後の記憶がなくなる。
この間みたいな無茶をした後には、ダメージはほとんど残らないけど、同時に成長もほとんどしない。
具体的には、アズールとの死闘を繰り広げたあと、某ペルシャの王子様ばりのビル登りアクションをかますはめになったのだが、ぶっちゃけぜんぜん腹筋とか割れなかったのだ。
実はほんのちょっぴりだけ、期待はしてたんだけど……
「せっかくの訓練がなかったことになるなんて、教える側としては悲しいよ?
……まあ、ゼロではないにしても。
だからサクっち。今日はお姉さんといいとこいこ?」
「 」
ウインクしながら突然の大胆発言。俺は度肝を抜かれた。
いや、それはまずい、それはまずいぞ此花咲也。俺にはもう、スノーという心のひとが、いや、今どこにいるか正確にはわからないしそもそも人間になったとも一言も言っていないが、確かに俺はシャサさんに遠まわしながら告白されて、それを断るときに罪悪感と残念感がけっこうあったほどにはシャサさんが好きで、そしてシャサさんはないすばでぃであくてぃぶきゅーとで陽気でかわいくて正直、いや違うそうじゃない、そうじゃなくって
「いっいいいいいやそのっ、おっおおおおれはその、あ、あああのおきもちは……じゃなくてまってシャサさん! おれはそのっ、そのっ、そうっこころのじゅんびが」
必死にそう訴えかけた。でもシャサさんはぜんぜん聞いてない。
というかすでにどっからかスマホをとりだし、上機嫌でどこかと会話をなさってる。
「あ、もしもしロクっち? うん、うん。それじゃよろしく。三十分後に現地でね!
さーあサクっち! さくっと着替えてぱらだいすにれっつらごーなのだ!! だいじょぶぜったい後悔させないからっ。おねーさんを信じて全てをゆだねよ! いざ!!」
「えええええ!!」
* * * * *
どっからか現れたユキシロ警備員ズ(なぜだかやけににこやかだ!)に左右を固められ、まあまあとなだめすかされ社用車に乗っけられ。
揺られること十分ほど。見覚えのある下町風景の中、それは姿を現した。
「ここ……鈴森荘?」
築五十三年の木造ボロアパート。つい先日まで、俺がやっかいになっていた場所だ。
「せいかーい! ささ、入って入って!」
「え、ななっなんでここに?!」
「グランマー! みんなー! きたよー!! はいるよー!!」
陽気な挨拶、手馴れた様子で、俺はその一室に押し込まれる。
って『グランマ』?『みんな』? =、シャサさんだけじゃない?!
……そういえばちょっと前ネットで調べたっけ。王様の一番重要な仕事は一体何かと。
複数の記事で一致していた。それはずばり『次代を残すこと』。
なぜなら、そればっかりは本人にしかできないから、だそうで……
俺はドアの前を固めてにこにこしてるシャサさんにむけ、全力必死で抗議した。
「で! でも俺はほら、もと田舎育ちのフリーターだから!! ふつーの現代の一般人だから!! そ、そういうのってその、い、いいっ、いいと思えないし!! そうでなくてもやっぱはじめてはすきなひ」
「サク、やん……?」
そのとき聞こえてきた声に俺はフリーズした。
がくがくとふりむくとそこには、あっけにとられた顔のナナっち、そしてナナっちにだっこされてご満悦の三毛猫ミーコの姿があった。
「うそ」
ショックにひざががくっと折れた。
「……いや、俺そういう偏見はないよ? 男どーしだって女どーしだってお互いに愛があって幸せだったら祝福できるよ? でもナナっちはそれ以前に俺の親友でミーコはなんというか娘とも言うべき存在で、しかもそれ二名同時ってあんまりじゃない? だいたい」
「どうしたんだいこの子は。突然訳のわからないこと言い出して」
「あ、咲也さん。お待ちしてました。お茶をどうぞ」
だがそのとき俺は気がついた。
ナナっちの向かい側。ちゃぶ台の向こうには、お玉さんが座ってる。
台所からは、クロとしろことチョコ(黒猫と白猫と茶トラ猫。いずれも鈴森荘の猫たちだ)にまとわりつかれながら、フリルつきエプロン装備のロク兄さんがお茶を運んでくる。
……いや、『ない』。この絵面はさすがに『ない』。
と、いうことは?
「もーロクっちは働かないでいいってのに。それじゃーいいお嫁さんになっちゃうぞ?
ほらサクっち、すわったすわった!
うちだったら慣れてるしにゃんこもいるし、下手なネコカフェよりも癒されるでしょ?
ゆっくりしてってね、三人とも」
俺とナナっちは同時に逃げだそうとした。
しかし、シャサさんにあっさり取り押さえられた。
いや、信じられないけど、ほんとさくっとヘッドロック。
背中に当たってるよーな、当たってないよーななにかについては……き、きにしない! きにしてませんよワタクシは!!
「だめだよ~ふたりとも。これは社長命令、業務の一環だからね♪
きみたちは笑顔をとりもどすまで、ここでのんびりしてくこと!
一泊でも二泊でも、ぜんっぜんかまわないからさ。
第二の田舎に帰ったと思ってくつろいでってよ!」
Today's Character Data:
ゆきさん……憂城 ゆき(うじょう ゆき)
Former Name:憂城 ゆき(うじょう ゆき)
Class:憂城の娘
Element:夜気(夜族生得)+植物・生命(サクレア由来)
Battle Type:?
Skill Name:イブニングウォーク(闇・夜天)、?
Belongs to:ユキシロ製薬株式会社製薬部チーフ兼主任研究員
Strain:夜族・夜天種(中原地方)
Hair Color:白銀
Eye Color:ひすい色
知的なエイジレス系セクシー美女。ナイトウォークの上位版であるイブニングウォークを駆使して本社ビル内の警備もこなす。そのためサキに幽霊と間違われたが、逆にモーションをかけてサキを慌てさせた“大胆素敵”な女性。
向学心に燃える若者が大好きで、前世も今もサキの先生役をつとめる。若干厨二病。
シャサさん……シャサ・スズモリ(鈴森)
Former Name:ラク・シャサ
Class:神王の戦乙女の長
Element:炎・運動+植物・生命(サクレア由来)
Battle Type:アタッカー
Skill Name:ヒートフォース
Belongs to:ユキシロ製薬株式会社警備セクションチーフ
Strain:人間(中原地方)
Hair Color:栗色
Eye Color:エメラルド
アクティブキュートなお姉さん。けっこう大きい(いろいろな意味で:サキ談)。
警備セクションのチーフで、クォータースタッフを手にすれば一騎当千。
性格は陽気でオープンでフランクで姉御肌。誰とでもすぐに仲良くなれる。
サキが信頼する鈴森荘の大家・お玉さんとの関係は……?




