【異世界転生】した反魂(はんごん)術師は、【チート】で理想の【ハーレム】を作れるか!?
【異世界転生】した反魂(はんごん)術師は、【チート】で理想の【ハーレム】を作れるか!? ― 聖杯の姫騎士 ―
【異世界転生】した反魂術師は、【チート】で理想の【ハーレム】を作れるか!? ― 美少女の遺骨を探して東奔西走 ― 『https://ncode.syosetu.com/n5489ez/』 及び ― 舎利の聖女 ― 『https://ncode.syosetu.com/n8544ez/』の続編ですが、本編だけでも問題なくお読み頂けます。
今話もえっちな叙述が若干でてきますが、R15の範囲内と考えております。
また話の展開上、グロい叙述も若干ありますが、苦手な方はご注意下さい。
ぎゅ、ぎゅ、ぎゅ、ぎゅ
「……あぁん……あん♡ ……そ、そこよ、サイキョ~~ゥ~」
ぎゅ、ぎゅ、ぎゅ、ぎゅ
「……い、いいわぁあぁぁぁ……あぁん、あはぁあぁぁん……そ、そこは駄目ぇえぇぇぇ」
「ロゼリア……お前なぁ、何て声を出しやがる。安宿の壁は薄いから周囲に丸聞こえだぞ! 真っ昼間から色情狂みたいな善がり声を出しやがって!!」
「だ、だって……サイキョウが上手なのですもの♪ わたくしは、感謝していますのよ」
俺ことサイキョウと相棒のロゼリアは、駆け出しの新人冒険者だ。
ふたりで冒険者パーティーを組んでいるが、未だパーティー名は決めていなかった。
将来的には【ハーレム】パーティーと喧伝したいところだが、ハーレム要員がロゼリア一人しかいない現状では、とても烏滸がましい状態であるといえるだろう。
実のところ俺は、【異世界転生】した【チート】持ちである。
チートの内容は〈反魂術〉というものであり、白骨化した遺骸を蘇らせるという、奇異でギャンブル性の高い能力だった。
なぜギャンブル性が高いのかというと、白骨から生前の美醜が判別出来なかったからだ。
ところで俺たちの生きているこの世界には、魔法という不思議な力を行使する者たちが一定人数存在している。
彼らは魔法使いと呼ばれ、一般民衆からは畏怖の対象だった。
その魔法使いの中に、聖なる治癒魔法が使える者がごく稀にいた。
そういった者たちは、聖人とか聖女とかと呼ばれ、特に尊ばれていた。
相棒のロゼリアは、フルネームをロゼリア・シベール・サイモンテといい、サイモンテ王国の第三王女として、この世に生を享けた。
ロゼリアは長ずるに従って治癒魔法に目覚め、聖女としてアーカンス聖教団に迎えられたのだが、享年14歳という幼さで疫病を祓うための生贄として神に奉げられた存在なのだという。
悲劇的で献身的な最期と、生前の光り輝くような美貌も相俟って、信仰の対象になるような歴史的人物であり、舎利が理想的な形で保管されていたことから、〈反魂術〉により蘇りが叶った存在である。
本来ロゼリアは、高度な治癒魔法は勿論、蘇生魔法まで使える稀有な聖女様だったのだが、蘇ったばかりで体内の滋養が欠乏しており、新人神官程度の初歩的な治癒魔法しか使えなかった。
そのような経緯から、俺はロゼリアのご主人様といっても良く、彼女は実質的にハーレム要員第一号である。
しかし生前のロゼリアは、王女や聖女という彼女のお世話をする者たちに傅かれる生活を送っていた。
つまり短い生涯を通して『深窓の姫君』や『慈愛の聖女様』だったことから体力がなく、ちょっとした徒歩の移動や冒険で疲労や筋肉痛を訴えて身動きできない状態になってしまうのだった。
そこで俺は、足ツボを押す『指圧療法』を施していたのだが、ロゼリアの口から漏れる嬌声やら喘ぎ声やらに辟易している状態であった。
つまり、ロゼリアは繊細で感じやすい性質だったのだ。
しかもロゼリアの蘇ってからの態度から、頭に大きな猫を被っていやがったのだ。
本当は肩や背中を揉み解すついでに、手が滑って胸などを ― むにゅり ― と触るという下心があったのだが、足の裏を指圧するだけでこの騒ぎであるから、実行できていない。
ただ、絶世の美少女が市井にいると目立つので、顔は隠すようにさせていた。
それだけの配慮をしていたのだが、今まで宿泊していた木賃宿でも「昼間からお盛んだねぇ」とか、「俺にもヤラせろよ」とかいった下卑た嫉妬や生温かい目でみられることが多かったのだ。
全てはロゼリアが、色っぽい声を上げる所為であった。
だがしかし、俺の野望は美少女が集うハーレムを構築することである。
こんなことで挫ける訳にはいかない。
この世界では、強い男や金持ちの男は数多の美少女や美女を囲っているのが当然であり、一種の社会的ステイタスであったからだ。
反面、ハーレム要員第一号のロゼリアとは、未だ清い関係である。
その理由としては、〈反魂術〉で蘇った者は肉体の滋養が欠乏しており、その欠乏を補うために他者の血肉を啜ろうとすることに加えて、蘇ってから一千日の内にえっちな行為に及ぶと、術が解けて身体が風解してしまうからであった。
新人冒険者に熟せるお仕事というと、下水道内の害獣駆除や町の近郊での薬草採集など簡単な仕事しか受けられなかった。
当然のことながら報酬も安く、ふたりで宿泊して最低限の食事をするだけで儲けが消えた。
金を節約するために野宿をすることも考えたが、年端も行かない美少女であるロゼリアがいるので、実施することは躊躇われた。
勿論、逆に襲撃者をロゼリアが襲って血肉を啜り邪悪な存在に堕ちるという最悪の事態は看過できなかったし、俺の理性が負けて魅力的な彼女を押し倒して風解させては、今までの苦労が水泡に帰す。
何とかロゼリアの体内に滋養が満ちる一千日を無事に過ごさせることが、当面の目標であった。
一千日を無事に過ごさせ、仮初の生から真の意味で蘇生させてあげたい。
吸血行動も体内の滋養が欠乏しているからであり、一千日を超えるとそんなことはしなくなると、前世のお師匠様である西行法師様は仰っていた。
しかしながら、今のペースで路銀が減ると、俺たちは無一文となって餓死してしまうだろう。
冒険者として生計を立てるためには、もう少し実入りの良い依頼を請け負う必要があったのだ。
当初、俺の仲間に新たな美少女が加わることに関して、ロゼリアは絶対反対の立場だった。
ロゼリアは、嫉妬持ちでもあったのだ。
ところが、俺たちの所持金の減少を目の当たりにして、前言を撤回してくれた。
「背に腹は代えられぬ」といったところだろうか。
最初は『冒険者ギルド』で仲間を募集したが、新人冒険者である俺たちに特筆するような実績もなかったし、ロゼリアは素顔を隠す必要があったことから誰も見向きもしなかった。
次に検討したのは、奴隷商で冒険ができる女奴隷を購入することだった。
ところが、冒険ができる有能な女奴隷の値段は青天井であり、俺たちには手が出なかった。
結局、残ったのは〈反魂術〉によって必要な人材を蘇らせることである。
「なあ、ロゼリア。俺は誰を蘇らせれば良いと思う」
「そうですね。……冒険者を続けるのであれば、前衛職が務まる人物が良いでしょうね」
「俺は野郎を蘇らせる気はないし、筋骨隆々で腹筋が割れたような姐さんも御免蒙るからな」
「わたくしも仲間にするのならばイケメンの美青年か、わたくしと同等の美少女が良いですわ」
「俺は、いけ好かないイケメンの美青年も嫌だ。しかし美少女に前衛職が務まるのかな?」
「探せばそれなりに居たと思うのですが……美少女拳法家や麗しの姫騎士などは如何でしょうか?」
「ロゼリアには誰か心当たりがあるのかな?」
「そうですね。例えば……――」
ロゼリアと話している内に時間が経ってしまい、宿に併設された食堂で夕食を摂ってから入浴した俺たちは、寝室の寝台の上で寛いでいた。
持ち金が少ないのでロゼリアと一緒の部屋だが、寝台は別々だ。
本当は他の客との相部屋が安いのだが、美少女の寝姿を晒すわけにはいかなかった。
ただ、同じ寝台で休んだ場合、ロゼリアの吸血行動への対処が間に合わなくなる。
だから、ひとつの寝室で別々の寝台で寝るというのが、ギリギリの妥協だったのだ。
俺としては、何とか一千日の仮初期間を無事に過ごさせて、真の意味で蘇生の叶ったロゼリアを押し倒すことだけが楽しみである。
「サイキョウ……如何かしら……わたくしの生脚は……」
俺が妄想に耽っていると、隣の寝台の上で横になっているロゼリアが、ゆっくりとネグリジェの裾を持ち上げて生脚を晒し出していた。
今もネグリジェの裾はゆっくりと持ち上げられ、端なくも太股の半分程度までが見えている。
滑々の生脚の魅力は、暴力的ですらある。
そして……、このまま行けば、ロゼリアの大切な場所まで見えてしまうかもしれなかった。
ごくっ
俺は艶めかしい肢体を晒しているロゼリアをみて、生唾を呑み込んだ。
しかし、如何して唐突に、こんな事態に!? 否、理由はひとつだ。
俺は誘惑する生脚から意志の力で視線を外し、ロゼリアの顔をみた。
すると何時もの清楚な顔から妖艶なそれに取って代わり、瞳の色は空色から妖しく光る紅色へと変化している。
それから、口許から覗く牙は、冷たい光を放っていた。
つまりロゼリアは、俺の血を啜るために誘惑していたということだった。
パコォオォォン
「色魔退散、喝!」
俺は枕許に常備していたハリセンを握ると、ロゼリアの頭を叩いていた。
「いったぁあぁぁい、何するのよ!」
「誘惑して俺の血を啜ろうとしただろうが」
「だって血を啜るだけで、疲労が取れると思ったんだもの」
「お前に恥じらいというものはないのか? このえろ性女め!」
「わたくしは生前、多くの侍女や修道女に傅かれていたので、裸体を見られることには慣れているのよね♪」
「もう一発くらいハリセンを食らわせてやろうか?」
「わたくしの大事な頭を叩かないで! 馬鹿になったら如何するのよ! もし禿げたら責任を取ってもらうからね」
「もう一度、舎利壷の中に戻るか?」
「そ、それだけは絶対に嫌よ! 折角蘇ったのだから、今生は自由に生きるの」
毎夜、こんな感じで夜が更けていくのだった。
「サイキョウ……、補充要員の件だけど……わたくしは姫騎士のヴィクトリア・ローリエ・ゼルトガルドを推すわ」
「ゼルトガルド王国というと、随分昔に滅んでしまった王国だな」
「そうみたいね……。ヴィクトリアはとても凛々しい美少女だったわ。彼女の生い立ちは……――」
俺はロゼリアからヴィクトリアのことを教えてもらった。
ゼルトガルド王家は、古来より数多の姫騎士を輩出していた家系だったそうだ。
今回、ロゼリアが推薦したヴィクトリアも幼少期から厳しい訓練に励み、姫騎士として多くの民草を救った英雄だったという。
輝くような銀髪のストレートヘアとアイスブルーの切れ長の瞳は涼しげで、魔王軍の幹部も斃したことがあるらしい。
そんな栄光に彩られたヴィクトリアだが、最期の戦いは壮絶だったという。
突如侵攻してきた凶悪なオークキングの率いる大群に近衛騎士団を従えて突っ込み、見事、オークキングとの一騎打ちに持ち込んだが、それまでの戦闘で負っていた怪我によって満身創痍であり、死力を尽くした戦闘の果てに散華したのだという。
それでも相討ちでオークキングを斃したことから、『救国の戦乙女』として丁重に埋葬されたらしい。
それだけで終われば、有終の美を飾れたと云われるかも知れない。
死後数年経ち、遺体がすっかり白骨化した時、ヴィクトリアの聖遺物を加工して聖杯を創るという計画が持ち上がった。
それは、ヴィクトリアの華々しい戦果に肖ろうとするものである。
その聖杯は、金無垢の台座に金剛石や紅玉に青玉などの宝玉を象嵌し、聖遺物であるヴィクトリアの全身骨格を錬金術による錬成によって杯と成したものであったらしい。
戦人は、戦場に赴く前の戦勝祈願で件の聖杯に赤葡萄酒をなみなみと満たして、一気に飲み干したのだとか……。
「遺骸が錬金術によって聖杯に加工されたというのなら、〈反魂術〉で蘇らせるのは無理なのでは?」
俺の懸念に対してロゼリアは、当時の裏話を語ってくれた。
聖女ロゼリアは、姫騎士のヴィクトリアと生前に一度会ったことがあるらしい。
その出会いは、魔王軍の幹部と戦って負った深手を癒すためだったという。
ヴィクトリアの年齢はロゼリアより3歳年上だったそうで、年の近いふたりは意気投合したのだとか。
更に聖杯を創る頃には、聖女ロゼリアはアーカンス聖教団における第一座の聖女となっていた。
そのことからヴィクトリアの聖遺物を錬金術で聖杯に成すお役目は、自然と聖女ロゼリアが担当したのだという。
錬金術とはいっても、この秘蹟は神聖魔法に区分されるものであり、行使した者以外には何人たりとも解くことは叶わない。
「今回は、幸運にもわたくしが健在であることから、件の聖杯を聖遺物へと戻すことが可能なのです。わたくしを尊敬しますか、サイキョウ?」
どや顔で語るロゼリアは、小憎らしい笑顔を見せていた。
「お前、阿呆か!? ゼルトガルド王国は既に滅んでいるのだから、聖杯も散逸しているだろうが!!」
「そんなことですか、サイキョウ。問題ありませんわ」
俺の言葉を軽く受け流すロゼリアである。
「創られた聖杯は、その神聖を保つために特別な聖域で保管する必要があるのです。ゼルトガルド王国は聖杯が必要になると国王の勅使を遣わせてアーカンス聖教団の宝物庫から運び出し、必要がなくなると戻していた筈ですわ。その頃には、わたくしも神に奉げられた後なので、確かではありませんけれど……慣例ですから」
「そ、そうか! だったら聖杯はアーカンス聖教団の宝物庫に現存する可能性が高いな。しかし宝物庫ということは警備が厳重なのでは?」
「それは当然ですわね。神官戦士の最精鋭が守っていますわ」
「そんな場所に忍び込めるか!?」
「正攻法では無理ですわね。ですがわたくしは、アーカンス聖教団で第一座の聖女でもあったロゼリアですわ。当然ながら秘密の抜け道も熟知しておりますのよ」
再び、どや顔をするロゼリアであったが、少しイラっとした。
結局、俺とロザリアはアーカンス聖教団の宝物庫を擁する大神殿の近くの森の中にあるという、古びた涸れ井戸の前に立っていた。
「この涸れ井戸が抜け道の出口となりますのよ。井戸の側面に上からは見えない位置に横穴が掘られており、宝物庫の中の空の聖櫃に通じていますの」
「よくある設定だが、今まで良くバレなかったものだな」
「抜け道の途中で不審者撃退用のゴーレムが設置してあり、普通の盗賊や冒険者程度では突破できませんわ」
「それなら、新人冒険者程度の実力しかない俺たちも突破できないのでは?」
「わたくしの手にある長杖は、アーカンス聖教団の聖女の証でもあるのです。この長杖を翳せばゴーレムは沈黙するのですわ」
「これも納得できる理由だな」
俺たちは涸れ井戸に縄梯子を下ろして降りていく。
ロゼリアの言う通り、涸れ井戸の壁面は巧妙に屈折させてあり、井戸の底に下りると側面に横穴が穿たれていた。
横穴の大きさは大人が立って歩ける程に巨大なもので、長い距離を松明を片手に歩いていくと、広い地下空洞に通じているようだ。
そして、そこには多数のゴーレムが鎮座していたのだ。
俺とロゼリアが地下空洞に足を踏み入れた瞬間、聖戦士を模られたゴーレムどもが動き出す。
おまけに不審者を始末するために、剣や槍を掲げているではないか。
「ロゼリア、ゴーレムの対処は任せた」
「はい、任されましたわ。わたくしはアーカンス聖教団の聖女たるロゼリア・シベール・サイモンテですわ。道を空けなさい!!」
何時ものおちゃらけた新人冒険者のロゼリアではなく、聖女としての威厳のある声で朗々と命ずると、ゴーレムたちは一礼したのち、所定の位置に戻って固まった。
「おお! 流石は元聖女様だな。それとも長杖の効果なのか?」
「長杖は聖女の証ではありますが、正統なる所有者が持たないと効力は発揮しませんのよ」
俺は三度ロゼリアのどや顔をみながら先へと進み、彼女の説明通りに宝物庫へと侵入したのであった。
だがしかし、歴史のあるアーカンス聖教団の宝物庫は、広大で数多の宝物が収蔵されている。
俺には何処に何があるのか見当も付かない。
「この中から目的の聖杯を探すのは大変だぞ。それに聖杯もひとつとは限らないのだろう」
「これもお任せ下さいな。勝手知ったる宝物庫ですわ。聖杯はあちらに置かれていますのよ」
そして再び俺は、ロゼリアの道案内で宝物庫の狭い通路を移動していく。
それにしても金銀財宝がザックザクという状況に目がチカチカしてしまう。
赤貧状態の俺としては、財宝のひとつでも持ち出したい気分であるが、俺は盗賊ではないので我慢した。
「聖杯は、この棚ですわね」
案の定、ロゼリアの案内した聖杯置き場には、幾つもの聖杯が置かれていた。
俺にはどの聖杯がヴィクトリアの聖遺物より創られたものかは判別ではない。
そして、各々の聖杯の近くには武器や法具などが一緒に置かれていた。
どうやら聖杯と成った故人が生前に使用していた遺品らしい。
「これがヴィクトリアの聖杯ですわ。聖杯の外形はどれも似たり寄ったりですが、聖杯から漏れる聖気の質がわたくしのものですし、この二振りの業物の直剣は、ヴィクトリアが使っていたものですわ」
ロゼリアが台座から慎重に聖杯を抜き取って持ち上げ、俺が二振りの直剣を持ち、抜け道に通じる聖櫃のところまで戻って来た。
「この場で錬金術を解きますわ。聖気の満ちるこの場で行うことが確実ですから。残念ながら、現在のわたくしの体調は万全には程遠く、この場の聖気の力を借りる必要があるのですわ」
俺はロゼリアの指示に基づき、預かった聖杯を聖櫃の上に置いて後に下がった。
当然ながら聖杯の横には、白木の杭とハリセンも並べた。
代わりに前に進み出たロゼリアが長杖を掲げながら、長い、長い呪文のような言葉を掛けていると、ある瞬間に聖杯の輪郭がぼやけ、人間の全身骨格へと変化していった。
それにしても錬金術でこんなことが可能だったとは! 献金術と呼称しているということは、儀式に秘薬の類いを併用していたということだろうか。
「……はぁ……はぁ……はぁ……。これで……如何で……しょう……か」
儀式を遣り終えたロゼリアは消耗し切っていた。
俺はロゼリアを壁際で休ませると、砒霜を取り出して丁寧に塗って行く。
「それでは〈反魂術〉を行使する」
俺の宣言に、ロゼリアは興味津々の目で見ていた。
斯うして〈反魂術〉が厳かに始まり、松明の明かりが明滅して世の『理』が反転する。
塗った砒霜から白い靄のようなものが発生すると、聖遺物である全身骨格を覆っていく。
真っ白な骸骨の空ろな眼窩にアイスブルーの綺麗な眼球が嵌り、その周囲では血管や筋肉の組織が生成してゆく。
そして胴体の方でも靄が生々しい臓物や筋肉組織などに変化していく様は異様である。
この明らかにグロテスクな光景は、施術している俺としても正視に堪えるものではないが、気丈にもロゼリアは凝視していた。
やがて内臓組織などが造られた後、瑞々しい乙女の柔肌が覆っていった。
同時に頭部から伸びていた靄は、煌く直毛の銀髪に変じた。
身長は小柄なロゼリアよりも長身で、すらりとしたスレンダー体形だ。
伸びやかな手足は一見の価値がある芸術品であり、俺が懸念していた腹筋の割れはなく、ただ引き締まっているといった印象だ。
顔の輪郭は凛々しく、引き締まった口許からは強い意志の力を感じる。
ただ、胸はささやかな膨らみでしかなかった。
「こ、これが〈反魂術〉ですか! 蘇生魔法とは随分と違いますが、素晴らしい御技ですわ」
俺はロゼリアの称賛を受けて、気分が良かった。
「――……ぅ……ぅぅ……。き、きゃあぁあぁぁぁ!! ボ、ボクの胸を見るな……うぐぐぐっ」
俺がロゼリアの反応に見蕩れている間に、〈反魂術〉が完了して蘇ったヴィクトリアが真っ赤な顔をして悲鳴をあげかけたので、急いで口を塞いだ。
ヴィクトリアは確かに美少女であったが、胸の小さいことを気にしていたようだ。
俺としては、ロゼリアの年齢に不釣合いに大きな乳房も好きだが、ヴィクトリアの仄かに膨れた乳房も好ましい。
「落ち着いて下さい、ヴィクトリア・ローリエ・ゼルトガルド様。わたくしはアーカンス聖教団の聖女を務めておりましたロゼリア・シベール・サイモンテですわ。落ち着いたならば首を縦に振ってくださいな。その後に解放しますから、用意していたお召し物を着て下さい。それから……――」
ロゼリアがヴィクトリアに語りかけると、彼女は直ぐに落ち着いた。
恐らくヴィクトリアは、ロゼリアのことを覚えていたのだろう。
それにしても生前は姫騎士を全うしたヴィクトリアだが、ボクっ子だったとは驚きだ。
それから俺は、ロゼリアの半ば命令で、後を向かされた。
同時にロゼリアは、事情説明をしつつ着衣を手伝っているようだ。
それにしても……、衣擦れの音が艶かしい。
「先ほどは失礼を致しました、サイキョウ様。ボク、否、わたくしはヴィクトリア・ローリエ・ゼルトガルドと申します。この度は蘇らせて下さり、感謝の念に堪えません。わたくしの全身全霊を以ってお二人を守ってみせましょう」
ロゼリアが持ち込んだ衣装は騎士の着るチュニックで、腰には二振りの直剣が差してあった。
「俺はヴィクトリアの参入を歓迎しよう」
「勿体無いお言葉で御座います、我が主よ」
斯うしてハーレム要員第二号となる姫騎士のヴィクトリア・ローリエ・ゼルトガルドが加わり、外見的にはハーレムパーティーの体裁を整えた形だ。
しかしながら、ヴィクトリアも蘇ったばかりなので体内の滋養が欠乏している。
当面は、新人剣士からやり直しとなるだろう。
それからボクっ子のヴィクトリアだが、姫騎士としての体面からか一人称は『わたくし』に変化していた。
その夜、宿で就寝していると、ロゼリアとヴィクトリアは結託して俺の血を吸いにきたが、ハリセンの一閃で撃退したことはお約束というものだろう。
それにしても、これ以上に蘇生者を増やすと、対処できないので当面は打ち止めだ。
早く二人の一千日が過ぎて、本当の意味で【ハーレム】が始まるのが待ち遠しい。
俺は、タイプの異なる極上の美少女たちを、早く押し倒したいのだ。
これで中途半端だった【ハーレム】も達成しましたので、お仕舞いとさせて頂きます。
聖女ロゼリアと姫騎士ヴィクトリアを得たサイキョウのドタバタ冒険譚は始まったばかりです。
蘇ったばかりのロゼリアとヴィクトリアは、新人冒険者程度の実力しか発揮できませんが、徐々に昔日の力を取り戻していくことでしょう。
それから宿屋では毎夜、サイキョウの血を求める二人と組んず解れつしつつ、色っぽい攻防戦が繰り広げられることに……。
そしてサイキョウのハリセンも徐々に当たらなくなり……。
絶体絶命のサイキョウでした。(笑)
サイキョウは、無事に二人を真の意味で蘇らせることが叶うのか!?