2話
連続投稿!
今いるのは和室だ。しかも趣味レベルではないれっきとした和室だ。そして障子の向こうあるのは立派な日本庭園。
「なんでこんなことに…」
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「さて暗殺者も帰ったしそろそろ学校戻るかッッッ!」
とっさに結界を敷く。
結界の先にあるのはいかつい顔をした男だった。
俺の気配察知を潜り抜けて近づいて来たらしい。
何気にこっちに戻って来て1番危なかったかもしれない。
「お前がシャドウか?」
男は一度俺から距離をとって聞いてくる。
「違う。そのシャドウとやらは追い払った」
ジーーーー
男は俺を頭の先からつま先までジッと見てくる。ちょっ男に見られて喜ぶ趣味はないから!そんな見るな!
「……どうやら本当のようだな。すまない。詫びとお礼を兼ねて家に招待したい。出来れば来て欲しい。というか来てくれないと困る」
男はそういうと何か小さい声で呟いた。すると一瞬で景色が変わり、そこは和室だった。
「ちっ!転移か!?マジでファンタジーかよ!?……随分と荒っぽいことをするんだな」
「すまん。しかし上からの命令なのと、こうでもしないとお前は付いてこないからな」
「ようこそいらっしゃいました」
俺が男に不満を口にしてると部屋に女が入ってきた。所謂女将のような人だった。
「この者をもてなせ。旦那が来るまでな」
「はい」
俺を連れてきた男は女将に命令すると去ってしまった。連れて来たのに応対は他人任せなんて失礼なやつだな。まぁとりあえず今は情報収集だ。
「ここはどこなんだ?」
「ここは日本のとある島です」
「地理的には?」
「秘密です。旦那様の許可がない方にお教えできますせん」
むーガードが固いな。
「というかあの転移?あれはどうやってやった?」
「あれは我が柳家の家臣クラスのみ使える転移の術です。詳細は私も知りません」
「なら他にもあるのか?」
「そもそもあなたは私たちがなんであるか知らないと思うのでそこからお教えします。私たちは神に仕える者です。謂わば神主です。そして神主たちは信仰心を力に変えることができます。そして先ほどの質問に戻るとその力、神力で結界を敷いたり、対象の能力向上を促したり、無機物に力を与えたりなど出来ます」
まじですかー。いやまさかと思ったけど本当にあるとはねー。しかも力の源は違えどそんなに魔法と変わらないし。
「どうやら旦那様が到着したようです」
もちろん俺の気配察知も反応している。
そして部屋に入ってきたのは優しそうな顔をした40くらいの男だった。
「待たせたね。君が神力を使わずに術を行使できる少年だね?」
「多分それであってるな」
その瞬間後ろから殺気が飛んできた。
「楓、落ち着きなさい」
「はっすみません」
女はどうやら楓という名前らしい。ともかく楓は殺気を飛ばしてきた。まぁおおよそ敬語を使わなかったからだろうが俺は敬語は使わない。俺が使うのは本当に尊敬してる人と使わなけれはいけない時のみだ。
「まずは無理矢理連れてきた申し訳ない」
男はそう言って頭を下げる。組織の頭がいとも簡単に頭を下げるのに俺も驚いてしまった。
「まずは交流といこうか。私の名前は柳 誠一。そうだな誠一と呼んでもらって構わないよ」
「………随分軽いな。俺の後ろから殺気がバンバン飛んでくるんだが」
「すまないね。彼女は俺を心底慕ってくれていてね。まぁ気にしないでくれ。私としても名前で呼び合うような仲を羨ましく思う自分がいてね。君とはそんな関係になることを願うよ。それと実際襲われても君なら倒せるだろ?というか私も君には敵わないかな」
そう言って誠一は手を差し伸べる。
「……佐藤 俊だ。俺も出来ればそれも望むよ。誠一?」
そう俺は言って握手をする。
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「また来てくれよ!次回は私の娘も紹介するからな」
「わかったよ。というか誠一の娘ってアイドルだろ?忙しくないのか?」
「大丈夫さ!それに俊は娘の命の恩人だ。礼くらいさせなければ柳家の名が腐ってしまうよ。さぁ牛丸、送ってやってくれ。じゃあな俊よ!」
「おうまたな」
誠一は意外といいやつだった。というかすごい気があった。最初は結構警戒したけど誠一もそれは理解してたらしく、いきなり向こうからバラしてきた。曰く柳家は1000年続く家らしくて代々神主たちをまとめてきた名家らしい。で国も非公式ながら神主たちを認めていて今は非公開の島の自治を任されていてその島は神主たちやその家族が集まり暮らしているそうだ。そこでは神主たちの修練場もあり、日本各地からこの島に集まって来るらしい。で神主たちは何をしてるかというと妖怪たちの討伐。妖怪は歴史としてわかっているだけで紀元前から存在しているらしいが、未だ妖怪たちについては謎ばかりらしい。でここで新事実なのが人ならざる妖怪がいて、それを倒せるような人間がいるのは日本だけらしい。そして俺についても話しておいた。彼らの予想とはかけ離れていたようだ驚きのあまり飲んでいたお茶を吹き出してたほどだった。とりあえず柳家と俺は協力関係を持ち、俺は柳家との友好のため転移門を俺の住んでいる地域と柳家の島の間で繋いでおいた。彼らは家臣クラスでないと転移できないため島と本土を簡単に往復できることに大変ありがたがっていた。
「それにしても今の今まで妖怪に気付かなかったのは不思議で仕方ないな」
そこが1番の問題なんだ。俺が勇者になる前なら分かるけど、勇者になってから妖怪を見るどころか気配すら感じられない。今度会った時に誠一に聞いて見るとしよう。
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「なんで妖怪を察知出来ないかだって?そんなの俊のオーラのせいだよ」
「オーラ?」
初めて会ってから数日が経ち、今日は休日だったので柳家を訪れている。そして開口一番に疑問をぶつけた。
「なんていうかこう俊から全方位に圧力がかかる気がするんだよね。もちろん全員が感じれるわけじゃないよ?俊や私みたいな人たちだけしか感じられないよ。それが妖怪たちを退けてるわじゃないかな?」
「そんなもんなのか?」
「んーと楓!俊の街の報告書を」
「はい、こちらです」
そう言って楓は何もない空間に手を入れて中から紙を取り出した。
「んー俊が驚かないということは君も使えるのかな?」
誠一はイタズラの失敗した子供のような顔をしていた。40過ぎたオッさんなんだけどなー。
「まぁ似たようなもんだな。ほれ」
そう言って俺も何もない空間からリンゴを出して、誠一に投げ渡す。ちなみにこれは空間魔法の無限収納だ。まぁよくあるチート魔法の一つだな。
「さすが勇者だね。まぁ改めて君の凄さを再確認したところで話を戻すけどこれによると誠一の住む街が2年前から被害数が激減してるだろう?ちょうど君が異世界から帰ってきたころだ」
「たしかにそうだな。なら俺は特に対策する必要はないのか?」
「まぁ街中なら大丈夫だと思うよ。どこの街にも神主はいるし、君のいるところには妖怪も寄ってこない。まぁ例外はあるけどね」
「ん?例外?」
「妖怪だって強さに差はあるよ。それこそ異世界風に言うならドラゴンからゴブリンくらいの差がね」
誠一は少しドヤ顔をしながら言う。まぁわかりやすいがその上手いこと言ったみたいな顔はやめてほしい。
「まぁそんな強い奴らは山奥とかにいるから気にする必要はないね」
「なら気負う必要はないか」
「まぁ深く考えすぎないのが1番だよ。それより君に会わせたい人がいる。誰かわかるか?」
「誠一の娘か?もしそうだとしたらトラブルになるかもしれんぞ?」
「理由を聞いても?」
「学校で怒らせちまったからな」
なんで親と子でここまで差が出るのかね。
「それは聞いてるよ。で早速君に柳家から依頼だ。彼女の教育を頼む」
誠一は頭を下げて続ける。
「娘は容姿も良く、神力の扱いにも長けている。さらには柳家の娘、国民的アイドルとして社会的地位も確立している。でその結果が今の娘だ。君も分かるだろう?」
「まぁ少しばかり誠一の教育については疑問が生まれたな」
「どうしても私は甘やかしてしまうんだ。だから頼む。彼女の再教育をしてくれ」
「………わかった。俺と誠一の仲だ。引き受けよう。それに最初の依頼をいきなり断るのもアレだしな」
「そう言ってくれる助かるよ!じゃあ呼んでくるから少し待ってくれ」
さてさてあの女がどんな反応をするもんだかねー