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セトの場合②

午前は剣術、午後は魔術と鍛錬を欠かしたことはなかったがそれだけでは生きていくことはできない。


両親が残してくれた遺産は多く、2年は働かずとも生活できるくらいのお金はあったが、それに頼り切りなのも情けないと思い仕事を探すことにした。


そこで真っ先に思いついたのが『冒険者』だ。冒険者はクエストさえ達成出来れば報酬を貰える。だから身寄りのない俺でもお金を稼ぐことができた。


初めて冒険者ギルドの門を叩いたのは12歳の頃、厳ついおっさん達に血や酒、煙草が混じった臭い。あの時の緊張に駆られた心を今でも忘れない。


冒険者ギルドの中に入った時、最初に声をかけてきたのは黒狼のリーダー、ジェイドだった。


「ここはガキの来る場所じゃねぇよ。帰りな」


ジェイドはきっと俺の為を思ってかけてくれた言葉だとは思うが、この時はきっと無意識の内に睨み返していたと思う。


「なんだよ、その目は」


「金が欲しい」


端的に俺は自分の目的を告げた。


「お前みたいなガキが冒険者になったところで死ぬだけだ」


「やってみなきゃ、分かんないだろ」


「じゃあ俺に一撃でも入れることが出来たら考えてやるよ。得物は持ってんだろ?」

俺の腰に差さる杖剣を見てジェイドが言う。


「上等だ。後悔するなよ」


今思えば自分より二回り以上大きな、見るからに格上の相手になぜここまで啖呵をきれたかは分からないが、心のどこかで少し自棄になった、引けない想いがあったのだと思う。


俺が杖剣を抜いて構えた辺りから周囲に野次馬が集まり始める。


「おいおい、ジェイド。ガキ相手に何やってんだよ」


「坊主いいぞ!!やっちまえ!!」


「ジェイド、負けたら笑いものだぞ」


周りの騒ぎなど最早関係ない。周囲の音が自分から消えたとき、俺はジェイドに切りかかった。



キイイィィィィィンンン!!!!



ジェイドの剣が俺の剣を受け止めた時、ギルド全体に音が響く。


幼い俺にはジェイドの剣はあまりに重すぎた。切りかかったはずの俺の剣は弾き返され、実力差を否応なく突きつけられた。


だが、こんなあっさりと敗北を認めるような、日々の鍛錬をしてきたつもりはない。


「纏うは風、包み込むは光。」


俺の詠唱に合わせて、魔法が発動する。

風が俺の速度を上げ、光は剣が受けるベクトル方向を捻じ曲げる。


「この歳でそこまでやるか...」


ジェイドが何か言っていた気はするが俺には聞こえていない。


「俺の本気見せてやる!!」


全力で加速して、光り輝く俺の杖剣がジェイドに迫る。




「だが、まだ甘い」




その言葉とともに気づいた時にはジェイドの剣が俺の喉元に突きつけられていた。


負けた、と強く感じた瞬間だった。

しかし、今思えば認められた瞬間でもあったのだろう。



「さっきの言葉は取り消しだ。冒険者登録をしたら俺が受けるクエストに付いてこい。荷物持ちくらいには使ってやる」


「なんで俺が荷物持ちなんか!!」


「まぁまぁまぁまぁ」


途中で言葉は遮られる。

その時俺をなだめてきたのが黒狼のサブリーダー、ルーカスだった。


「あいつは不器用だからな。ああは言ってるけど坊主のことが心配なんだよ。お前も冒険者がどんなものか知らないだろ?悪いようにはしないからちょっくら俺らのクエストに付いて来いって」


そしてこの誘いを渋々吞んだ瞬間から、俺の冒険者としての生活が始まった。




更新再開しました。

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