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冒険者学院

俺たちが住む家から冒険者学院は大して遠い距離ではない。歩いて15分くらいといったところだ。

3人並んで徒歩で向かっていたわけだが…。


「ご主人様、楽しみですねぇ!」


ライムが俺の左腕に抱きついた。その瞬間、俺の右側から殺気が飛ぶ。


「セト様が嫌がっていますのでやめた方がよろしいかと」


「そんなことないですよね?ルナちゃんと違って柔らかいですしぃ」


俺の左腕に柔らかいものが押し付けられる。それに比例して右側からの殺気が激増する。

この板挟み。世の中の男はみんな羨ましいのかも知れないが…。はぁ。


「ルナ、おいで」


空いている右手でルナの左腕を引き寄せる。


「え、あの、いや、えっと、その…」


「いや?」


「嫌じゃない…です」


俯いて答えるルナ。

これでいいんだ。きっとこれが正解なんだと思う。例え両手に花と、両隣に美少女を侍らせて、道行く男たち全員に睨まれていたとしても…。


ライムはにこにこと、俺は軽く空を見上げ、ルナは俯いて。


そうして歩いている内に冒険者学院が見え始める。

冒険者学院は国立の学校ということに加えて、建設されたのも最近なので中々立派な上に綺麗だ。


学校の正門近くには恐らく新入生だろう人たちが多く見える。



中には両親とともに学校に来ている人もいるようだ。生徒と思われる人を見ていると年齢層も割と幅広いようで見た感じ12~30歳くらいの人たちが見受けられる。


きょろきょろと正門付近で辺りを見渡していると、豪奢な馬車が近づいてくる。間違いなく貴族だろう、それもかなり上位の。


正門の前に馬車を止めると、これまた派手な装飾で身を包まれた青年が降りてくる。見た目も悪くない。というより美青年と言っても過言ではないだろう。


貴族でお金持ちで容姿も良いと…。俺、悔しい!


そんな風に視線を送っているとばっちり目が合ってしまった。まぁすぐ俺の両隣に移る訳だが。貴族の青年が近づいてくる。


「お嬢様方、こんにちは。アルベルト=ストローノフと申します。よろしければ、アルとお呼びください。あなた方もこの学院の入学生ですか?」


ていうか、話しかけられた。完全に俺のことは無視だが…。おい。


「そうですけど、何か御用ですかぁ?」


ライムが言葉を返すが、大丈夫かな…。相手は恐らく上位の貴族だぞ。


「いえ、良かったら学院にご一緒しないかと思いまして。これでも私は三男ですが侯爵の家系。試験でも特待生での入学ですので力になれると思いますよ?」


侯爵…。王族の家系除いたら最上位じゃねぇか!


「ご遠慮しておきますぅ。ライムはご主人様と一緒に行きたいので」


「ご主人様?まさか借金か何かで…。大丈夫です、私ならあなたをすぐに開放してあげることができます!」


「違いますぅ。はぁ、もうめんどくさいのです。『不可視化(インビジブルゥ)』早く行きましょう、ご主人様」


「え、ちょっ」


ライムに引っ張られて学校の中の方へと進む。不可視化(インビジブル)はライムの扱う魔法で、一定時間対象を視認不可能にすることができる。


入学早々、侯爵様こんな風に撒いて大丈夫なのかな。前途多難だよ…。


ちらりと後ろを見ると侯爵様が呆然としている。はぁ。


「そういえば、ルナは一言も話さなかったな」


「私は奴隷ですので貴族相手に口を利けば面倒なことになるかと」


「いや、奴隷紋がある訳でもないんだし…」


奴隷紋とは奴隷にかけられる、隷属魔法によって付けられる刻印である。


大抵、手の甲や腕、首、背中などに刻まれることが多い。隷属魔法をかけられれば、その魔法の階級により行動を制限される。


例えば大量殺人を行った犯罪奴隷なんかは最上級の隷属魔法がかけられ自由なんてものはほぼ皆無になる。ルナの場合は隷属魔法をかけていないので奴隷と言っても建前上だけである。


だから奴隷と言う必要はないんだけど…。


「私はセト様の奴隷ですので」


昔からこうなんだよな。なんかそこだけは譲れないような、理由は分からないんだけど。


「でも侯爵様なんて滅多にいるもんじゃないし、せっかく話しかけてもらったんだから、2人とも無理に俺の所にいる必要はないんだよ?」


2人が行ってしまったら寂しいけど、金も地位も容姿もあるやつに勝つのは難しいよ。俺は2人が幸せだったらそれでいいんだ…。なんて思っていたのだが。


「いえ、私はセト様がいいので」


「ご主人様が1番ですぅ」


「うぅ、2人ともありがとう!」


2人揃ってそう言ってくれた。

今まで過ごしてきた日々は無駄じゃなかったんだね。


やったよ、父ちゃん、見てるか。俺、お金持ちのイケメン貴族に勝ったよ…。


なんて感慨に耽っていると学院校舎の正面玄関に辿り着いた。

玄関前には掲示板にクラス分けが記されており、多くの生徒がそれを見ている。


後ろの方に並んで、少し時間が経った頃、ようやく前の人たちがはけてきて、掲示板を覗き込む。


冒険者学院にはクラスがある。


もちろん合同で行う講義もあるのだが、剣士クラス、魔法クラス、支援クラスと大まかに3つに別れている。そもそも魔物と戦うにおいて大抵は剣士か魔術師なのでその技能を培うクラスは当然あるとして、支援クラスというのは文字通り支援を行う技術を培うクラスである。


支援というと想像しづらいが、治癒魔法や、索敵、素材の分解結合などについて学べるらしい。俺はそういったことにあまり詳しくないのでよく分からないが。


そしてそのクラスだが、俺が魔法S、ルナが剣士S、ライムが支援Sである。


まぁ俺とルナは魔法剣士といった戦闘スタイルなのだが、どちらかというとそれが得意ということで選んでいる。ライムは魔法は使えるが剣は全くダメである。


Sというのは何かと言うとSABCの4段階で同一クラス内でも序列が決められており、恐らく俺たちのクラスを見る限り特待生がSクラスなのだと思う。


「クラスごとに教室が書かれてるな。じゃぁここで一旦お別れだ。また昼食の時にでも食堂で会おう」


「はい、セト様。お気をつけて」


「ご主人様、ライム頑張ってきますぅ!」


ルナとライムに手を振って魔法Sの教室を目指す。




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